Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

指定難病の軽症者に「登録書証」交付し、悪化した場合の医療費助成前倒しなど検討—難病対策委員会

2020.10.20.(火)

指定難病の軽症者について、データ登録を促進するために「登録者証」(仮称)の交付を行ってはどうか。「登録者証」(仮称)を、福祉サービス利用の都度に必要となる「医師の診断書」の代替として用いることを可能とするほか、悪化時に「登録者証」(仮称)を交付されていた場合、医療費助成の前倒しを行うことなどを検討してはどうか―。

また指定医サイドの負担を軽減するために、臨床調査個人票の記載項目を簡素化したうえで、オンライン登録を進めることとしてはどうか―。

10月16日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と、社会保障審議会・児童部会「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同会議で、こういった議論が行われました。

指定難病の軽症者「登録者証」を交付し、データ登録のメリットをPR

「指定難病への医療費助成」や「難病医療体制の構築」などの難病対策は、2015年1月に施行された難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいて実施されています。難病法は、「施行後5年以内を目途に、施行状況を勘案して必要があれば見直しに向けた検討を行う」旨が規定されており、また小児の難病である「小児慢性特定疾患」対策を規定する改正児童福祉法でも、同様の見直し規定があります。

これまでに合同会議で「論点整理」を行い(2019年6月)、下部組織である▼医療費助成の在り方、治療研究の推進、医療提供体制の整備に向けた技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」▼療養生活の環境整備、就労支援、福祉支援、小児の自立支援の在り方などに関する技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病地域共生ワーキンググループ」―で専門的な検討を行ってきました(2019年末・2020年初めにそれぞれ報告書を取りまとめ)。その後、合同部会で取りまとめ論議に入りましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で議論が一時中断。今般、議論が再開されたものです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

これまでの議論を振り返ると、例えば、▼医療費助成の対象とならない「指定難病に罹患した軽症者」について、臨床調査個人票の作成頻度や内容を簡素化するなどしてデータベースへ登録しやすい環境をさらに整え、登録者に「指定難病登録者証」(仮称)を発行し、福祉サービスの円滑利用を可能にしたり、重症化した場合には速やかに医療費助成が行われるようにするなどの制度を整える▼「重症者から軽症者まで悉皆性のある指定難病のデータベース」を構築し、NDB(National Data Base)などの他の公的データベースとの連結解析を行い、病態解明や治療法開発などにつなげる、このため、さらに医師の負担軽減のために「データ登録のオンライン化」を進める―といった方向が検討されてきています。

10月16日の会合では、▼オンライン化▼患者データ登録の在り方▼「登録者証」(仮称)の在り方—などについて、さらに議論を詰めました。

いずれにも共通する視点は、上述したとおり「軽症者のデータ登録をいかに進めるか」というところにあります。現在でも、医療費助成の対象とならない「軽症者」についてもデータを登録する仕組みがありますが、「助成に繋がらないにもかかわらず、登録・データ入力を行うことは負担でしかない」と考える指定医・患者が少なくないため、データベースに偏り(軽症者データが極めて薄い)が生じてしまっているのです。

指定難病の原因や治療法の研究に当たっては、軽症から重症まで多くの患者のデータが集積されていることが必要となり、「軽症者のデータ登録を進める」ことが極めて重要なテーマとなるのです。このためには患者サイド、指定医サイドの双方への働きかけが重要となり、患者サイドへの「メリット」の1つとして「登録者証」(仮称)が、指定医サイドの負担軽減の1として「オンライン化」が浮上しているのです。

まず「登録者証」(仮称)について見てみましょう。上述のとおり「医療費助成がなされないのであれば登録する意味がない」と考える患者も少なくありません。この点「軽症者にも医療費助成を行ってはどうか」という考え方もありますが、予算は限られているため、結果として「重症者への助成が弱くなってしまう」というデメリットがあります。そこで、軽症者には「医療費助成以外のメリット」を享受しやすく環境を整備する方向で検討が進められてきました。

厚労省健康局難病対策課の尾崎守正課長は、「登録者証」(仮称)に次のような機能を持たせ、軽症者がメリットを感じやすくしてはどうか、との考えを提示しています。

▽「登録者証」(仮称)に、地域で利用できるサービスに関する情報の記載を可能とする(登録者証を保有すれば、地域の福祉サービス等の利用がしやすくなると期待される)

▽軽症者が各種福祉サービスを利用する際には「医師の診断書」が必要となることが多いが、「登録者証」(仮称)を「医師の診断書」に代わるものとして取り扱えるようにする(福祉サービス等利用の都度に医師の診断書を得る必要がなくなり、時間的・経済的コストの軽減につながる)

▽急な重症化がみられた場合に、「登録者証」(仮称)保有者については円滑に医療費助成が受けられる(医療費助成を前倒しで受けられる)仕組みを検討する

こうした提案に異論は出ておらず、今後、詳細を詰めていくことになりますが、委員からは「より明確なメリット」「データ登録の重要性・必要性」を打ち出す必要があるのではないかとの指摘も出ています。

関連して、「がん」については全症例のデータ登録が進められており、「がん登録の仕組みを参照し、難病患者のデータ登録を進めるべき」との声も出ています。ただし、尾崎難病対策課長は「がん登録では『患者の同意』が不要であるところが、難病患者の登録と決定的に異なる」ことを紹介しています。がん登録に類似した「難病登録」制度の創設には、大きな期待が集まるものの、検討すべき、クリアすべきテーマが多々あることが分かります。

全国がん登録の概要(難病対策委員会6 201016)

指定医の負担軽減のために「臨個票」の記載項目の簡素化、オンライン登録を進める

難病指定医は、患者のデータ(基本情報や症状の程度など)を臨床調査個人票(以下、臨個票)に記載します。これが医療費助成を行うか否かを判断する際のベースとなり、また調査研究の重要資料となるわけですが、多忙な医師にとって「臨個票の記載などの手続きが、極めて大きな負担になっている」との指摘が医療現場から相次いでいます。軽症者の登録を促進した場合、指定医の負担はさらに過重になってしまうことから、「医師の負担軽減」が極めて重要となるのです。

この点、▼データ登録のオンライン化▼臨個票の簡素化―などが検討されています。

前者のオンライン登録については、2022年度からの運用が予定されています。そこでは「セキュリティの確保」が重要課題となり、例えば「電子カルテ等を活用して臨個票を作成し、それをデータ登録する場合には、外部接続のない閉鎖ネットワークの中で臨個票を作成し、それを暗号化してオンライン登録を行う」方策などが検討されています。もっとも、セキュリティ確保を厳格にすればするほど、データ登録を行う指定医の手間が増えてしまうため、両者のバランスをどう確保するかが、今後の重要検討テーマとなるでしょう。

指定難病患者のオンラインによるデータ登録のスケジュール(難病対策委員会1 201016)

指定難病患者のオンラインによるデータ登録のイメージ(難病対策委員会2 201016)

電子カルテ等を用いて臨個票を作成し、データ登録するイメージ(難病対策委員会3 201016)



また後者の「臨個票の簡素化」については、現在、専門家の研究班で研究が進められており、その研究結果を踏まえて検討することになります。あわせて「医療費助成の対象となる重症者」と「助成対象とならない軽症者」とで臨個票の項目を同じとすべきか、という検討テーマもあります。この点、「研究の促進」「混乱を避ける」ために「同じくすべき」との考えがある一方で、「負担軽減」のために「標準記載項目を定め、重症者ではより詳細なデータ記載を求める」という考え方もあります。厚労省は「項目は同じとしてはどうか」との考えを示していますが、千葉勉委員長(関西電力病院院長)は後者(項目を分ける)の考え方もありうるとして、厚労省に検討を指示しています。

なお、羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)や井田博幸委員(東京慈恵会医科大学小児科学講座教授)からは「登録にかかる負担を診療報酬等で評価してほしい」との声も出ています。



関連して、「データ登録にかかる患者の同意」を誰が取得するか、という検討テーマもあります。上述のとおり、「がん」と異なり、指定難病にかかるデータの登録に当たっては「患者の同意」を取得することが必要となるのです。

この点、「データ登録の前提として診断・診察があることから『指定医』が同意取得をすべき」という考え方と、「指定難病患者では医療以外の福祉サービスも利用することが多く、そうした情報を保有する『自治体』が同意取得をすべき」という考え方があります(現在は自治体が同意取得を行っている)。双方にメリット・デメリットがありますが、患者代表の立場で参画する森幸子委員(日本難病・疾病団体協議会代表理事)や本間俊典委員(あせび会(希少難病者全国連合会)監事)ら、多くの委員は「患者の負担を考慮したとき、指定医による同意取得が好ましい」との考えを提示しています。

もっとも、指定医サイドの負担も考慮する必要があり、さらなる検討が進められる見込みです。

指定難病患者のデータ登録に係る患者の同意を、自治体が取得すべきか、指定医が取得すべきか(難病対策委員会5 201016)

指定難病に関しては、現在、データ登録に係る同意を自治体が取得している(難病対策委員会4 201016)



合同部会では年内を目途に意見を取りまとめ、その内容を踏まえて「改正法案」策定作業が年明けから進められることになるでしょう。

診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

指定難病患者等データ、オンライン登録で患者・指定医双方の負担軽減を図れないか—難病対策委員会
医療費助成対象とならない指定難病患者、「登録者証」発行するなどデータ登録を推進―難病等研究・医療ワーキング
指定難病等の「軽症患者」に、医療費助成とは異なる別の支援策を検討してはどうか―難病等研究・医療ワーキング
「難病等の登録法」制定し、軽症者データも集積すべきではないか―難病等研究・医療ワーキング



難病対策の見直し、大前提は「公平性、制度の安定性」の確保—難病対策委員会
難病の治療法開発等のため、軽症者含めた高精度データベース構築が不可欠—難病対策委員会
2020年1月に向け、難病対策・小児慢性特定疾患対策の見直しを検討―厚科審・疾病対策部会



膠様滴状角膜ジストロフィーとハッチンソン・ギルフォード症候群を2019年度から指定難病に追加—指定難病検討委員会
「MECP2重複症候群」や「青色ゴムまり様母斑症候群」など38難病、医療費助成すべきか検討開始—指定難病検討委員会

「患者申出を起点とする指定難病」の仕組み固まる、早ければ2019年度にもスタート―難病対策委員会(2)
まず指定難病と小児慢性特定疾患のデータベースを連結し、後にNDB等との連結可能性を検討―難病対策委員会(1)
患者申出を起点とする指定難病の検討、難病診療連携拠点病院の整備を待ってスタート―指定難病検討委員会

2018年度から医療費助成される指定難病は331疾患に、課題も浮上―指定難病検討委員会
特発性多中心性キャッスルマン病など6疾患、指定難病に追加へ―指定難病検討委員会
A20ハプロ不全症など61難病、新たな医療費助成対象への指定に向け検討開始—指定難病検討委員会
2017年4月から医療費助成の対象となる指定難病を24疾病追加を正式了承―疾病対策部会
2017年度から先天異常症候群や先天性肺静脈狭窄症など24疾病を指定難病に追加へ―指定難病検討委員会
先天異常症候群など24疾患を、2017年度から医療費助成の対象となる指定難病に追加―指定難病検討委員会
先天性僧帽弁狭窄症や前眼部形成異常など8疾患、指定難病として医療費助成対象に―指定難病検討委員会
先天性GPI欠損症やAADC欠損症など9疾患、医療費助成される指定難病の対象へ―指定難病検討委員会
神経系や血液系などの領域別に指定難病の追加検討を開始、年内告示を目指す―指定難病検討委員会
医療費助成の対象となる指定難病、早ければ年内にも対象疾病を再び拡大―指定難病検討委員会

7月から医療費助成となる196の指定難病を正式決定―厚科審の疾病対策部会
医療費助成の指定難病196を5月に告示へ―指定難病検討委員会
医療費助成の指定難病を概ね決定、胆道閉鎖症など7月から約200疾病
先天性ミオパチーや筋ジストロフィーなど41疾病、7月から指定難病へ―厚労省検討会



難病医療支援ネットワーク、都道府県の拠点病院と専門研究者との「橋渡し」機能も担う―難病対策委員会
難病診療連携の拠点病院を支援する「難病医療支援ネットワーク」に求められる機能は―難病対策委員会

小児慢性疾患患者の成人期医療への移行支援体制、都道府県ごとに柔軟に整備―難病対策委員会
患者や家族が指定難病の申請を可能とする仕組み、大枠固まる—難病対策委員会
患者起点で、医療費助成対象となる指定難病へ申請できる仕組みの整備へ―指定難病検討委員会
2017年4月から医療費助成の対象となる指定難病を24疾病追加を正式了承―疾病対策部会

4月から入院患者の食事負担が増額となるが、指定難病患者などでは据え置き―厚労省
指定難病患者の「高額療養費算定基準」とレセプトへの「特記事項」への記載を整理―厚労省
難病対策の基本方針、16年度中に代表的な疾病に対する医療提供体制モデル構築―厚労省



「個人単位の被保険者番号」活用した医療等情報の紐づけ、まずNDBや介護DBを対象に―厚労省・医療等情報連結仕組み検討会
医療・介護等データ連結、「医療の質」向上と「個人特定リスク」上昇とのバランス確保を―厚労省・医療等情報連結仕組み検討会
個人単位の被保険者番号を活用した医療等情報を連結、具体的な仕組みの検討スタート―厚労省・医療等情報連結仕組み検討会

 
医療等のデータ連結において、個人の紐づけは「個人単位の被保険者番号」を基軸に―医療情報連携基盤検討会
医療情報ネットワークの2020年度稼働に向け、2018年夏までに「工程表」作成―医療情報連携基盤検討会



2021年3月からマイナンバーカードに「保険証機能」付与、既存保険証が使えなくなる訳ではない―社保審・医療保険部会
オンライン資格確認や支払基金支部廃止などを盛り込んだ健保法等改正案―医療保険部会
被保険者証に個人単位番号を付記し、2021年からオンラインでの医療保険資格確認を実施―医療保険部会
国民健康保険、より高所得者な人に負担増を求めるべきか―医療保険部会
超高額薬剤等の保険収載、薬価制度だけでなく税制等も含め幅広い対応を―社保審・医療保険部会
NDB・介護DBを連結し利活用を拡大する方針を了承、2019年の法改正目指す―社保審・医療保険部会(2)
健康寿命延伸に向け、「高齢者の保健事業」と「介護予防」を一体的に実施・推進―社保審・医療保険部会(1)
2020年度中に、医療保険のオンライン資格確認を本格運用開始―社保審・医療保険部会
地域別診療報酬には慎重論、後期高齢者の自己負担2割への引き上げも検討—医療保険部会



NDB・介護DBの連結方針固まる、「公益目的研究」に限定の上、将来は民間にもデータ提供―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの連結運用に向け、審査の効率化、利用者支援充実などの方向固まる―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの連結、セキュリティ確保や高速化なども重要課題―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBからデータ提供、セキュリティ確保した上でより効率的に―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DBの利活用を促進、両者の連結解析も可能とする枠組みを―厚労省・医療介護データ有識者会議
NDB・介護DB連結、利活用促進のためデータベース改善やサポート充実等を検討—厚労省・医療介護データ有識者会議



「指定難病」診断に必要な遺伝子検査、一定要件をクリアした53疾患を保険適用―中医協総会(1)