「患者申出を起点とする指定難病」の仕組み固まる、早ければ2019年度にもスタート―難病対策委員会(2)
2018.10.22.(月)
10月18日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」で、「患者の申し出を起点として指定難病を検討する」仕組みが了承されました。各都道府県において難病診療連携拠点病院が概ね整備(2018年度中に整備予定)されるのを待って運用が開始されます。
患者起点の指定難病制度、まず難病診療連携拠点病院に制度詳細を周知
▼発症の機構が明らかでない▼治療方法が確立していない▼希少な疾病である▼長期の療養が必要である—という要件を満たす「難病」のうち、▼患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%未満)に達しない▼客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している—という要件を満たす『指定難病』に罹患した患者には、一定の重症度基準を満たせば医療費助成が行われます。
どの疾病が指定難病に該当するのか(つまり医療費助成の対象になるのか)は、厚生労働科学研究費補助金事業(難治性疾患政策研究事業)における研究班(以下、研究班)や関係学会から厚生科学審議会・疾病対策部会「指定難病検討委員会」に情報が寄せられ、上記の要件を満たしているかを確認した上で、厚生労働大臣が決定します。
この点、「研究班が設置されていない難病」に罹患している人の声を吸い上げる必要があるとの指摘を受け、昨年(2017年)から「患者からの申し出を起点として、指定難病を検討する」仕組みに関する議論が難病対策委員会と指定難病検討委員会で並行的に進められてきました。今般、難病対策委員会でこの仕組みが正式に了承されました。その大きな流れは、次のように整理できます。
(1)患者本人(年齢の要件なし)や家族などが、かかりつけ医等からの診療情報提供書等を持参し、難病診療連携拠点病院の外来を受診し、指定難病の追加について相談(申出)する。厚生労働省は、手続きが円滑に進むよう、具体的な情報等をあらかじめ難病診療連携拠点病院等に広く情報提供しておく
(2)申出のあった疾病のうち、▼難病法における難病の4要件(上記)を満たす▼申出の時点で研究班が存在しない―のいずれも満たすと考えられる疾病について、難病診療連携拠点病院は難病情報センターのホームページ上で同様の申出の有無を確認し、申出がなければ、拠点病院の難病診療連携コーディネーターが厚生労働省へ連絡する
(3)厚生労働省は、申出のあった疾病について、難病診療連携拠点病院に診療情報提供書や難病の4要件を確認するためのチェックリスト等の情報を求める。また、申出のあった疾病について、難病情報センターへ情報提供する
(4)指定難病検討委員会において、▼既存の指定難病に含まれないこと▼既存の小児慢性特定疾病に含まれないこと▼研究班が存在しないこと―などを確認する(数か月に1回程度)
(5)指定難病の検討に資する情報の整理は、難治性疾患政策研究事業の研究班で行うこととし、▼既存の関連研究班の対象疾病として追加する(原則としてこの対応とする)▼新規研究班を立ち上げる―のいずれで対応するかを指定難病検討委員会において判断し、厚生労働省へ報告する。研究班では、主に、▼患者数▼発病の機構の解明の状況▼効果的な治療方法の有無▼長期の療養の必要性の有無▼客観的な診断基準の有無▼重症度分類の有無—を調査する
(6)情報が整理されたと研究班が判断し、研究班から情報提供のあった疾病について、これまでどおり、指定難病検討委員会において指定難病の各要件を満たすかどうかの検討を行う
この仕組みは、「47都道府県で概ね難病診療連携拠点病院が整備された」段階で運用が開始されます(まず、仕組みの詳細を難病診療連携拠点病院に周知する)。厚労省では都道府県に対し「2018年度中の難病診療連携拠点病院整備」を要請していますが、2018年10月5日時点では14都県・25病院にとどまっており、早急な整備が期待されます。
56特定疾患患者の79.6%が、指定難病に移行後も医療費助成の対象に
冒頭に述べたとおり、2015年1月から指定難病制度がスタートしましたが、それ以前には56疾患を対象とした医療費助成(特定疾患治療研究事業)が行われていました。両者の違いはさまざまありますが、「重症度分類の導入」が非常に大きいと指摘されます。特定疾患治療研究事業では一部疾患(▼パーキンソン病関連疾患▼後縦靱帯骨化症▼表皮水疱症(接合部型および栄養障害型)▼広範脊柱管狭窄症▼原発性胆汁性肝硬変▼特発性間質性肺炎▼網膜色素変性症▼神経線維腫症▼バッド・キアリ(Budd-Chiari)症候群▼黄色靱帯骨化症—の10疾患)にのみ重症度分類が導入されていましたが、指定難病制度では全疾患に導入されています。
このため、「従前は医療費助成が行われていたが、指定難病制度への移行の結果、重症度の基準を満たさず医療費助成が受けられなくなる」患者が発生することから、厚労省は「昨年(2017年)12月31日まで、従前に医療費助成を受けられていた56疾患の患者についても医療費助成を行う」という経過措置を設けていました。
今般、厚労省は、その経過措置対象者が経過措置後(2018年1月1日以降)に指定難病制度で医療費助成を受けられたかどうかの調査を実施し、結果を報告しました。
全体では、経過措置対象者のうち79.6%が指定難病制度の中で医療費助成を受けられており、ほか▼不認定(重症度を満たさない):11.9%▼保留:0.0%▼申請なし・不明:8.5%―となっています。
申請なし・不明については、委員から「担当医が『重症度を満たさないと考えられ、申請しても該当しないと思われる』旨を説明しているケースがあるようだ。『軽症高額該当』(重症度分類等を満たさないものの、暦月の医療費総額が3万3330円を超える月が年間3か月以上ある患者については、支給認定を行う救済措置)という仕組みもあり、申請を促す必要があるのではないか」との指摘が相次ぎました。複雑な仕組みであり、担当医が詳しく制度を知らないケースもあると思われ、制度の再周知が必要かもしれません。
なお、経過措置後に「指定難病制度の中で医療費助成が受けられる患者」の割合は、都道府県別・疾患別に一定のバラつきがありますが、厚労省では「そもそも希少な疾病であり、かつその中で重症の患者が都道府県に均等に存在しているわけではない(都道府県別のバラつきの背景、厚労省のサイトはこちら(難病対策委員会資料))」「56の特定疾患の中には、重症度分類が導入されていたものと、そうでないものがあり、医療費助成が受けられる割合には当然差が出る(疾患別のバラつきの背景、厚労省のサイトはこちら(難病対策委員会資料))」「医療技術の向上により、症状等が改善しているケースもあると考えられる」と説明しています。
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