オンライン服薬指導・処方箋完全電子化で「一気通貫の在宅医療」実現せよ―規制改革推進会議
2018.4.23.(月)
オンライン診療や在宅医療を受けながら、医薬品を受け取るために薬局に出向かなければならない現行制度を改める必要がある。このために、「オンライン服薬指導と訪問服薬指導の組み合わせ」、「処方箋の完全電子化」を進めよ―。
政府の規制改革推進会議は4月20日に、このような意見をとりまとめました(内閣府のサイトはこちら)。
目次
服薬指導や薬の授受のために、通院困難な患者が薬局に出向かなければならない
2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるなど、高齢者数は増加を続けていきます。これは「死亡者数が増加する」ことも意味し、高齢者住宅などを含めた「在宅での看取り」ニーズの高まりにつながります。
また、地域医療構想では「療養病棟に入院する医療区分1患者の70%が在宅に移行する」ことを前提に、2025年度の入院医療体制の目標値(高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能ごとに必要病床数を設定している)を設定しており、政策的な在宅医療ニーズの増大も見込まれています。
翻って在宅医療提供体制の現状をみると、「国民1人ひとりが、自らの希望に応じて入院医療と在宅医療を柔軟に選択できる」体制はまだ整備途上です。会議では、受診から服薬指導、薬の授受までの「一気通貫の在宅医療」体制の整備が必要と訴えています。
受診に関しては、例えば2018年度の診療報酬改定で、▼オンライン診療料・オンライン医学管理料の創設(医師の訪問に関する負担を軽減する)(関連記事はこちらとこちらとこちら)▼他の医療機関から依頼された場合の【在宅患者訪問診療料I】の創設、複数医療機関でチームを組んで在宅医療を行う【継続診療加算】の創設などによる在宅医療の裾野拡大▼より通院困難な患者への在宅医療・医学管理を推進するための【包括的支援加算】の創設―などの手当てが行われました(関連記事はこちら)。
一方、服薬指導については、「薬剤師による対面での服薬指導」が義務付けられ、いわゆる「オンライン服薬指導」は認められていません。また、薬の授受については「医師が患者に提供した処方箋『原本』によらなければ調剤が行えない」こととなっています。会議は、「薬局に出向いて服薬指導を受け、薬を受け取らなければならず、その負担・困難さは通院と同じである」とし、2つの制度見直しが必要と訴えています。
「薬剤師による対面での服薬指導と、オンラインによる服薬指導との組み合わせ」を認めよ
まず1点目は、「オンライン服薬指導」の実現で、オンライン診療と同様に「薬剤師による対面での服薬指導と、オンラインによる服薬指導との組み合わせ」を認めるべきと提言しています。
「対面による服薬指導」原則は、▼医薬品の副作用などに関する情報提供▼多剤併用の弊害防止▼残薬管理—などにあるとされますが、会議では、「スマートフォンやタブレット端末などを活用することでも、これらの弊害等は是正できる」旨を指摘。さらに「地方では薬剤師1人で経営する薬局も多く、薬剤師自らが訪問して行う服薬指導・薬剤管理だけでは、在宅医療ニーズに応えられない」「実働する訪問薬剤師不足などで、訪問服薬指導を受けられず、服薬指導のためだけに薬局へ出向かなければならない患者もいる」点を踏まえ、早急に「薬剤師による対面での服薬指導と、オンラインによる服薬指導との組み合わせ」を認めるべき、と強く訴えています。
なお、オンライン服薬指導について、技術上・オペレーション上の懸念があるのであれば、実証実験を行い「実証を要する具体的な懸念点と、実証を通じて評価する基準等を明らかにするべき」とも求めています。
処方箋完全自動化の上で、郵便等で患者が医薬品を受け取れる仕組みを構築せよ
また2点目は「処方箋の完全電子化」です。すでに、紙の処方箋だけでなく、電子データも処方箋「原本」となりますが、「電子処方せんの運用ガイドライン」では、▼電子処方箋引換証▼処方箋確認番号—を「患者が薬局に持参するモデル」が定められており、いずれにせよ、患者が薬局に出向かなければ医薬品を受け取ることができない仕組みとなっています(国家戦略特区を除き、病院から薬局へ処方箋を送付することも不可)。
会議では、「医師の資格を電子的に証明する仕組み(HPKI:厚生労働省の実施する医療従事者資格等の電子証明書)を使えば、押印した紙媒体によらずとも、処方箋の原本確認を行うことは可能」とし、「電子処方箋の交付から受取までを完全に電子化し、紙のやり取りをなくすことが必要」と訴えています。
この2点の制度見直しにより、例えば、継続して訪問診療を受けている患者において、比較的状態の安定した月には、「医師がオンライン医学管理を行い、電子処方箋を発行する」→「薬剤師がオンライン服薬指導を行い、電子処方箋に基づいて調剤を行う」→「郵便や宅配便などで、患者の手元に医薬品を届ける」といった形で「一気通貫の在宅医療が実現できる」と会議は提案しています。
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