Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

本邦の高齢者、コロナ禍でも「人とのつながり」を維持し、身体機能の低下、抑うつ、要介護度の悪化を防止―都健康長寿医療センター研究所

2024.2.27.(火)

本邦の高齢者は、長引く新型コロナウイルス感染症蔓延時にも「人とのつながり」を維持することができていた(対面での交流は減少)—。

こうした人とのつながりの維持は、身体機能の低下、抑うつ、要介護度の悪化を防止することにつながる―。

こういった研究結果を、東京都健康長寿医療センター研究所が2月21日に公表しました(東京都健康長寿医療センター研究所のサイトはこちら)。

「対面での交流」は減少するも、「人との繋がり」を維持

都健康長寿医療センターでは、▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど▼身体機能低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクが高い—などの研究成果を発表しています。

高齢化がますます進展する(2022年度から団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度にはすべてが後期高齢者となる)中では、「社会的孤立をいかに防ぐか」が極めて重要な施策になると考えられます。

ところで、2020年初頭から猛威を振るった「新型コロナウイルス感染症」により、国民は「行動自粛」を余儀なくされました。とりわけ「コロナウイルスに罹患した場合、重症化するリスクの高い高齢者」では、強く「自粛」が求められました。

こうした状況の中、都健康長寿医療センター研究所では、わが国の高齢者の「他者との対面・非対面の交流頻度や人とのつながりの認識」がコロナ禍3年間でどう変化したのかに注目。

具体的には、「お達者健診」(主に東京都板橋区の後期高齢者の健康と自立の維持を目的に研究所が実施する健診)の2019年会場調査に参加した高齢者606名(調査に参加し、2022年10月までの4回の追跡調査に少なくとも1回参加)を対象として、▼別居の家族や親戚、友人や近所の人との対面・非対面の交流頻度▼人とのつながりの認識—をアンケート形式で調査。

その結果、次のような状況が明らかになりました。

▽対面交流頻度得点は、緊急事態宣言下2年間、「中頻度群」、「低頻度群」で1-2点減少した

コロナ禍での対面交流の変化(交流頻度得点の目安、7点:ほとんど毎日、6点:週4-5回、5点:週2-3回、4点:週1回、3点:週1回未満、2点:月に2-3回程度、1点:月に1回、別居の家族や親戚、友人や近所の人のそれぞれで得点を求め14点満点)



▽非対面交流得点は、調査期間を通じてほとんど変化がなかった

コロナ禍での非対面交流頻度得点の変化(交流頻度得点の目安、7点:ほとんど毎日、6点:週4-5回、5点:週2-3回、4点:週1回、3点:週1回未満、2点:月に2-3回程度、1点:月に1回、別居の家族や親戚、友人や近所の人のそれぞれで得点を求め14点満点)



▽人とのつながり認識得点は、高頻度群、注頻度群、低頻度群のいずれでも低下傾向にあったが、その低下度合は小さい(3年間で1点程度)

コロナ禍での「人とのつながり」の認識の変化(交流頻度得点の目安、7点:ほとんど毎日、6点:週4-5回、5点:週2-3回、4点:週1回、3点:週1回未満、2点:月に2-3回程度、1点:月に1回、別居の家族や親戚、友人や近所の人のそれぞれで得点を求め14点満点)



研究所では、「コロナ緊急事態宣言下の『対面交流の減少』は、加齢による変化よりも大きかったが、『人とのつながり』は加齢による変化の範囲内で顕著な低下はなかった」、「活動制限によって高齢者の対面交流は減少したが、非対面交流は減らさず、人とのつながりを維持した」と分析しています。

本研究の対象には「社会的孤立やフレイルに該当する高齢者」も含まれているため、「本邦の高齢者を代表する集団」と考えることができ、研究所は「長期的なパンデミックに対処する力を、わが国の高齢者の多くが有していた」ことを示すものとコメントしています。

「他者とのつながり」の維持により、▼身体機能の低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクを一定程度防止できていると考えられ、さらに「次なる新興感染症」発生時に向けて、「高齢者が他者とのつながりを維持しやすくする仕組み」なども研究していくことに期待が集まります。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

「オーラルフレイルの予防・改善」のために、定期的な歯科受診や口腔機能維持トレーニング実施を—都健康長寿医療センター
糖尿病に罹患し食事の多様性が低いと「フレイルリスク」高、糖尿病高齢者の食事は「多様性」も考慮を―都健康長寿医療センター研究所
「中等度以上の認知症・ADL低下」の高齢入院患者は自宅退院が困難、早期の手厚い在宅復帰支援が重要―都健康長寿医療センター研究所
「チーズの摂取」「歩行の速度が速い」「ふくらはぎが太い」ことが認知機能の高さと強く関連―都健康長寿医療センター研究所
「耳の聞こえにくさ」に早期かつ適切に対応することが転倒等の傷害予防のために重要—都健康長寿医療センター研究所
「生活習慣病の管理、運動、栄養指導、認知トレーニング」が認知機能低下の抑制・フレイル予防に有効—長寿医療研究センター
後期高齢者健診で用いる「後期高齢者の質問票」、うち12項目で簡便に「フレイル」ハイリスク者を抽出可能—都健康長寿医療センター研究所
治療抵抗性の前立腺がんに対する「新たな治療法」の確立に向けた研究進む—都健康長寿医療センター研究所
定期の聴力チェック→耳鼻科等受診勧奨→早期の補聴器装着→認知症リスク低下防止—のシステム構築を―都健康長寿医療センター研究所
老化に伴い交感神経の筋肉サポート機能が弱まって「筋力が低下」、筋緊張が生じやすくなり「運動能力が低下」―都健康長寿医療センター研究所
腎機能が低下し「血中GDF15」の濃度が上昇すると、高齢者の死亡リスクが2倍に高まる—都健康長寿医療センター研究所
高齢期にむけた健康の維持にとって最適な食事のタンパク質比率は25-35%!―都健康長寿医療センター研究所
「お肉」を食べることが、高齢者のフレイル予防に有効である可能性!―都健康長寿医療センター研究所
皮膚へのやさしい刺激が肩こり症状を緩和する可能性—都健康長寿医療センター研究所
フレイル度の高い高齢者は就業中の転倒・転落事故が多い!フレイル度を踏まえた業務選択などが重要!―都健康長寿医療センター研究所
ペット、とりわけ犬の飼育が「運動の継続」→「要介護状態等の予防」→「介護費の軽減」につながる!—健康長寿医療センター研究所
「ペットの飼育」は介護予防だけでなく「介護費の軽減」にも効果あり!—健康長寿医療センター研究所

認知症患者が自由なテーマで話し合う本人ミーティングの実践が、地域共生社会の構築の第1歩—健康長寿医療センター研究所
糖尿病性認知症のバイオマーカー候補を発見、血液診断で「糖尿病性認知症の超早期鑑別」が可能な時代に—健康長寿医療センター研究所
血液診断によって「近く要介護・要支援状態に陥る可能性の高い人」を鑑別できる時代が来る—健康長寿医療センター研究所
後期高齢者、歯科受診により急性期疾患(肺炎、脳卒中、尿路感染症)での入院発生割合を抑制—都健康長寿医療センター
認知症の原因疾患を鑑別し、治療法選択・その効果測定を補助する「PET検査」の保険適用に強い期待—都健康長寿医療センター
食べ物を飲み込む際の「喉の刺激」によりサイロキシン・カルシトニン分泌が活性化され、心身の健康が高まる—都健康長寿医療センター
口腔状態に問題ある高齢者は要介護や死亡リスクが2倍超、地域で「オーラルフレイル改善」の取り組み強化を—都健康長寿医療センター
コロナ禍で「要介護1・2高齢者等を介護する家族」の介護負担が増し、メンタルヘルス不調を来す—都健康長寿医療センター
DHAやEPA、ARAを十分に摂取することで「認知機能を維持できる」可能性—長寿医療研究センター
「ゆっくりとした歩行」「軽い家事活動」などの低強度身体活動も、脳機能の維持に有用—長寿医療研究センター
治療抵抗性の前立腺がん、新治療法として「RNA分解酵素を標的とする薬剤」に期待—都健康長寿医療センター
男女ともビタミンC摂取不足で筋肉量・身体能力が低下するが、適切な摂取で回復可能—都健康長寿医療センター
自治体と研究機関が協働し「地域住民の健康水準アップ」を目指すことが重要—都健康長寿医療センター
日本人特有の「レビー小体型認知症の原因遺伝子」を解明、治療法・予防法開発に繋がると期待—長寿医療研究センター
日本人高齢者、寿命の延伸に伴い身体機能だけでなく「認知機能も向上」—長寿医療研究センター
フレイル予防・改善のため「運動する」「頭を使う」「社会参加する」など多様な日常行動の実施を—都健康長寿医療センター
「要介護度が低い=家族介護負担が小さい」わけではない、家族介護者の負担・ストレスに留意を—都健康長寿医療センター
奥歯を失うと、脳の老化が進む—長寿医療研究センター
介護予防のために身体活動・多様な食品摂取・社会交流の「組み合わせ」が重要—都健康長寿医療センター
高齢男性の「コロナ禍での社会的孤立」が大幅増、コロナ禍で孤立した者は孤独感・コロナへの恐怖感がとくに強い—都健康長寿医療センター
中等度以上の認知症患者は「退院直後の再入院」リスク高い、入院時・前から再入院予防策を—都健康長寿医療センター
AI(人工知能)用いて「顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性—都健康長寿医療センター
認知症高齢者が新型コロナに罹患した場合の感染対策・ケアのマニュアルを作成—都健康長寿医療センター
地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなる、交流減少や町内会活動不参加は危険信号―都健康長寿医療センター
新型コロナ感染防止策をとって「通いの場」を開催し、地域高齢者の心身の健康確保を―長寿医療研究センター
居住形態でなく、社会的ネットワークの低さが身体機能低下や抑うつ等のリスク高める―都健康長寿医療センター
孤立と閉じこもり傾向の重複で、高齢者の死亡率は2倍超に上昇―健康長寿医療センター
新型コロナの影響で高齢者の身体活動は3割減、ウォーキングや屋内での運動実施が重要―長寿医療研究センター