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251218ミニセミナー診療報酬改定セミナー2026

医療従事者の処遇改善、「ベースアップ評価料等の充実」等で対応すべきか、「基本診療料の引き上げ」等で対応すべきか―中医協総会(1)

2025.12.5.(金)

救急に力を入れる病院の看護職員負担を考慮した【看護職員処遇改善評価料】や、幅広い医療従事者の賃上げを目指す【ベースアップ評価料】が設けられ、一定の賃上げ効果が出ているが、他産業に比べると十分な水準とは言えない。また、ベースアップ評価料では要件等が難しいこともあり取得していない施設が、とりわけ小規模医療機関で多い。また処遇改善が十分に行えない背景には「医療機関等の経営状況が厳しい」点がある―。

こうした状況を踏まえて「医療従事者の処遇改善」をどういった方法(現行の仕組みの維持、新たな点数の創設、基本診療料の引き上げなど)で行うべきか―。

12月5日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした広範な議論が行われました。同日には「後発医薬品等の使用促進」「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)への対応拡大」「ロボット支援手術の評価の在り方」なども議論されており、別稿で報じます。

「精緻な評価」は「医療機関の事務負担増」につながる点をどう考えるか

12月5日の中医協総会では(1)医療従事者の賃上げ(2)後発品等の使用促進(3)医療技術—などを議題としました。本稿では(1)に焦点をあわせ、(2)(3)は別稿で報じます。

(1)の賃上げの必要性は述べるまでもないでしょう。医療従事者の確保・定着のためには「賃上げ」が極めて重要です。

このため、2022年度の診療報酬改定では新型コロナウイルス感染症に積極的に対応する救急病院の看護職員の給与増を目指した【看護職員処遇改善評価料】が創設され、また2024年度の診療報酬改定では、看護職員をはじめとする広範な医療従事者の給与増を目指した【ベースアップ評価料】の創設とともに、40歳未満の若手医師や事務職員の給与増を目指した「基本診療料(初・再診料や入院料など)の引き上げ」などが行われてきています。

2022年度の看護職員処遇改善評価料創設(入院・外来医療分科会(1)1 250821)

2024年度のベースアップ評価料創設など(入院・外来医療分科会(1)2 250821)



しかし、こうした取り組みにもかかわらず医療従事者の賃金動向は他産業と比べて必ずしも「高水準である」とは言い切れません。また賃上げの「幅」については、他産業に比べて「劣っている」ことも明らかになっています(関連記事はこちら)。こうした事態を放置すれば「看護師等の医療従事者が他産業に移ってしまう」ことでしょう(実際にそうした現象が生じていると指摘する声も多い)。

このため2026年度の次期診療報酬改定でも「さらなる賃上げ」を目指すことが求められます(診療報酬改定の基本方針にもその点が重点課題に位置付けられる見込み)。12月5日の中医協総会では、今後の「診療報酬による賃上げ対応」に向けた総論的な議論を行いました。

この点について厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長は、▼どういった方法が考えられるか▼届け出などの簡素化が必要ではないか―という大きく2つの論点を提示し、中医協に議論を要請しています。両論点は密接に関連します。

現在の賃上げ方法(看護職員処遇改善評価料、ベースアップ評価料)は「個別医療機関におけるスタッフ配置が異なる」点を踏まえて100を超える点数区分を設定し、「個々の医療機関が自院のスタッフ配置、患者数などを踏まえて選択する」仕組みとなっています。例えば、「自院はスタッフ配置が多いが、患者数はそれほど多くないので高い点数区分の評価料を算定する」、「自院では、十分な賃上げを行うために高い点数区分の評価料が必要だが、患者負担が大きくなってしまうので、あえて低い点数区分の評価を算定する」といった選択が可能なのです。

「精緻な対応を可能にする」優れた仕組みですが、その分、医療機関の事務負担(給与総額や賃金改善総額の算出など)が大きくなってしまうというデメリットもあります。

処遇改善に向けた評価の考え方1(中医協総会(1)1 251205)

処遇改善に向けた評価の考え方2(中医協総会(1)2 251205)



このため、事務負担を考慮してベースアップ評価料の届け出を行わない医療機関も少なくありません(とりわけ小規模医療機関、関連記事はこちら

▽外来・在宅ベースアップ評価料(I)は、病院では約9割が取得しているが、クリニックでは約4割しか取得していない

ベースアップ評価料の取得状況1(入院・外来医療分科会(1)3 250821)



▽ベースアップ評価料を取得していない病院を見ると、「公立病院」や「医療法人(社会医療法人は含まない)」、「許可病床数100床未満の病院」が多い

ベースアップ評価料の取得状況2(入院・外来医療分科会(1)4 250821)



▽訪問看護ステーションでは、ベースアップ評価料の取得は約43%にとどまっている

ベースアップ評価料の取得状況3(入院・外来医療分科会(1)5 250821)



2026年度診療報酬改定でさらなる賃上げを行う場合には「看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料を統合して、新たな評価料を創設する」ことや、「看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料を存続したまま、新たな評価料を創設する」こと、さらに「まったく別の考え方」(例えば初・再診料や入院料などの基本診療料を引き上げ、各医療機関に処遇改善を委ねる)を採用することなどが考えられますが、上記の点(精緻な対応を行えば事務負担が大きくなってしまうが、事務負担に配慮すれば精緻な対応が困難で「十分な原資が得られず、処遇改善を十分に行えない医療機関」や「過重な収益を得られる医療機関」が出てきてしまう)をどう考えるかが非常に重要となってきます。

この点について診療側委員からは、▼賃上げの本来の姿は「基本診療料を増点し、各医療機関で適切に賃金へ配分していく」ものであり、こうした方向を検討すべき。その際、各医療機関に「賃金改善状況の報告」を求めれば、「増点分が賃金に適切に反映されているか」を確認可能である(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼医療従事者の処遇を他産業並みに引き上げていくことが非常に重要である。その際、処遇改善の在り方は「各医療機関で労使が相談の上で決める」ことが本来の姿であり、診療報酬で詳細な要件設定等は避けるべき。また看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料・新たな評価料といった3階建ての仕組みも避けるべきである。現下の医療人材不足の中では「診療報酬で得た原資を、適切に医療従事者に配分する」ことが担保される(そうしなければスタッフが退職してしまう)ため、自由度を上げても問題ないと考えられる(太田圭洋委員:日本医療法人協会副会長)▼早急な賃上げ・処遇改善をしなければ、医療従事者の成り手が激減し、数年後に医療崩壊につながってしまう(小阪真二委員:全国自治体病院協議会副会長)▼職責に見合った賃金水準が必要不可欠である。診療報酬で対応する場合には「確実に医療従事者の賃上げがなされているのか」を把握する必要がある。2026年度に現行評価料の見直しを行う場合には「悪化」しないように留意すべき。また看護師の夜勤手当が十分な水準になるような手当も必要である。その際、「医療機関の経営が厳しく、夜勤手当を増額できない」という事情がある点への留意も必要である。さらに小規模医療機関への事務負担への配慮も検討してほしい(看護職の立場で参画する木澤晃代専門委員:日本看護協会常任理事)—といった意見が出されました。

他方、支払側からは▼医療機関の事務負担が大きいというが「給与総額や賃金改善総額の算出」などは一般的な労務管理の範疇なのではないか。本来、処遇改善の原資は「経営マネジメント」によって捻出すべきものである。また2024年度診療報酬改定では40歳未満の若手医師や事務職員の給与増を目指した「基本診療料(初・再診料や入院料など)の引き上げ」が行われているが、実際に若手医師等の給与がどの程度上昇したのかを確認する必要がある(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)▼診療報酬での処遇改善は患者負担増につながる。患者サイドが納得できるよう、公平かつ確実な処遇改善効果を確認することが必要である。現時点では「確実な処遇改善」が行われているが、さらなる対応を行うべきかどうかは、より詳しい実態を見てから検討すべき(鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事)▼公平かつ確実な処遇改善効果を確認することが必要である。看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料の統合や、看護師の夜勤手当引き上げなども十分に検討すべき(永井幸子委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)▼医療職の魅力向上のために、例えば「職種ごとの賃金ガイドライン」(職種別の最低賃金のようなイメージか)なども検討してはどうか(鈴木順三委員:全日本海員組合組合長代行)—といった考えが示されました。

様々な考え方が示されており、今後、さらに議論を深めていきます。

なお「簡素化」については「国で賃金改善動向を把握するためだけに収集している賃金改善の見込み額や基本給等総額の届け出を廃止してはどうか」との声が多数出ています。

ベースアップ評価料の届け出書類等の簡素化に向けて(中医協総会(1)3 251205)



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2026年度診療報酬改定、「物価・人件費高騰への対応」や「保険料負担軽減、国民皆保険の持続可能性確保」が重要視点―社保審・医療保険部会
より多くの医療機関に「データ提出」求めるにあたり、医療機関の負担軽減や医療機関のメリットも考慮を—入院・外来医療分科会(4)
「6か月に一度も検査を行わない」生活習慣病管理は適切か?大病院からクリニック等への逆紹介を推進すべき—入院・外来医療分科会(3)
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ベースアップ評価料、「2024・25年度で4.5%の賃上げ」を目指しているが、現状では「3.4%の賃上げ」にとどまる―入院・外来医療分科会(1)

自治体病院の9割近くが経常赤字という異常事態の中、入院基本料の大幅引き上げ、緊急の経営支援などを要望—全自病・望月会長
2026年度診療報酬改定に向け入院料引き上げ、救急搬送を多く受け入れる地域包括ケア病棟の評価充実等検討を―地ケア推進病棟協・仲井会長
費用対効果評価制度、「保険償還の可否判断に用いない、価格調整範囲は加算部分のみ」との現行制度を見直すべきか―中医協
物価高騰・円安で「医療機器の逆ザヤ」(償還価格<購入価格)問題が拡大、2026年度材料価格制度改革での対応は?―中医協・材料部会
2026年度薬価制度改革に向けた論点が出揃う、イノベーション評価・皆保険の持続可能性・安定供給の3本柱—中医協・薬価専門部会
認知症治療薬レケンビの費用対効果評価、介護費縮減効果は勘案せず、2025年11月から薬価を15%引き下げ―中医協総会(2)
2024年度、自治体病院の86%が経常赤字、95%が医業赤字と「過去最悪」、大規模急性期病院では9割超が経常赤字—全自病・望月会長
2026年度診療報酬改定に向け「集約化すべき急性期入院医療の内容はどこか」などをより詳しく分析・検討せよ―中医協総会(1)
急性期入院医療の評価指標、包括期入院医療の評価指標、看護必要度における内科評価などをさらに詳しく分析・検討—入院・外来医療分科会(4)
診療報酬で医師働き方改革をどう支援すべきか、医師事務作業補助者の確保をどう促進すべきか—入院・外来医療分科会(3)
「人生の最終段階でどういった医療を受けたいか」の意向確認、身体拘束最小化をさら進めるために何が必要か—入院・外来医療分科会(2)
外科医不足解消に向け、「急性期入院医療・高難度手術の集約化」や「外科医の給与増」などを診療報酬で促進せよ—入院・外来医療分科会(1)

2026年度診療報酬改定や病院経営維持に向け、8月下旬の概算要求に間に合う形で政府に具体的な要望を行う—日病・相澤会長
地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の「中間評価」創設を、急性期病棟とのケアミクスは柔軟に認めよ―地ケア推進病棟協・仲井会長
効率的で質の高い入院医療提供のため、「病院・病床の機能分化、集約化」だけでなく「病院経営の維持」を実現せよ―中医協総会(1)
白内障手術など「入院」から「外来(短期滞在手術等基本料1)」への移行をさらに進めるために何が必要か―入院・外来医療分科会(4)
病院におけるポリファーマシー対策などの前提となる「病院薬剤師の確保」を診療報酬でどう進めていけば良いか―入院・外来医療分科会(3)
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外来データ提出加算等の届け出は低調、データ作成・提出の負担軽減に向け「提出データの項目整理」など検討―入院・外来医療分科会(1)

骨太方針2025の「経済・物価動向に相当する増加分加算」方針を歓迎、2026年度診療報酬改定に反映されるよう活動を続ける—四病協

2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ—中医協(1)
包括期入院医療のあるべき姿はどのようなものか、実質的な医療・介護連携を診療報酬でどう進めるかを更に議論―入院・外来医療分科会(4)
療養病棟における「中心静脈栄養からの早期離脱、経腸栄養への移行」が2026年度診療報酬改定でも重要論点―入院・外来医療分科会(3)
回復期リハビリ病棟の「リハ効果」に着目し、「ADLが低下してしまう患者」割合が一定以下などの新基準設けるか―入院・外来医療分科会(2)

骨太方針2025を閣議決定、医療・介護の関係予算について「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額行う

地域包括医療病棟、急性期病棟とのケアミクスや地域包括ケア病棟等との役割分担、施設基準の在り方などどう考えるか―入院・外来医療分科会(1)

病院従事者の2025年度賃上げ率は平均「2.41%」どまりで一般産業の半分程度、早急に「十分な賃上げ」を可能とする環境整備を—四病協
物価・人件費の急騰に対応できる診療報酬の「仕組み」を創設せよ、2025年度における病院スタッフの賃上げ実態を調査—四病協

2026年度の診療報酬改定、「過去のコスト上昇補填不足分」など含め、病院について10%以上の引き上げが必要—医法協・加納会長と太田副会長

社会保障関係費の伸びを「高齢化の範囲内に抑える」方針を継続、診療所の良好経営踏まえた診療報酬改定を—財政審建議
社会保障関係費の伸びを「高齢化の範囲内に抑える」方針を継続し、外来管理加算や機能強化加算の整理など進めよ―財政審

【リハビリ・栄養・口腔連携体制加算】や【救急患者連携搬送料】など、取得・算定率改善に向けた要件見直し論議を―入院・外来医療分科会(4)
ICUを持つが「救急搬送受け入れも、全身麻酔手術実施も極めて少ない」病院が一部にあることなどをどう考えるか―入院・外来医療分科会(3)
「小規模なケアミクス病院のDPC参加」「特定病院群では急性期充実体制加算などの取得病院が多い」点をどう考える―入院・外来医療分科会(2)
新たな地域医療構想で検討されている「急性期拠点病院」、診療報酬との紐づけなどをどう考えていくべきか―入院・外来医療分科会(1)

物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、入院基本料の引き上げ・消費税補填点数の引き上げ・ベースアップ評価料の見直しなど必要—日病
物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、窮状を打破するため「診療報酬も含めた経営支援策」を急ぎ実施せよ—九都県市首脳会議
少子化の進展で医療人材確保は困難、「人員配置によらないプロセス・アウトカム評価の導入」を今から研究・検討せよ—日病協
物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、入院基本料の大幅引き上げ・人員配置によらないアウトカム評価の導入などが必要—日病協

社会保障関係費の伸びを「高齢化の範囲内に抑える」方針を継続し、外来管理加算や機能強化加算の整理など進めよ―財政審

ICTで在宅患者情報連携進める在宅医療情報連携加算の取得は低調、訪看療養費1の障壁は同一建物患者割合70%未満要件—中医協(2)
2026年度診療報酬改定、診療側は「診療報酬の大幅引き上げによる病院等経営維持」を強く求めるが、支払側は慎重姿勢—中医協総会(1)
2026年度の次期診療報酬改定に向け「外科医療の状況」「退院支援の状況」「医療・介護連携の状況」などを詳しく調査—入院・外来医療分科会
リフィル処方箋の利活用は極めて低調、バイオシミラーの患者認知度も低い、医師・薬剤師からの丁寧な説明が重要—中医協(2)
2026年度診療報酬改定、物価急騰等により医療機関経営が窮迫するなど従前の改定時とは状況が大きく異なる—中医協総会(1)
2026年度の次期診療報酬改定に向け「新たな地域医療構想、医師偏在対策、医療DX推進」なども踏まえた調査実施—入院・外来医療分科会

医療機関経営の窮状踏まえ、補助金対応・2026年度改定「前」の期中改定・2026年度改定での対応を検討せよ—6病院団体・日医
2024年度診療報酬改定後に医業赤字病院は69%、経常赤字病院は61.2%に増加、「物価・賃金の上昇」に対応できる病院診療報酬を—6病院団体