家族性低βリポタンパク血症1(ホモ接合体)やネフロン癆など6疾患、2021年度から指定難病に追加し医療費を助成—指定難病検討委員会
2021.7.28.(水)
本年度(2021年度)から、(1)家族性低βリポタンパク血症(FHBL)1(ホモ接合体)(2)自己免疫性後天性凝固第X10因子欠乏症(3)進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(4)ネフロン癆(5)脳クレアチン欠乏症候群(6)ホモシスチン尿症—の6疾患を、医療費助成の対象となる「指定難病」に追加する―。
7月27日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会の「指定難病検討委員会」で、こうした考えが了承されました。今後、パブリックコメント募集、告示改正・関連通知発出など所定の手続きを経て、今年度(2021年度)中に医療費助成の対象に追加される見込みです。
(2)自己免疫性後天性凝固第X10因子欠乏症は、既存の「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症」に統合
国の定めた要件を満たす「指定難病」については、患者の置かれている厳しい状況に鑑みて、重症の場合には医療費助成が行われます。指定難病の要件は主に次の通りとなっています。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽長期の療養が必要である
▽希少な疾病で、患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%未満)に達していない
▽客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している
「がん」など他の施策・支援体系が確立されている疾患は指定難病に該当しませんが、「▼髄膜▼脳▼脊髄▼脳神経▼その他の中枢神経系―に発生した腫瘍は、良性であっても『がん登録』の対象となり(がん登録推進法施行令第1条第2項)、指定難病には該当しない」「それ以外の部位に生じた腫瘍は、良性であれば『がん登録』の対象にならず、指定難病に該当する可能性がある(他の要件を満たすことが必要)」など、判断基準の明確化が随時行われてきています(関連記事はこちら)。
疾病が指定難病の要件を満たすか否かは、研究班や学会の提出した情報をもとに、専門家で構成される指定難病検討委員会で判断されます。これまでに333疾患((2015年1月実施分:110疾患、2015年7月実施分:196疾患、2017年4月実施分:24疾患、2018年4月実施分:1疾患(あわせて5疾患を他の指定難病と統合)、2019年7月実施分:2疾患)が指定難病に該当すると判断され、一定の重症基準を満たす患者については医療費助成が行われています(ただし1疾患に複数病名が含まれているケースもあり、病名ベースでは1000超になると考えられる)。
指定難病検討委員会では、この5月(2021年5月)より、研究班などから『指定難病の要件を満たすのではないか』と情報提供のあった48疾患について審査を開始。今般、次の6疾患について「指定難病の要件を満たす」と判断しました。後述のとおり(2)の疾患は「既存疾患に統合する」こととなるため、医療費助成が行われる疾患は338(これまでの333疾患+今般の5疾患)になる見込みです。
(1)家族性低βリポタンパク血症(FHBL)1(ホモ接合体):家族性に低コレステロール血症を来す希少疾患(ヘテロ接合体は比較的高頻度だが、ホモ接合体は稀で、両者は異なる治療管理が必要)。▼脂肪吸収障害とそれによる脂溶性ビタミン欠乏症▼著しい低コレステロール血症▼末梢血の有棘赤血球―を認める。脂溶性ビタミン補充療法などの治療を行うが、30歳前後までに歩行障害など著しいADL障害を呈する神経障害、肝障害を来し、これが生命予後を左右する
(2)自己免疫性後天性凝固第X10因子欠乏症:血液凝固に必要なタンパク質である凝固因子が著しく減少し、自然にあるいは軽い打撲などでさえ重い出血を起こす疾病
→すでに指定難病に指定されている「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症」(告示番号288)に統合する(同疾患には、▼第13因子欠乏症▼第8因子欠乏症▼von Willebrand factor(VWF)欠乏症▼第5因子欠乏症▼第10因子欠乏症―の5疾患が含まれることになる)
(3)進行性家族性肝内胆汁うっ滞症:乳児期に発症し、常染色体劣性遺伝形式をとる家族性の肝内胆汁うっ滞症で、遷延性黄疸として発症し、成長障害、肝不全へと進行する
(4)ネフロン癆:常染色体劣性遺伝性疾患で、小児期発症の希少疾患である。腎間質障害あるいは腎不全に伴う症状が見られることがあるが、特徴的な症状が認められないことが多い。根本的な治療法はなく、基本的には30歳までに末期腎不全に至る
(5)脳クレアチン欠乏症候群:脳内クレアチン欠乏により、知的障害、言語発達遅滞、てんかんなどを発症する疾患群
(6)ホモシスチン尿症:先天性アミノ酸代謝異常症の一種であるホモシステインが血中に蓄積することにより発症し、全身性に神経系、骨格系、血管系が障害される疾患
●6疾患の詳細、診断基準、重症基準(いわば医療費助成基準)などはこちら(今後、一部修正がありうる)
これら6疾患のうち重症患者については医療費助成が行われることになります。厚生労働省大臣官房の宮崎敦文審議官(健康、生活衛生、アルコール健康障害対策担当)は「今後、パブリックコメントを経た後、改めて指定難病検討委員会および疾病対策部会(指定難病検討委員会の親組織)での了承を得、可能な限り速やかに医療費助成が開始できるよう告示改正、関係通知の発出等を行いたい」との考えを示しました。本年度(2021年度)中に対象患者に医療費助成が行われる見込みです。
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