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運動が「慢性疾患を増悪させる細胞老化」を抑制することを解明、運動による新たな慢性疾患予防・治療に期待—都健康長寿医療センター研究所

2024.7.23.(火)

運動によって筋組織から産出される「PEDF」が末梢組織の細胞老化を抑制する働きを持つ—。

運動を介した、新たな「慢性疾患の予防法・治療法」の開発に繋がると期待される—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)らの研究チームが7月18日にプレスリリース「運動が、慢性疾患を増悪化する細胞老化を抑制するメカニズムを解明」を公表し、こうして点を明らかにしました(研究所のサイトはこちら)。

運動が「慢性疾患を増悪させる細胞老化」を抑制する

ヒトを含めた動物では、加齢に伴って老化細胞(細胞老化を起こした細胞)が蓄積します。

細胞老化とは、細胞がDNA損傷などのダメージを受け、恒久的に増殖停止状態に陥ることを意味し、老化細胞からは様々な物質が分泌され、「組織の加齢性変化や慢性疾患の一因」となっています。

この点、「運動」に慢性疾患病態の軽減作用があることがわかっており、慢性疾患治療においては、非薬物療法として運動療法がしばしば用いられます。先行研究では、「運動が末梢組織で老化細胞を減少させる働きを持つ」ことが多く報告されており、「運動療法の作用点の1つが細胞老化抑制である」と考えられています。

そこで研究所では、筋細胞で産生・分泌される、細胞老化の抑制作用を持つ生理活性物質「マイオカイン」と、その因子であるPEDF(Pigment epithelium-derived factor:色素上皮由来因子)に着目した研究を実施。次のような点が明らかになりました。

▽マウスでは、自発運動をするグループで▼筋組織でのマイオカイン発現が上昇する▼血液中のPEDFタンパク質が増加する—

▽組み換えPEDFタンパク質をマウスに投与すると「肺組織や脂肪組織で老化細胞の減少」が認められる

▽慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主要病態である肺気腫モデル動物にPEDFを投与すると、「肺組織の老化細胞の減少」「呼吸機能低下の抑制」が認められる

▽COPD患者では、「呼吸機能が低下している患者ほど、血中PEDF量が低い」ことが示される

▽以前の研究から「肺組織の老化細胞は、呼吸機能を低下させる作用を持つ」ことが明らかになっており、「PEDFが細胞老化を介してCOPD 病態に影響を与える」ことが示唆される



研究チームでは、こうした結果から「運動は、PEDFを介して細胞老化を抑制し、慢性病態を緩和する」と判断。また、マウスにおいては加齢とともにPEDFの発現が減少する傾向にあることから、「PEDFが、老化細胞の蓄積や組織機能の低下にも関与する可能性がある」としています。

運動が「慢性疾患を増悪化する細胞老化」を抑制するメカニズム(都健康長寿医療センター研究所 240718)



一方で、上述のように「老化細胞は様々な慢性疾患を増悪化する作用を持つ」ことから、「老化細胞を標的としたセノリティック薬」(老化細胞に選択的に細胞死を誘導する活性を持つ薬)の研究開発も進められています。しかし、▼セノリティック薬には副作用を示すものもある▼老化細胞の除去が必ずしも生体にとって有益ではないこともある—というデメリットも伴います。

こうした点を踏まえて研究チームは、「運動は、生体が本来持っている細胞老化抑制作用を増強し、セノリティック薬のような副作用は少ない」と指摘します。もっとも「運動療法はすべての患者に適用できるわけではない」という点にも留意が必要です。

今後、「運動療法の生化学的作用点を解明し、『運動の有益な作用を享受するための手法』の開発につなげる」研究が進むことに期待が集まります。



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