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タンパク質不足の判断、従来の「血中アルブミンの濃度」よりも「血中アルブミンの酸化・還元バランス」が有用—都健康長寿医療センター研究所

2024.7.24.(水)

タンパク質過不足の判断には、従来の「血中アルブミンの濃度」よりも、「血中アルブミンの酸化・還元バランス」のほうが有用である—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)らの研究チームが7月19日にプレスリリース「血中アルブミン酸化還元バランスが高齢者の低たんぱく質栄養状態の指標となる可能性」を公表し、こうして点を示しました(研究所のサイトはこちら)。

「血中アルブミンの濃度」は、「タンパク質摂取量」と統計学的に有意な関係なし

ついに2022年度から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢化の進展は「要介護者、要支援者の増加」につながるため、「介護予防」などが非常に重要となります。

要介護・要支援の原因は多種多様ですが、▼サルコペニア(加齢に伴って生じる骨格筋減弱症)やフレイル(虚弱)→(増悪)→▼要支援・要介護—という流れが1つ存在します。さらに高齢者では、「食欲の低下や食嗜好性の変化」→「タンパク質・エネルギー欠乏」→「サルコペニアやフレイルなどのリスクが高まる」ことも分かっています。

ところで、血清中のタンパク質の濃度を判断する栄養指標として「血中アルブミン濃度」があります。この血中アルブミンには「酸化型」と「還元型」があり、▼食事からのタンパク質摂取量が充足すると血中アルブミンの還元型が増加し、酸化型が減少する▼タンパク質摂取量が不足すると、血中アルブミンの酸化型が増加し、還元型が減少する—ことが知られています。

近年、この「血中アルブミンの酸化・還元バランス」が、従来から用いられている「血中アルブミン濃度」と比較して、より早期・正確に「タンパク質の栄養状態を示す栄養指標となりうる」ことが基礎・臨床研究から明らかとなってきています。

今般、都健康長寿医療センター研究所と森永乳業社が共同で「タンパク質摂取量」と「血中アルブミン酸化・還元バランス」との関連について研究を実施しました。具体的には、都健康長寿医療センターが実施するコホート調査「板橋健康長寿縦断研究」の健診に参加した地域在住の高齢者1011名を対象に、両者の関連を調査。

調査では、「日本人の食事摂取基準(2020年版)をもとに、「65歳以上で推奨される1日当たりのタンパク質摂取量を満たしているかどうか」をタンパク質過不足の基準に設定。その結果、次のような状況が確認されました。

▽「血中アルブミン酸化・還元バランス」は、「タンパク質摂取量」と統計学的に有意な関係が認められた

▽「血中アルブミン濃度」は、「タンパク質摂取量」と統計学的に有意な関係は認められなかった

タンパク質過不足の判断には、従来の「血中アルブミンの濃度」よりも、「血中アルブミンの酸化・還元バランス」のほうが有用



ここから、「血中アルブミン酸化・還元バランス」が、「高齢者のタンパク質栄養状態を反映し、低タンパク質栄養状態に伴うサルコペニアやフレイルといった疾病リスクの低減に寄与しうる指標」となる可能性が示されたと言えます。

今後、各種健康診断の基準値見直し論議や、サルコペニア・フレイルのリスク診断基準設定論議などに発展することが期待されます。



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