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HPV検査による子宮頸がん検診、メリットあるが、「適切な体制確保」を要件化すべきとの考えも―がん検診あり方検討会(2)

2021.3.18.(木)

HPV検査による子宮頸がん検診は、細胞診(2年に1度)に比べて受診間隔が長くすむ(5年に1度)などのメリットがあるが、「治療できず、子宮頸がんに至るかどうかも分からないHPV慢性感染」も検出することとなり、デメリットもある(患者の長期間の不安など)。細胞診・HPV検診はグレードAで推奨されているが、「実現可能性のあるアルゴリズムが構築され、検診の精度管理を含めた適切な運用が可能な場合」に限定して実施するという考え方もある―。

3月17日に開催された「がん検診のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われています(乳がん検診に関する議論の記事はこちら)。

HPV陽性でも、「子宮頸がんに進行するかどうか」が現時点では鑑別できない

子宮頸がん検診は、現在「子宮頸部の細胞を採取し、その病変を見る」という「細胞診」が推奨されています。しかし、本検診は「2年に1度」実施することが推奨され、検査を受ける女性にとって、心理的にも非常に大きな負担となっています。

国の指針では、2年に1度の「細胞診」による子宮頸がん検診が推奨されている(がん検診あり方検討会(2)1 210317)



この点、5年に1度、子宮頸がんの主な原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかを調べる「HPV検査」に注目が集まっています。

中山富雄構成員(国立がん研究センター「社会と健康研究センター検診研究部」部長)と青木大輔参考人(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授)は、両検査をそれぞれ単独で実施した場合と、併用した場合の効果などについて研究しており、今般、その概要が報告されました。

まず、細胞診単独とHPV検査単独とを比較すると、HPV検査の方が「より多く、かつ早期のウイルス感染患者を発見できる」ことが理論的に明らかであり、データからもそれが裏付けられています。

細胞診とHPV検査の概念図、HPV検査はより広範に病変を検出できるが、長期間のフォローアップが必要となる(がん検診あり方検討会(2)2 210317)



また両検査を併用すると、さらに多くのウイルス感染患者を発見できるという研究結果もあります。

細胞診・HPV検査併用では、多くの偽陽性(子宮頸がんではないが、子宮頸がんと判定されるケース)が生じてしまう(がん検診あり方検討会(2)5 210317)



ここからは「細胞診よりも、HPV検査、あるいは併用が望ましい」ようにも思えます。しかし、HPV感染が明らかになったとしても、「子宮頸がん」となるまでには長い時間がかかり、また一定程度感染が進んでも「消失する」「子宮頸がんには至らない」ケースも半数程度あります。つまり「治療が必要な症例に限定した検出」が難しいのです。

また、「このまま進行するのか、状態が維持されるのか、消失するのか」の鑑別も現時点で困難という問題もあります。胃がんや大腸がんで「疑い」(例えば、ヘリコバクターピロリ感染が判明するなど)が判明した場合には、精密検査で「がんに進行する可能性は極めて低い」などの安心感を得ることができますが、HPV慢性感染では「現時点では進行するのかもわからない」という答えしか得られず、患者は「長期間、非常に不安な状態に置かれる」ことになる点を中山構成員は危惧しています。

さらに、「治療が必要な子宮頸がんに至らない、HPV慢性感染」に対しては、現時点では治療法がありません。



現時点において「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」では、次のように「細胞診単独」「HPV検査単独」はグレードAとして推奨されるが、「両者の併用」はグレードCの推奨となっています。

子宮頸がん検診GLでは細胞診は推奨グレードAとなっている(がん検診あり方検討会(2)6 210317)

子宮頸がん検診GLではHPV検査併用は推奨グレードAとなっている(がん検診あり方検討会(2)7 210317)

子宮頸がん検診GLでは細胞診・HPV検査併用は推奨グレードCにとどまる(がん検診あり方検討会(2)8 210317)



ただし青木参考人は、こうした状況を踏まえて、「HPV検査を用いた検診は『実現可能性のあるアルゴリズム』の構築と 検診の精度管理を含めて適切な検診の運用ができる場合にのみ実施すべきである」と提言しています。

上述のようにHPV検査(細胞診との併用も含む)では、「治療が必要な子宮頸がん」に至る前のHPV感染患者があぶりだされるため「長期間の追跡」が必要となります。これにはコストも人手もかかり、また患者の協力が必要不可欠となります。さらに「トリアージ精検」が必要となるため、運用が非常に複雑となります。

オーストラリアなどでは、こうした複雑性を考慮した検査のアルゴリズムが構築されていますが、青木参考人によれば「我が国では、道半ばにも達していない」とコメントしています。

オーストラリアでは多くの時間・労力をかけてHPV検査のアルゴリズムを構築・導入した(がん検診あり方検討会(2)10 210317)

オーストラリアの子宮頸がん検査概要(がん検診あり方検討会(2)9 210317)



もっとも現在、アルゴリズム構築などに向けた研究が進んでおり、「近く(1-2年後)研究成果を公表できる」状況にあることも報告されました。若尾直子構成員(NPO法人がんフォーラム山梨理事長)は「2年に1度の細胞診検診は女性にとって大きな負担であり、これが受診率向上を妨げる要因にもなっている。5年に1度で済むHPV検査の普及に向けて研究を進めてほしい」と期待を寄せています。



なお、羽鳥裕構成員(日本医師会常任理事)は、「我が国ではHPVワクチンの接種勧奨が行われていない(ただし適切な情報提供を行い、接種希望者が機会を逃すことのないように「選択肢の提示」が行われている)。このため諸外国に比べて子宮頸がん患者が増えると推測される。早期に、適切な子宮頸がん検診の推奨手法を整理し提示する必要がある」と訴えています。



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