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0925ミニセミナー診療報酬改定セミナー2026

看護師「特定行為研修」、効率化により受講者増を狙うとともに、「研修の質の維持・向上」を図るべき—看護師特定行為研修WG

2025.9.19.(金)

今年度(2025年度)から2040年頃にかけて少子高齢化がさらに進展し、「特定行為研修を修了した看護師」の活躍にさらに期待が集まる。そうした中で、より多くの看護師が、より質の高い研修を効率良く受講し、「特定行為研修を修了した看護師」として現場で活躍するためにどういった制度見直しをしていけば良いか—。

例えば、「看護師基礎教育→新人研修→特定行為研修がシームレスに進むような方策」、「特定行為の性質に鑑みた、より効率的かつ効果的な研修」などを探っていく—。

ただし、「研修の質・輩出される特定行為研修修了者の質」の維持・確保こそが最も重要であり、「効率的な研修」の在り方とともに、「研修の質を維持し、高める」方策も検討する必要がある—。

こうした議論が9月17日に開催された「看護師の特定行為研修制度見直しに係るワーキンググループ」(以下、ワーキング)で始まりました。技術的・専門的な検討を進め、来年(2026年)1月に意見を取りまとめ、その後2月の「看護師特定行為・研修部会」(以下、部会)での見直し内容決定を目指します。

看護師基礎教育→新人研修→特定行為研修がシームレスに進むような方策を検討

一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらこちら)。

看護師特定行為研修制度の全体像(看護師特定行為研修WG1 250917)



2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、今年度(2025年度)には全員が後期高齢者となります。

さらに2025年度から2040年にかけて、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、医療・介護双方のニーズを抱えることの多い85歳以上の高齢者の割合が高まります。同時に、現役世代人口が急速に減少していきます。

このように、▼医療・介護の複合的ニーズが急速に膨らんでいく▼医療従事者の確保が難しくなっていく—中では、一定の医行為を行える「特定行為研修修了看護師」の活躍に大きな期待が集まっています。とりわけ、「在宅療養や介護施設など、医師の関与が手薄になりがちな場面」、「新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症対応」、「医師働き方改革を進める中で、医師からの重要なタスク・シフティング先」などで、特定行為研修修了看護師がさらに活躍することが期待されています。

本年(2025年)9月時点で、特定行為研修を実施する指定研修機関は474施設(定員6717名)、特定行為研修修了者は1万3887名に拡大しています。

特定行為研修の最新状況(看護師特定行為研修WG2 250917)



ただし、特定行為研修修了者の育成は、まだまだ十分ではなく、また「研修の内容や運用、さらに特定行為そのものにも改善点がある」ことも指摘されています。そこで厚労省はワーキングを設置し、「現場感覚に富んだメンバー」で特定行為研修制度について、▼効果的・効率的な研修の実施に向けてどういった見直し等が考えられるか▼特定行為の内容についてどういった見直し等が考えられるか—の検討を始めました。

9月17日の会合では前者の「効果的・効率的な研修の実施」に向けて、次の3つの論点が厚労省から示され、これに基づいた議論を行いました。

(1)看護基礎教育・新人研修・特定行為研修までの各段階で「臨床判断能力を含む臨床実践能力を養う」ことを目指した教育・研修が行われているなかで、その能力をシームレスに積み上げる教育・ 研修のあり方をどう考えるか。

(2)「性質の異なる特定行為」のより効果的な実習のあり方、実習におけるシミュレーター等の活用をどう考えるか。

(3)履修免除も含め、臨床判断能力、臨床実践能力を効果的、効率的に養う特定行為研修のあり方についてどう考えるか



まず(1)は、例えば「自院で看護師として働きながら特定行為研修を受ける」負担を軽減する(これにより研修受講が促進されると考えられる)ために、一部のカリキュラムを看護基礎教育や新人研修に移行することができないか、といった意見が出ていることなどを踏まえた論点です。ただし、「臨床の場に出てから学んだほうが良い領域もある」(実感を持って学べる)との指摘もあります。

この点についてワーキングでは、▼現場看護師からは「特定行為研修→基礎教育等へのカリキュラム移行」による負担減を期待する声が出ている(渋谷智恵構成員:日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程・課程長)▼在宅医療・訪問看護の現場では「特定行為研修を修了した看護師」はまだまだ活躍できていない。シームレスな研修を実現し、特定行為研修を受ける時点で「あ、これはあの時に習った」と感じることなどは円滑な研修にとって非常に重要である(小林正宜構成員:葛西医院・院長)▼臨床病態生理やフィジカルアセスメントなど基本的な部分は、特定行為研修から基礎教育等への移行を検討することで、特定行為研修受講の負担軽減につながると期待できる(福永ヒトミ構成員:日本医科大学武蔵小杉病院・看護部長兼副院長)▼基礎教育の段階から臨床判断能力を養い、新人研修→特定行為研修へと連続性を持たせることが重要である—などの声が出ています。

こうした意見からは、特定行為研修のカリキュラムにある「〇〇学:●時間」を丸々基礎教育に移管するのではなく、「〇〇学:●時間」を「〇部分」「◇部分」「▽部分」などに分解し、このうち最も基礎的な「〇部分」を基礎教育に移管し、臨床に出てから学ぶべき「◇部分」を新人研修に移管し、一人立ちしてから知識・技術を深めるべき「▽部分」は特定行為研修に残すといったことなどが考えられるかもしれません。

もっとも、▼「どの時期に何を学ぶべきか」を考え、基礎教育の中に移行していくべきもの、現場でオン・ザ・ジョブトレーニングの中で身につけるべきものなどを切り分けていく必要がある(石丸裕康構成員:関西医科大学総合診療医学講座・教授)▼基礎教育の内容を増やし、ハードルを高くすれば「看護学校を卒業できない」学生が一部に出てくる可能性がある。そもそもの「看護師確保」を阻害しないかも検討する必要がある。大学と看護学校との違いにも留意する必要がある(今明秀委員:八戸市立市民病院・事業管理者)—との指摘も出ている点に留意が必要でしょう。

なお春山早苗座長(自治医科大学看護学部・教授)は、特定行為研修にとどまらず基礎教育・新人研修の「カリキュラム全体を整理しなおす」必要性にも言及しています。議論の経過によっては、看護教育全体の大きな見直しにつながる可能性もありそうです。

特定行為の性質に鑑みた「より効率的かつ効果的な研修の在り方」を探っていく

また(2)には次の2つの論点が含まれます。

▽特定行為は、大きく「穿刺や抜去などの実技」と「投与量などの調整」の2つに分けられるが、それぞれで研修方法・評価方法を区分けしていく必要があるのではないか

特定行為の性質(看護師特定行為研修WG3 250917)



▽症例の確保が難しい行為について、「シミュレーター」研修等を実習の代替にすることなどをどう考えるか

シミュレータの活用に関する現場の声(看護師特定行為研修WG4 250917)



これらの点については、▼部会でも指摘されたよう「抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射および投与量の調整」症例確保は難しく、積極的にシミュレーター等を活用していくべき。あわせて「特定行為」の内容についても洗い直しをすべき(鈴木靖子委員:地域医療振興協会NP・NDC研修センター次長)▼研修を指導する医師を複数科の医師に委ねることで、多くの診療科が特定行為研修に接し、理解が深まる。こうした工夫を行うべき(今構成員)▼「穿刺や抜去などの実技」については、シミュレーター活用等を促進していくことが考えられる。「投与量などの調整」については、「患者の状態をみて、調整の必要性を検討し、実施する」という過程を、演習で複数事例をもとに学んでいくことが重要である。ただし「実症例での経験」が極めて重要であり、例えば「5症例のうち3症例はシミュレーター等で代替可能とするが、2症例は必ず実際の患者を対象に経験する」等の緩和が考えられるのではないか(渋谷構成員)—などの考えを示しています。

渋谷構成員の「区分け」案は、非常に明快で分かりやすく、石丸構成員も提案に賛同しています。

もっともシミュレーター導入には多額の費用がかかるため、大滝純司構成員(東京医科大学医学部・客員教授)は「一部施設にシミュレーターを集約して、多施設で共同利用可能した場合に補助を行う」等の工夫を検討すべきと進言しています。非常に魅力的な提案と言えます。

なお、福永委員からは「例えば『挿管チューブの位置調整』について、症例確保が困難なために、一部の病院では『麻酔導入時に、わざと挿管を深く(浅く)する』などしていると聞く。これは患者にも不利益が出るため、厳に慎むべきである」との注意喚起がなされている点に留意が必要です。

「効率的な研修」の在り方とともに、「研修の質を維持し、高める」方策を検討

また(3)の免除は、例えば「既にA特定行為について研修を修了した看護師が、別のB特定行為の研修を受講する場合に、重複する共通科目の受講を免除できる」等の仕組みを拡充などして、受講負担の軽減→研修受講の促進に繋げられないかという論点と言えます。

特定行為の免除1(看護師特定行為研修WG5 250917)

特定行為の免除2(看護師特定行為研修WG6 250917)



この点、今構成員から「『特定行為単位での免除』を可能とするなど、より免除を利活用しやすくしてはどうか」といった声が出るなど、免除制度の拡充を求める声が多数出ています。

ただし、今構成員も含めた多くの構成員が「最も重要なのは質の担保(研修の質、輩出される特定行為研修修了者の質)である」点にも言及。「免除→質の低下」につながらないように、例えば▼履修の証明書(形式的に●時間受講しただけではなく、筆記試験や指導医による観察など)を出し、それを多くの指定研修機関等で共有可能としてはどうか(渋谷構成員、川崎広志構成員:なごみ訪問看護ステーション・代表取締役兼管理者)▼教材の質を確認すべき時期に来ている(当初は突貫工事で教材を作成した部分もある)(大滝構成員)▼生涯学習につながるような工夫(例えば、当初の研修から時間が経過しても●●講習を受講すれば当該科目の研修を受講しなおさずとも可とするなど)を検討すべき(石丸構成員)—などの提案が出ています。



今後、「効率的な研修」とセットで「研修の質、輩出される特定行為研修修了者の質を維持し、より高めていく」方策を検討していくことになりそうです。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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