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患者や家族が指定難病の申請を可能とする仕組み、大枠固まる—難病対策委員会

2017.8.3.(木)

 小児難病患者が成長する中で、より適切な医療を受けられるように「成人医療機関への移行」をどう進めるか。また患者や家族を起点して、医療費助成対象となる指定難病への申請を可能とする仕組みをどう設計するか—。

 2日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」(一部は、社会保障審議会・児童部会の「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同開催)では、こういった点について議論を行いました。

8月2日に開催された、「第50回・51回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」と「第21回 社会保障審議会 児童部会 小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同開催(ただし第51回 難病対策委員会は単独開催)

8月2日に開催された、「第50回・51回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」と「第21回 社会保障審議会 児童部会 小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同開催(ただし第51回 難病対策委員会は単独開催)

研究班が設置されていない難病に罹患している患者を起点とした仕組み

 指定難病(現在330疾患)に罹患し、重症である患者については医療費が助成されます。ある疾病が指定難病に指定されるためには、その疾病を研究する研究班(あるいは小児医学会)が国に申請を行い、指定難病の要件(▼患者数が我が国で18万人未満▼客観的な診断基準が確立している—など)を満たしているかなどの審査を経る必要があります(関連記事はこちらこちら)。

 しかし「研究班が設置されていない難病もあるのではないか」との指摘があり、厚生労働省は「患者や家族を起点として、指定難病への申請を行える仕組み」を検討することにしたものです。

 2日の難病対策委員会では、これまでの議論を踏まえて次のような制度の骨格案が提示されました(関連記事はこちら)。

(1)本人または家族等が、診療情報提供書を持参し、都道府県難病診療連携拠点病院に「指定難病の追加」について相談(申し出)する
(2)申し出のあった疾病のうち、▼広義の難病4要件(▽発症の機構が不明▽治療方法が未確立▽希少▽長期療養が必要)を満たす▼申し出時点で研究班が存在しない—疾病について、厚労省は都道府県難病診療連携拠点病院に情報を求める
(3)(2)の情報があった疾病いついて、指定難病検討委員会(厚生科学審議会・疾病対策部会の下部組織)で▼既存の指定難病に含まれない▼既存の小児慢性特定疾病に含まれない▼研究班が存在しない—ことなどを確認する
(4)(3)の確認の後、▼既存の関連研究班の対象疾病に追加する▼新規研究班を立ち上げる—のいずれで対応するかを指定難病検討委員会で判断する
(5)当該疾病について研究班(4)で「指定難病の検討に資する情報が整理された」と判断し、情報提供された疾病について、指定難病の各要件を満たすかどうかの検討を指定難病検討委員会で行う
(6)これらの手続きで研究が開始された疾病いついて、その進捗を指定難病検討委員会に報告する

委員から、この提案に対して反対意見は出ておらず、制度創設に向けた検討を進めていくことになります。もっともいくつかの注文はついており、今後の調整が注目されます。

たとえば(1)の申請者について、益子まり委員(川崎市宮前区役所保健福祉センター所長)や小幡純子委員(上智大学大学院法学研究科教授)は「主治医も加えるべきではないか」と要望しています。厚労省が申請者を「本人または家族等」に限定している理由は、「我が国に患者はいないが、研究目的などで申請する」というケースを排除するためです。しかし、(1)では診療情報提供書の持参を求めており、すでに主治医がいるケースが多いと考えられるため、主治医も申請者に加えられる可能性があります。また厚労省は「患者が直接、都道府県難病診療連携拠点病院を受診し、そこから申請する」というケースもあると想定しています。

厚労省はこうした意見を踏まえて、本年度(2017年度)中に方向性を固めたい考えです。

小児難病患者の成長の中で、成人期医療機関への円滑な移行が可能な仕組みを構築

また2日には、難病対策委員会と小児慢性特定疾患時への支援の在り方に関する専門員会の合同会合も開かれ、小児難病患者(小児慢性特定疾患児)が成長する中での「移行期医療」について議論を行いました。

小児難病患者は、小児を対象とした医療機関で難病(小児慢性特定疾患)治療を受けますが、成人になった場合には「成人期にふさわしい医療」を提供する医療機関での治療が必要です。しかし、成人医療機関側には「これまで小児難病からの移行患者を診たことがなく、受け入れは躊躇してしまう」という声もあります。

小児慢性特定疾患児が成長し、成人期に達した後は、成人期にふさわしい医療を提供する医療機関に移行することが良質な医療確保のために望ましい

小児慢性特定疾患児が成長し、成人期に達した後は、成人期にふさわしい医療を提供する医療機関に移行することが良質な医療確保のために望ましい

 
そこで厚労省は、▼都道府県向け▼医療従事者向け—の移行促進に向けたガイドを作成する考えです。

まず都道府県向けのガイドでは、小児医療機関・成人期医療機関のそれぞれに対し、円滑な移行に向けた具体的な取り組みを要請します。例えば小児医療機関には「患者(児)に対し、自律(自立)を目指した教育」などを、成人期医療機関には「総合診療部門などに相談できる体制の整備」などを要望します。さらに、移行支援を専門的に行う機関として「移行期医療支援センター」(仮称)を少なくとも都道府県内に1か所整備することを求めます。▼連絡体制の整備▼相談受付体制の整備▼在宅介護や緊急時受入先の確保支援▼各医療機関の自律(自立)支援に対する支援▼小児慢性特定疾病児童等自立支援員との連携▼移行期医療支援の進捗状況の評価と改善策の検討—などの機能を担う機関で、厚労省は「型にはめず、各都道府県の状況に応じた設置を求める」考えです。例えば都道府県難病診療連携拠点にセンターを置く県もあれば、難病相談支援センターが兼務する県もある、というイメージです。

また医療従事者向けのガイドは、「共通事項に関するコアガイド」と「疾患別ガイド」の2種類作成されます。前者の「コアガイド」では、子供から大人への成長に伴って個々人のニーズを満たすために必要となる一連の主要プロセスを示すものです。米国ではすでにコアガイドが存在しますが、単なる翻訳ではなく、日本の難病医療制度や医療提供体制の特性を踏まえた「日本版コアガイド」が作成される見込みです。

コアガイドの概要

コアガイドの概要

 
後者の「疾患別ガイド」は、個々の慢性疾病を抱えながら成長していく患者に対し、当該疾病の特殊性を踏まえたもので、治療・研究水準の向上に合わせて逐次改訂していくことが予想されます。現在、慢性腎不全やフェニルケトン尿症、潰瘍性大腸炎などを研究する8学会で作成が進められています。
疾患別ガイドの概要

疾患別ガイドの概要

 
厚労省は、都道府県向けのガイドは年内(2017年内)に作成・通知し、医療従事者向けのガイド(コアガイド・疾患別ガイド)は年度内(2017年度内)に作成・公表する考えです。もっとも、ガイドの通知・公表で一気に移行医療が促進されるものではありません。2日の合同開催では兒玉祥彦参考人(福岡市立こども病院循環器科医師)から、九州大学病院などと連携した移行期医療の実践例が報告され、そこでは「循環器系の小児難病患者のほぼ全数が、成人期医療機関へ移行できる」体制が構築され、結果も伴う状況が生まれています。しかしこうした成果は、こども病院から九大教授に「移行期患者の受け入れ」を打診した2005年から10年以上かけて、信頼関係を構築・強化していった努力の賜物であり、移行期医療のモデル事業にも携わっている賀藤均委員(国立成育医療研究センター病院長)は「長い目で見てほしい」とコメントしています。

なお、移行期医療を考える際、患者は小児医療機関から切り離され、完全に成人期医療機関での治療を受けるというイメージを持ちがちですが、石川広己委員(日本医師会常任理事)は、「成人になってからも専門性の高い医師の治療を確保できる仕組みとすべきである。場合によっては『引き続き小児医療機関での治療を受け、成人期に特有の問題が生じた場合には、成人期の専門医療機関に都度相談できる』ようなことも可能としておくべきではないか」とコメント。患者・家族が、最も適切な医療機関(成人期になれば、成人期医療機関が最適というケースが多い)を選択できるような仕組みの構築が求められていると言えそうです。

 
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