国家戦略特区では、特例的に遠隔指導でも薬剤服用歴管理指導料の算定認める―中医協総会
2018.7.18.(水)
遠隔服薬指導の実施が認められた3地域の国家戦略特区(愛知県、兵庫県養父市、福岡県)において、遠隔服薬指導の中で「薬剤服用に関する説明や指導」「薬歴の確認」「後発医薬品の情報提供」など所定の要件を満たせば、暫定的に【薬剤服用歴管理指導料】の算定を対面指導でなくとも認める―。
7月18日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった点を明確にすることが了承されました。厚生労働省は近く疑義解釈を示す考えです。
遠隔指導と対面指導との差に鑑み、「対面指導後の遠隔指導に限る」などの条件を付与
薬剤の服薬指導は、薬剤師が患者等と相対する「対面」で行うことが原則です。医療用医薬品は、人体への作用が著しく、重篤な副作用の恐れもあるため、薬剤師と患者との間に信頼関係が構築され、「かかりつけ薬剤師」として患者の状況を把握する必要があるためです。
一方、▼愛知県▼兵庫県養父市▼福岡県―の3地域の国家戦略特区においては、対面でない「遠隔」での服薬指導を行うことが実験的・実証的に認められました。もっとも、対面の服薬指導を当該地域で解禁するものではなく、(1)離島、へき地の居住者であること(2)「遠隔診療」が行われている患者であること(3)対面での服薬指導ができない状況にあること―との要件を満たした場合に限り、特例的にテレビ電話による服薬指導(遠隔服薬指導)を認めるものです。
その際、「対面でない服薬指導でも、診療報酬(調剤報酬)算定の要件を満たすのか」という問題が浮上します。
まず、▼かかりつけ薬剤師指導料▼かかりつけ薬剤師包括管理料▼在宅患者訪問薬剤管理指導料▼在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料▼在宅患者緊急時等共同指導料—には、「(必要に応じて)(緊急に)薬剤師が患家を訪問する」旨が算定要件の中に設定されているため、「遠隔指導」による算定はできないことが明白です。
このため、上記が問題になるのは【薬剤服用歴管理指導料】に限られるようです。なお、【調剤基本料】や【調剤料】は「指導」を評価する点数ではないため、「遠隔指導」による調剤でも、要件を満たしてれば算定が可能となります。
この点、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、【薬剤服用歴管理指導料】の算定要件である▼薬剤情報を文書等で提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行う▼患者の薬剤服用歴に照らし、服用等に関する必要な指導を行う▼過去の薬剤服用歴等の確認を行う▼後発品情報を提供する―などの事項は「遠隔での指導」でも満たしうることから、特例的かつ暫定的に「遠隔服薬指導でも【薬剤服用歴管理指導料】の算定が可能である」ことを明確にする方針を提示。
ただし、遠隔指導は対面指導を補完するものであること、遠隔指導は患者が「薬剤の実物」を手にする前に行われ、指導に限界があることなどを踏まえ、次のような点も、いわば「追加的な算定要件」とすることになりました。
▽「対面診療の原則の下で、継続して診療を受けている患者」に対し、少なくとも1回以上、対面で薬剤服用歴の聴取や服薬指導を行った薬局が、引き続き遠隔服薬指導を行う場合にのみ算定可能とする(対面指導を行う薬局と、遠隔指導を行う薬局が別であってはならない)
▽「患者の手元に薬剤が届いた後にも、改めて必要な確認を行う」(事後確認)ことを求め、事後確認後に算定可能とする(薬剤が手元に届く前の指導(後発品への変更希望聴取や、相互作用のある薬剤を服用していないかの確認なども含めて)と、事後の確認との2段階での指導が必要となる)
▽厚労省の「情報通信機器を用いた診療に係る指針」を参考に、情報セキュリティ対策を講じることを求める(患者の個人情報保護などのため)
▽お薬手帳の活用を前提とする
中医協総会では、こうした内容に異論は出されなかったものの、「将来的な遠隔服薬指導の拡大」を睨み、「国家戦略特区での結果を踏まえ、課題などを十分に精査する必要がある」との指摘が診療側・支払側の双方から出されました。今回の「遠隔指導による【薬剤服用歴管理指導料】の算定」は、愛知県、兵庫県養父市、福岡県の国家戦略特区においてのみ特例的・暫定的に認められるものですが、将来的には、▼特例的な遠隔指導(離島などの患者で、かつ対面指導が困難なケース)を全国に拡大する▼2018年度診療報酬改定で新設された【オンライン診療料】等のように、患者の利便性等に配慮した【オンライン服薬指導】を認める―といった拡大が検討される可能性があるためです(両者は異なるテーマである点に留意)(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
例えば、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「対面服薬指導に診療に比べて遠隔服薬指導が効率的に行えるのであれば、報酬の適正化なども考慮すべき」と、また診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「オンラインの服薬指導を仮に認める場合には、処方医との密接な連携が大前提となる」などの見解を示しています。
直腸がんの治療法選択に向け、BRAF遺伝子検査の保険収載を了承
7月18日の中医協総会では、下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」が実施する調査分析の内容のほか、新たな医療機器・臨床検査の保険収載を了承しました。
【新たな医療機器の保険収載】(2018年9月に保険収載される予定)
▼胃壁・腸壁に密着している「症候性膵仮性嚢胞」「70%以上の液体成分を認める症候性被包化壊死」に対し、経胃・経十二指腸的に行う内視鏡治療に用いる「Hot AXIOS システム」(償還価格は49万3000円)
【新たな臨床検査の保険収載】(2018年8月に保険収載される予定)
▼「切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの治療選択の補助」「大腸がんにおけるリンチ症候群の診断補助」のために、がん組織から抽出したゲノムDNA中のBRAF遺伝子変異(V600E)を検出する「BRAF遺伝子検査」(D004-2【悪性腫瘍組織検査】の1「悪性腫瘍遺伝子検査」のハ「K―ras遺伝子検査」(2100点)に準じて算定する)
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