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医療計画における「基準病床数」、コロナ影響のない「2019年以前の病床利用率」データを用いて計算することも可—厚労省

2023.6.16.(金)

地域で適正な病床整備を行うために、医療計画には「基準病床数」(地域の整備病床数上限)を定める。この基準病床数は、地域の「人口」「平均在院日数」「病床利用率」などの最新値をもとに計算することが原則である—。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で「病床利用率の最新値を用いることが妥当でない」場合には、コロナ感染症の影響がない「2019年データ」「2016-2019年の平均値」を用いて計算してもよい—。

厚生労働省は6月15日に通知「『医療計画について』の一部改正について」を発出し、こうした点を明らかにしました(厚労省サイトはこちら)。

病床利用率が低い地域は「病床が余っている」と考えられるが、コロナ感染症の特殊事情も

2024年度から新たな医療計画(第8次医療計画)がスタートするため、都道府県は今年度(2023年度)中に計画を作成する必要があります。厚労省は、計画作成の拠り所となる「指針」などを示しています(新たな「新興感染症対策」関連の記事はこちら)。

医療計画には、▼一定の医療を完結する医療圏(2次医療圏・3次医療圏)をどの範囲に設定するか▼各2次医療圏においてどの程度の病床数を整備すべきか▼入院・外来それぞれについて医療機関間の機能分化・連携をどう推進するか▼がん医療などの5疾病、救急医療などの5事業について、どの医療機関が、どのような役割を果たすか—などを記載。この計画に沿って医療提供体制整備を進め、事後に効果・成果を検証し、次の計画につなげていきます。

こうした取り組みにより「優れた(効果的で効率的な)医療提供体制の構築」が可能になると期待されます。

このうち「各2次医療圏においてどの程度の病床数を整備すべきか」(基準病床数)は「地域で病床が過剰になれば、不要な医療需要(例えば不要な入院、不要な入院期間の延伸など)を喚起し、患者に不利益(感染リスク上昇、ADL・QOL低下など)が生じるとともに、医療費が高騰してしまう」ことなどを踏まえて設定されるものです。基準病床数を超える病床整備申請があった場合、都道府県知事は「公的医療機関に対しては許可をしない」「その他医療機関に対しては勧告し、それに従わない場合には保険指定を拒否する」ことができます。

この基準病床数は、地域の「人口」「平均在院日数」「病床利用率」などを勘案して設置されます。人口が多ければ、傷病にかかる人も多くなるため、「多くの病床数」が必要になります。平均在院日数が長ければ、それだけ「多くの病床数」が必要になりますが、それを安易に認めれば「入院期間の短縮」がかなわないために、「短縮に向けた仕掛け」が設けられています。

一方、病床利用率については、医療計画を作成するための指針において「厚生労働大臣の定める利用率が、各都道府県における直近の利用率を下回る場合は、『厚生労働大臣が定める利用率』以上『地域の直近の利用率』の範囲内で、都道府県知事が当該都道府県の状況を勘案して定める」こととされています。

最新データをもとに「地域で病床が過剰になっていないかどうか」を判断するものです。



ところで、新型コロナウイルス感染症が流行する中で、多くの急性期病院では「病棟・病床を一部閉鎖する」取り組みを行っています。コロナ重症患者では非常に手厚い看護(当初はICUの「2対1」看護を上回る「1対1、1対2」看護が必要とされた)が必要となるため、一部の病棟・病床を閉鎖し、そこに従事していた看護職員をコロナ病棟に回す必要があったためです。このため、閉鎖病棟・病室は「利用ゼロ」となるため、病床利用率は大幅に下がることとなります。

また、コロナ患者が発生した際に、すぐさま当該患者を受けられるように「空床の確保」も求められています(即応病床)。この空床も、コロナ患者を受けるまでは「利用ゼロ」となるため、病床利用率は大幅に下がることとなります。

さらに、コロナ患者と一般患者、疑い患者を「同じ病室、病棟で受け入れる」ことは困難なため、必然的に「空床」が数多く生じ、やはり病床利用率は下がります。

この「コロナ禍で下がっている病床利用率」をもとにすれば、「地域では病床が過剰になっている」と判断しなければならなくなってしまい、「地域の医療ニーズを賄うために必要な病床数確保」が困難になってしまいます。

そこで今般の通知では、次のような特例的な考えを示しています。

▽「地域の直近の病床利用率」は、原則、入手可能な最新のものとする

▽しかし、コロナ感染症の影響により最新データをそのまま使うことが妥当ではない場合には、コロナ感染症の影響を受けていない「2019年の病床利用率」または「2016-2019年の病床利用率の平均」を用いることも差し支えないものとする



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