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GemMed塾 病床ユニット

16番目の患者申出療養「ALSの新規治療薬開発研究」を承認、パクリタキセル腹腔内投与療法の有用性臨床研究進めよ―患者申出療養評価会議

2023.6.23.(金)

16番目の患者申出療養として「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するEPI-589再投与の安全性に関する研究」を認め、保険診療との併用を可能とする―。

腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」について、有用性の研究がなされないままに、東京大学医学部附属病院において「自由診療」として行われているが、これを同院の倫理審査委員会等ではどのように捉えているのか確認する必要がある。また実施するに当たり、最低限「胃がん治療のガイドラインにおいて『推奨されない』と記載されている」ことを患者・家族に十分に説明する必要がある。さらに日本胃癌学会には「この技術の有用性等について研究を進める」よう求めていく—。

6月22日に開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が了承されました。

また、3番目の技術「難治性天疱瘡患者へのリツキシマブ静脈内投与療法」について、患者申出療養のデータも踏まえて「薬事承認→保険適用」につながった初めての事例であり、「非常に意義深く、大きな価値がある」点が構成員間で共有されています。

6月22日に開催された「第41回 患者申出療養評価会議」

ALSの新規治療薬開発に向けて、患者申出療養の仕組みを活用した研究を承認

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の15種類の患者申出療養が認められています(ただし「2」「3」「4」「5」「10」の技術はすでに新規患者の登録を終了)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAF V600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(還暦時はこちらこちら



6月22日の会合では、16番目の患者申出療養として「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するEPI-589再投与の安全性に関する研究」が認められました。

ALSは、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく疾患で、治療法は確立されていません(医療費助成が行われる指定難病に指定されている)。これまでに▼リルゾール(販売名:リルテック錠、ほか)▼エダラボン(販売名:ラジカット内用懸濁液、ほか)—の2種類の薬剤について効能・効果が認められていますが、「より生存期間を延長する、臨床症状を改善する、使いやすい薬剤」の開発が求められています。

この点、住友ファーマ社が開発中の「EPI-589」という薬剤(国内外ともに未承認)について、本邦での医師主導治験や海外での臨床試験の結果から、一定の効果があることが分かっています。

今般、医師主導治験に参加したALS患者から「継続してEPI-589を使用したい」との要望があり、大阪大学医学部附属病院が次のような実施計画書を提出しました。

同院では、▼製薬メーカーから「治験・先進医療への薬剤提供の可否判断には時間がかかる」との回答があった▼医師主導治験や先進医療の実施に必要となる研究費を現時点では獲得できていない▼企業治験が予定されているが、しばらく先にこととなる—などのため、「患者に迅速にEPI-589投与を行う」ためには患者申出療養の仕組みを選択する必要があったと説明しています。

▽対象患者:先行する医師主導治験(DA350103試験、下図の上段中央)を受け安全性、忍容性に問題のない筋萎縮性側索硬化症患者

▽目的:「EPI-589再投与」の安全性・忍容性を評価する

▽評価項目:「安全性」「改訂版ALS機能評価スケールによる有効性」

▽症例数見込み:3症例

▽予定期間:2024年12月まで

16番目の患者申出療養「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するEPI-589再投与の安全性に関する研究」の概要(患者申出療養評価会議1 230622)

16番目の患者申出療養「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するEPI-589再投与の安全性に関する研究」の薬事承認間でのロードマップ(患者申出療養評価会議2 230622)



ALS患者・家族の「画期的な治療法を開発してほしい」との強い思いを踏まえるもので、会議では「適」と判断されました。1か月程度で告示改正が行われ、保険診療と保険外診療との併用が可能となります。

ただし、構成員からは▼患者・家族の費用負担が大きいことから(保険給付されない費用が119万3000円に及ぶ)、製薬メーカーに「企業治験を速やかに進め、保険適用を目指す」よう国から促してほしい▼薬剤蓄積による発がんリスクを考慮し「医師主導治験での24週+患者申出療養での22週」投与が最長と考えられる。その後の治療(既存薬の内服など)について患者サイドに十分に説明することが必要である—などの意見が出ており、厚生労働主から同院や製薬メーカーに対しこれらが伝達されます。

後述するように「患者申出療養の結果が、薬剤の保険適用につながる」好事例も出ており、今後の研究成果に期待が集まります。

パクリタキセル腹腔内投与等療法、有効性の研究がないままに自由診療として継続・・・

また6月22日の会合では、(1)の腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」に関連して、「有効性に関する研究が十分に進まないままに、自由診療として継続されている」問題を改めて検討しました。

(1)の技術は、腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がん患者に対し▼S-1(テガフール、ギメラシル、 オテラシルカリウムを配合した抗がん剤、胃がんや大腸がんへの効能・効果が認められている)の内服▼パクリタキセル(胃がんや乳がんへの効能・効果が認められている)の経静脈・ 腹腔内投与―を併用する技術です。有害事象発現状況や全生存期間、奏効割合、腹腔洗浄細胞診陰性化割合を評価項目として本技術の「有効性」や「安全性」の確認を行い、将来的な保険適用を目指しています。

すでに新規の患者組み入れは終了していますが、「腫瘍の進行が確認されるか、有害事象により継続困難となるまで反復(継続)する」こととされ、「技術の有効性・安全性の最終的な評価をいつ行えるのかが不明」な、いわば「宙ぶらりん」な状況です(全111症例中、昨年(2022年)6月23日時点で「3症例」で継続中)。

一方、この技術については、先行研究(先進医療)において「既存技術に比べた優越性は示されなかった」との結果が出ており、日本胃癌学会の「胃がん治療のガイドライン」では、▼パクリタキセル腹腔内投与は、腹膜播種を有し、かつ腹膜転移または卵巣転移以外の遠隔転移のない切除不能進行再発胃がんに対する治療として「推奨しない」▼パクリタキセル腹腔内投与の臨床的有用性が示唆される研究結果もあり、今後の臨床研究によるさらなる検討が必要—とされています。

こうした中で、従前より、この技術が東大病院において「有効性が十分に確認されないままに、自由診療で実施されている」点が問題視されており、6月22日の会合では、▼「有効性が十分に確認されないままに、自由診療で実施されている」点は極めて遺憾ではないか。有効性があるならば「患者が適切な治療方法にアクセスできてない」こととなり、有効性がないならば「不適切な治療が患者に自由診療で提供されている」ことになる。有効性の検証に向けた研究を進めるとともに、東大病院には最低限「ガイドラインでは推奨されないとされている」点等を患者サイドに丁寧に説明することを求めるべきである(天野慎介構成員:全国がん患者団体連合会理事長)▼患者の希望を踏まえて自由診療を行うことは理解できるが、有効性の研究が進められないままに実施されることは適切ではない(福井次矢座長:東京医科大学茨城医療センター病院長)▼「自由診療だから何をしても良い」とはならないであろう。学会に対し「有効性に関する研究を進めよ」と求めるべきではないか(山口俊晴構成員:がん研究会有明病院名誉院長)▼「有効性が十分に確認されないままに、自由診療で実施されている」点について、東大病院の倫理審査委員会等がどのように受け止めているのかも確認すべきである(渡辺弘司構成員:日本医師会常任理事)—などの意見が出されました。

これを受け、福井座長は次の3点を実施するよう厚労省に指示しています。

▽東大病院に対し、「倫理審査委員会等をはじめ、病院として『パクリタキセル腹腔内投与を、有効性の研究が進まない中で、自由診療で実施している』点をどのように受け止めているのか」を確認する

▽東大病院に対し、「パクリタキセル腹腔内投与を自由診療で実施する」に当たり、最低限「学会ガイドラインでは推奨されない」とされている点などを患者サイドの十分に説明するよう要請する

▽日本胃癌学会に対し、「腹膜播種を有し、かつ腹膜転移または卵巣転移以外の遠隔転移のない切除不能進行再発胃がんに対するパクリタキセル腹腔内投与療法」の有効性などに関する臨床研究を速やかに進めるよう要請する

東大病院・学会の回答を待って、改めて議論されます。

患者申出療養の結果が「薬剤の保険適用」に実際に結びつく好事例

ところで、(3)の「難治性天疱瘡患者へのリツキシマブ静脈内投与療法」については、すでに患者申出療養としての実施が終了していますが、その結果が「保険適用拡大」に結びついています(別に実施された医師主導治験、海外の臨床試験結果とあわせ、患者申出療養の結果が、『リツキシマブの天疱瘡(難治性の尋常性天 疱瘡及び落葉状天疱瘡)に対する効能・効果追加承認』につながった、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の2021年12月の報告書はこちら、慶應大学病院での単施設非盲検非対称の臨床研究(本患者申出療養)に言及している、関連記事はこちら)。

患者申出療養は「患者の思いを起点とし、臨床試験として保険適用を目指して実施する」仕組みですが、「患者数が限られている」など有効性・安全性に関するエビデンスにはダイレクトに結びつかないケースも少なくないのが実際です。

しかし今般、他の臨床試験と合わせて「患者申出療養の結果」が「薬剤の保険適用」に結びついたことは、非常に大きな意義・大きな価値があります。今後も患者申出療養の結果が「薬剤の保険適用」などにつながり、治療の選択肢拡大に結び付くことに期待が集まります。



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