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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

診療時間短縮などの効果あるプログラム医療機器、特別な評価をすべきか?―中医協・材料部会

2023.7.27.(木)

優れた医療機器、医療上必要な医療機器(小児用機器、希少疾病用機器など)の開発促進が求められ、それを支援するような評価(材料価格設定、技術料設定など)をさらに検討してく必要がある—。

プログラム医療機器の評価については、専門家ワーキンググループの意見も踏まえた検討を進める。その際、例えば診療時間短縮を可能とする機器については「医師の働き方改革を支援するものであり高く評価すべき」との考えと、「働き方改革支援等などはそれ自体が医療機関サイドの導入インセンティブとなり、特別な評価は不要である」との考えがあり、両者の視点を踏まえて検討していく必要がある—。

7月26に開催された中央社会保険医療協議会の保険医療材料専門部会(以下、材料専門部会)で、こうした議論が行われました(同日開催の中医協総会における「感染症対策」論議の記事はこちら)。なお、同日には「薬価制度改革」論議も行われており、別稿で報じます。

優れた医療機器、医療上必要な医療機器の開発促進をサポートする評価が必要

2024年度には、保険医療材料価格制度改革(材料価格改定)も行われます。7月26日の材料部会には保険医療材料専門組織から意見が示され、これに基づいた議論が行われました。

保険医療材料専門組織は、中医協の下部組織で、現行の材料価格制度に則って「個別品目の値決め(機能区分の決定、償還価格の設定)」を行います。このため、実際の値決め論議の中で「現行制度にはこうした問題がある。こうした問題に突き当たったが、現行制度にはルールがない」などの知見が蓄積され、制度改正(診療報酬改定)の折に中医協に意見具申がなされるのです(薬価制度、費用対効果評価制度でも同様の意見具申が各専門組織から行われる)。

まず「イノベーション評価」については、例えば▼「保険医療上の必要性が特に高い」「代替するものがない」「保険償還価格が著しく低く、供給が著しく困難となる」医療材料について、不採算品再算定において適切に価格改定を行うとともに、価格改定後の価格再算定で配慮する仕組みを検討する▼希少疾患等に用いる医療機器・体外診断用医薬品は、臨床上有用でも採算性が確保しづらく市場導入が困難となる場合があり、市場加算等の既存制度との関係を整理した評価を検討する(「治療成績の改善」など、臨床上の有用性を踏まえ評価する)▼既存医療機器と比べ「臨床的な有用性が同等以上、費用を削減」する画期的な医療機器や、再製造単回使用医療機器の評価のあり方を検討する—などの考え方が示されました。

優れた医療機器の開発を促進するためにも、「優れた医療機器は高く評価する(高い償還価格を設定する、高い技術料を設定する)」ことが必要であり、方向性に異論・反論は出ていません。「価格だけでなく、制度全体で小児用機器、希少疾病用機器の開発を支える必要がある」(茂松茂人委員:日本医師会副会長)、「医療上の必要性が高い機器、小児用機器、希少疾病用機器などの開発促進は重要である。ただし物価高騰によるコスト増に着目した評価は慎重に検討すべき」(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)などの意見を踏まえて、今後、検討が深められます。



また医療材料に関しては、2018年度の制度改革で「チャレンジ申請」という仕組みが導入されました。医療材料・機器の中には、例えば長期間体内に埋め込むペースメーカーなど、効果を適正に評価できるようになるまでに長期間が必要なものがあります。こうした機器・材料では「保険適用を申請するまでに十分な効果評価を得る」ことが難しく、「途中経過で有用性を判断する」こととなるため、「効果が十分に評価されず、低い価格設定とならざるを得ない」ものがあります。

そこで、保険適用を求める際に「上市後の臨床データなども踏まえれば『より有効である、より効果的である』ことが証明できるので、その際に改めて効果評価・価格設定を行ってほしい」という申請(チャレンジ申請)を行う仕組みが設けられました。

これまでに「特定保険医療材料だけでなく、技術料の中で評価される材料・機器についてもチャレンジ申請を認める」などの拡大が行われていますが、さらに2024年度改革に向けて「現在は保険適用申請時のチャレンジ申請が求められているが、保険適用後のチャレンジ申請も検討してはどうか」との意見が出ています。今後、具体的な検討が進みますが茂松委員は「メーカーに都合のよいデータだけが提示されないよう、総合的な改善・改革を検討すべき」と指摘しています。

プログラム医療機器、医師の働き方改革支援機能をどう評価していくか

また2024年度の材料価格制度改革では「プログラム医療機器(SaMD)の評価」が重要検討テーマの1つに据えられています。

既に専門家によるワーキンググループで技術的な検討が行われ(関連記事はこちらこちらこちら)、そこでの意見も踏まえて、例えば次のような提案がなされました。

(1)「有用性の評価に関する基準」「予見可能性」を明確化する。例えば「プログラム医療機器の性質に基づいて、▼特定保険医療材料(当該機器の償還価格を設定する)▼技術料への加算(●●手術料などに当該機器を用いた場合の加算を設ける)▼既存技術料への包括(当該機器を用いた場合にも●●手術料等を算定可能とする)▼施設基準の緩和(当該機器を用いた場合、●●手術料等で定められる「専門医が●人を配置する」などの基準を緩和する)—などのうち、いずれの形式で評価されるかをより具体的に整理する」など

(2)医療従事者の労働時間を短縮させるプログラム医療機器について、「短縮した時間の分の人件費が減少しうる」「短縮した分の時間を別の診療行為に費やすことで別の報酬を得る機会を得うる」などの側面を考慮する

(3)プログラム医療機器による治療・診断の補助で、「専門医でない医師が行う場合」でも、「専門医が行う場合」に近づくようなものは、特に医療資源の少ない地域等で有用であることを考慮する

(4)プログラム医療機器の特性を踏まえた原価計算方法の検討に当たっては、「研究開発のプロセスや費用」「製造に係る費用」「上市後に当該プログラム医療機器を用いた医療を保険診療において継続的に提供するために必要な費用」(例えばクラウド環境使用料など)について、他の医療機器との違いを明らかにする(その際、企業側にもコストなどの透明性を高める取り組みが求められる)

(5)「プログラム医療機器を稼働するための費用」と「当該機器の性能を向上させるための費用」は分けて考えるべき

(6)薬事承認における二段階承認の考え方に基づいて「第1段階承認」を取得したプログラム医療機器については、「臨床現場で活用されながら、迅速なデータ収集を行って第2段階承認を目指す」点、「第1段階承認時点では有用性に関する評価が限定的である」点を考慮し、保険外併用療養費制度の活用も検討する

(7)プログラムのアップデートにより性能が向上しうるなどの特性を踏まえ、「チャレンジ申請」のほか、その他の制度の活用も含めた再評価のあり方を検討する

(8)プログラム医療機器の保険適用の期間が終了した後(例えば「A疾病の治療管理のため●か月は当該機器を保険診療の中で使用する」ことを認めるとして、●か月経過後)において、患者の希望に基づく継続使用が考えられる場合、チャレンジ申請を行いつつリアルワールドデータの収集を行う場合について、保険外併用療養費制度の活用について検討する



このうち(2)は、例えばプログラム医療機器の活用で「診療時間が短縮する」場合に、「医師の働き方改革に資するので、当該機器の評価(材料価格、技術料など)を高く評価する」と考えるべきなのか、それとも「医師の負担軽減、他の報酬獲得機会の確保は、それ自体が医療機関サイドの導入インセンティブとなるため、特段の評価は不要である」と考えるべきなのか、という論点です。

メーカーサイドは前者(高い評価)を希望していますが、専門家によるワーキンググループでは後者(特段の評価不要)の意見が多かったようです(関連記事はこちら)。今後、材料部会でどのような議論が行われるのか注目する必要があるでしょう。

また、(6)の2段階承認制度は、プログラム医療機器の開発に長期間がかかることを踏まえ、▼「有効性の推定」をもって第1段階承認を行う、これによりプログラム医療機器が広く臨床現場で使用され、データ収集をしやすくする▼「実臨床での有効性評価」をもって第2段階承認(本承認)を行う—という仕組みです。

メーカーサイドは「第1段階承認時点で、低い価格を設定されるのは不本意である。当該機器は保険外として、保険診療との併用(保険外併用療養)を認めてほしい」と求めており、その合理性がワーキンググループ出も認められ、今般の提案につながりました。

保険外併用療養は、「通常の治療部分の保険診療」(1-3割負担)と「保険適用されていない医療技術(ここでは第1段階承認を受けたプログラム医療機器)の自由診療」(10割負担)組み合わせるものです。「プログラム医療機器の費用」以外は保険診療となるため、患者負担が抑えられ、当該プログラム医療機器を用いた診療が一定程度進むと期待されます(そのデータをもとに第2段階承認に臨む)が、今後、より具体的な制度設計を議論していくことになりますが、上述した「チャレンジ申請」と関連する部分も多く、セットで議論していく必要があるでしょう。



こうした方向にも異論・反論は出ていませんが、「2段階承認をはじめとする評価の在り方については、プログラム医療機器だけでなく、材料価格制度全体の中で考えることも必要ではないか」(茂松委員)、「コスト評価については、メーカーサイドの透明性確保が何よりも重要となる」(松本委員)といった注文もついています。



このほか、▼内外価格差等の是正に向け、外国価格調整の比較水準について適切な見直しを行う▼機能区分(医療材料は機能に応じてグループ化し、当該グループ内の製品は一律の価格となる)について、臨床上の位置づけや安定供給の観点等を踏まえ細分化などを検討する▼医療機器の安定的な供給を確保する仕組みをさらに検討する—などの提案が出ています。

8月頃にメーカーサイド等から意見を聴取し、その後、具体的な制度改革論議が進む予定です。



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