2025年9月19日の「スマホマイナ保険証」利用開始に向け法令を整理、スマホマイナ保険証対応医療機関はステッカー等で明示—中医協・総会(1)
2025.8.27.(水)
スマートフォンへ「マイナ保険証機能」を搭載し、「スマホでの保険診療受診」を可能とする仕組みを本年(2025年)9月19日から始めることとなり、法令上の整理を行う(スマホマイナ保険証での資格確認が可能な旨)—。
中央社会保険医療協議会・総会が8月27日に開催され、こうした点が了承されました。スマホマイナ保険証に対応する医療機関にはステッカーが配付され、これを掲示することで、患者・地域住民に「当院はスマホマイナ保険証に対応している」とPRすることになります。また厚生労働省は「スマホマイナ保険証に対応している医療機関」をホームページで公表する予定です。
なお、同日には2026年度の診療報酬改定に向けて「医療機関の経営状況」の確認論議や「在宅医療」の総論論議、材料価格制度改革に向けた業界からの意見聴取なども行っており、別稿で報じます。
「スマートフォンへのマイナ保険証機能搭載」、2025年9月頃よりスタート
医療DXの推進を目指し、マイナ保険証(マイナンバーカードの保険証利用)での医療機関受診を基本とする仕組み(マイナンバーカードと保険証の一体化)が進められています(もっとも、▼既に発行されている保険証▼保険者の発行する資格確認書—による受診も可能、関連記事はこちら)。
マイナ保険証の利用状況は上昇しており、本年(2025年)7月時点で31.43%となりました。ただし、まだまだ十分とは言えず、様々な「マイナ保険証のさらなる利用促進」策が検討・実施されてきています。

マイナ保険証の利用状況等(中医協総会(1)1 250827)
その一環として「スマートフォンへのマイナ保険証機能搭載」があります。4月3日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、▼6・7月(2025年6・7月)頃から約2か月、10程度の医療機関等(3病院、4医科診療所など)で「実証事業」を行う→▼実証事業で課題を抽出し、必要な改善を行う→▼早ければ8月下旬-9月(2025年8月下旬-9月)から、「環境の整った全国の医療機関等」でスマホ対応を可能とする—というスケジュールが提示されました(関連記事はこちら)。

スマホマイナ保険証の実証事業の結果、支障なく資格確認を行えることが確認された(中医協総会(1)3 250827)
マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載(以下、スマホ搭載)について、▼本年(2025年)5月にAndroid端末へのスマホ用電子証明書搭載サービスの開始▼6月にiPhone(Appleウォレット)へのマイナンバーカード搭載—をしており、「本年(2025年)9月19日」より、スマホ搭載されたマイナ保険証の読み取り機能を開放し、機器の準備が整った医療機関等から順次受付が可能となる見込みです。スマホマイナ保険証に対応できる医療機関には「ステッカー」が本年(2025年)8月末に配付され、これを掲示し、患者に「当院はスマホマイナ保険証に対応可能である」と知らせることができます(関連記事はこちら)。
あわせて厚労省は「スマートフォンによるマイナ保険証(以下、スマホマイナ保険証)へ対応を行う医療機関では汎用のスマートフォンリーダーなどを購入・設置する必要があり、そこへの補助を行う」考えも明確にしています(関連記事はこちら)。
●医療機関等向け総合ポータルサイトの「スマホ搭載対応」(医療機関等への補助)の詳細はこちら

スマホ保険証対応への補助1

スマホ保険証対応への補助2
スマートフォンは多くの国民が保有していることから、「マイナ保険証のスマホ対応」によりマイナ保険証利用がさらに促進すると期待されます。

スマホへのマイナ保険証利用機能搭載(社保審・医療保険部会(1)2 250403)

スマホマイナ保険証のメリット(中医協総会(1)2 250827)
ところで、保険診療を行う保険医・保険医療機関が遵守しなければならない規則である「保険医療機関及び保険医療養担当規則」および保険医療機関及び保険医療養担当規則第三条第一項第四号等に規定する厚生労働大臣が定める方法には、「スマホマイナ保険証による資格確認」の規定は置かれていません。これを放置すれば「スマホマイナ保険証で保険診療を受ける」ことができません。
▽参考:「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(Gem Med編集部で一部抜粋・改変)
(受給資格の確認等)
第3条第1項 保険医療機関は、患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、次に掲げるいずれかの方法によって療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない。ただし、緊急やむを得ない事由によって当該確認を行うことができない患者であって、療養の給付を受ける資格が明らかなものについては、この限りでない。
1 健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認(いわゆるマイナ保険証)
2 患者の提出し、または提示する資格確認書
3 当該保険医療機関が、過去に取得した当該患者の被保険者・被扶養者の資格に係る情報(保険給付に係る費用の請求に必要な情報を含む)を用いて、保険者に対し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、あらかじめ照会を行い、保険者から回答を受けて取得した直近の当該情報を確認する方法(当該患者が当該保険医療機関から療養の給付(居宅における療養上の管理、その療養に伴う世話その他の看護に限る)を受けようとする場合であって、当該保険医療機関から電子資格確認による確認を受けてから継続的な療養の給付を受けている場合に限る)
4 その他厚生労働大臣が定める方法
第2項 患者が電子資格確認により療養の給付を受ける資格があることの確認を受けることを求めた場合における前項の規定の適用については、同項中「次に掲げるいずれかの」とあるのは「第1号または第3三号に掲げる」と、「事由によって」とあるのは「事由によって第1号または第3号に掲げる方法により」とする
第3項 「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」附則第3条の4第1項の規定により「同項に規定する書面による請求」を行っている保険医療機関、および同令附則第3条の5第1項の規定により届け出を行つた保険医療機関については、前項の規定は適用しない
第4項 保険医療機関(前項の規定の適用を受けるものを除く)は、第2項に規定する場合において、患者が電子資格確認によって療養の給付を受ける資格があることの確認を受けることができるよう、あらかじめ必要な体制(オンライン資格確認体制)を整備しなければならない
▽参考:保険医療機関及び保険医療養担当規則第三条第一項第四号等に規定する厚生労働大臣が定める方法【告示】(Gem Med編集部で一部抜粋・改変)
保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条第1一項第四号(上記の「その他厚生労働大臣が定める方法)などに規定する厚生労働大臣が定める方法は、当分の間、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認によって療養の給付を受ける資格があることを確認できない場合に限り、次の各号に掲げるものとする。
1 患者の提示する個人番号カード・資格情報通知書
2 患者の提示する個人番号カード及び番号利用法附則第6条第3項に規定する情報提供等記録開示システムを通じて取得した当該患者の被保険者・被扶養者の資格に係る情報が記録されたもの
3 保険医療機関等が、利用者証明用電子証明書の発行を受けた患者であって、当該利用者証明用電子証明書の有効期間が満了した日から当該日の属する月の末日から起算して3か月を経過した日までの間にあるものについて、当該利用者証明用電子証明書に記録された利用者証明利用者検証符号に対応する利用者証明利用者符号を用いた本人確認を行った上で、保険者に対し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、当該患者の被保険者又は被扶養者の資格に係る情報の照会を行い、保険者から回答を受けることによりその資格を確認する方法
そこで厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の吉田拓野室長は、上記告示の「次に掲げるいずれかの方法によって療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない」との規則に、次のような方法(スマホマイナ保険証による方法)を位置づけることを中医協に提案し、了承されました。今後、速やかに告示改正等が行われます(本年(2025年)9月19日に施行予定)。
▽患者の提示する移動端末設備(いわゆるスマートフォンに、マイナ保険証機能が搭載されているもの)を用いて情報提供等記録開示システムを通じて取得した当該患者の被保険者・被扶養者の資格に係る情報
したがって、医療機関等の窓口における資格確認は、次のいずれかの方法で行うことになります。
(1)マイナンバーカードと保険証の紐づけを行っている場合
▼「マイナンバーカード」で保険診療を受ける(医療機関等窓口の顔認証付きカードリーダーシステムで資格確認)
▼「スマホマイナ保険証」で保険診療を受ける(医療機関等窓口の汎用カードリーダーシステム(一部の顔認証付きカードリーダーシステムではスマホマイナ保険証にも対応)で資格確認)
(2)マイナンバーカードと保険証の紐づけ、スマホマイナ保険証の準備を行っているが、何らかの事情でオンライン資格確認を行えなかった場合
▼「患者自身のマイナポータル画面(PDF含む)+マイナンバーカード」で保険診療を受ける(マイナポータル画面で資格情報を医療機関が確認する)
▼「患者自身のマイナポータル画面」で保険診療を受ける(マイナポータル画面で資格情報を医療機関が確認する)
▼「医療保険者が交付した【資格情報のお知らせ】(A4の紙)+マイナンバーカード」で保険診療を受ける(『資格情報のお知らせ』で資格情報を医療機関が確認する)
▼「マイナンバーカードを提示するとともに、初診の場合には患者に【被保険者資格申立書】を記載してもらう、再診の場合には医療機関で過去の受診情報をもとに資格確認する」ことで保険診療を受ける(関連記事はこちら)
(3)マイナンバーカードを持っていない場合、マイナンバーカードと保険証との紐づけを行っていない場合
▼「保険証」(有効期限が切れるまで)で保険診療を受ける(従来と同じ)
▼「医療保険者が交付した【資格確認書】」で保険診療を受ける(保険証と同様に【資格確認書】を医療機関窓口に提示する)(関連記事はこちら)

医療機関等の窓口での資格確認の方法(中医協総会(1)5 250827)
なお、スマホマイナ保険証の利用に向けて厚労省保険局医療介護連携政策課の山田章平課長は、次のような準備を進めてほしいと要請しています。
(医療機関等における準備)
▽顔認証付きカードリーダーに対応した汎用カードリーダーの購入
▽汎用カードリーダーと資格確認端末(PC)との接続
▽窓口での受付環境の整備

医療機関等側の準備(中医協総会(1)6 250827)
(患者・国民等における準備)
▽自身のスマートフォンがスマホ用電子証明書の利用に対応しているかの確認
▽健康保険証利用登録
▽来院前のスマートフォンへのマイナンバーカードの追加
▽スマホ対応医療機関・薬局の確認(医療機関・薬局の受け付けにある「ステッカー」を事前に確認した上で、スマホを持参して受け付けする)

患者側の準備(中医協総会(1)7 250827)
この点について診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、▼スマホマイナ保険証は利便性が上がり、マイナポータルにアクセスし、患者が自身の情報を確認しやすくなる。ただし、スピードは重要だが拙速に進めれば、混乱してかえって大きなブレーキになってしまう点に留意すべき▼9月19日から「準備の整った医療機関」でスマホマイナ保険証での受診が可能になるが、対応できる医療機関は当面はごく一部に限られる。その点を国民に十分周知すべき▼スマホマイナ保険証での資格確認ができない場合に「マイナポータルに患者自身がログインして、その画面をもとに資格確認を行う」とのことだが、医療機関窓口でそれが「真正なものか、患者自身のものか」などを確認することは困難である。「初めてスマホマイナ保険証を利用する際には念のためマイナンバーカードを持参してほしい」と周知してはどうか▼スマートフォンへのマイナ保険証機能搭載の手続きは、「必ず来院前に患者自身で行う」にように周知すべき(医療機関の窓口で相談されても対応しきれない)▼医療機関への導入手順や、読み取れない場合の対応などを国が分かりやすくマニュアル化し、また相談窓口なども設定すべき—と提案しています。
また、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も「9月19日からスマホマイナ保険証の利用が一部医療機関で可能になるが、あまりに時間がない。スマートフォンにマイナ保険証機能を搭載し医療機関にかかったが、窓口では『当院ではスマートフォンでは受診できない』と対応されたのでは評判が落ちてしまう。丁寧な周知が必要である」とコメントしています。
何か所の医療機関でスマホマイナ保険証が利用可能になるのかは未知数ですが、厚労省は「キヤノン社の顔認証付きカードリーダーシステムは、すでにスマホマイナ保険証に対応しており、これを導入している医療機関が全国で3万施設ほどある」と情報提供しています。
なお、【医療DX推進体制整備加算】(初診料等の加算)について、マイナ保険証利用率の基準値が「2025年10月」・「2026年3月」の2段階でさらに引き上げられる(関連記事はこちらとこちら)ことを踏まえると、スマホ対応は「医療機関等での任意対応」ではあるものの、積極的に検討・導入することが重要と言えます。

医療DX推進体制整備加算の見直し(中医協総会(2)1 250723)
【関連記事】
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