Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

感染症・災害等で通所サービスの利用者が減少した場合の「介護報酬特例」、詳細を明らかに―厚労省

2021.3.23.(火)

厚生労働省は3月16日に通知「通所介護等において感染症又は災害の発生を理由とする利用者数の減少が一定以上生じている場合の評価に係る基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を示し、通所系サービスにおける「利用者減が生じた場合の経営支援」の仕組みの詳細を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。

今般の新型コロナウイルス感染症で明らかになったように、感染症や災害が生じた場合には通所サービスの利用者が急減し、「通所サービス事業所の経営悪化」→「介護サービス提供体制を脆弱化」が生じてしまうことが分かりました。

現在「通所介護事業所の経営を下支えするための報酬特例」(2区分上の報酬を算定できる)が設けられていますが、社会保障審議会・介護給付費分科会の議論を経ずに適用されたことも手伝い、「批判」も少なくなりません。今般、介護提供側・利用者側の双方が参画し、公開の場(介護給付費分科会)で「利用者減への対応をどう考えるか」を正面から議論され、制度の中に明確に位置づけられています。

通所系事業所の利用者減、「小規模な事業所の高い報酬」または「加算」により経営支援

2021年度の介護報酬改定では、介護事業所・施設における「感染症対策・災害対策の充実」がポイントの1つとなりました。述べるまでもなく「新型コロナウイルス感染症」の影響を重視したものです。

その中で、通所介護等においては「感染症や災害などで利用者数が減少した場合」の対応が新設されました。(1)は「迅速に高い報酬区分への移行を可能にする」もので、(1)と(2)の双方の要件を満たす場合には、(1)が適用されます((1)(2)の双方の適用はない)。

(1)小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分決定にあたり、現行の「前年度の平均延べ利用者数」でなく、新たに「延べ利用者数の減が生じた月の実績」をベースとすることを認める(▼利用者減→▼翌月に届け出→▼翌々月から区分移行—という具合に、より迅速に、報酬水準の高い区分に移行できるようになる)

(2)「延べ利用者数の減が生じた月の実績」が前年度の平均延べ利用者数から「5%」以上減少している場合、3か月の間、「基本報酬の3%の加算」を行う(利用者減に対応するための経営改善に時間を要するなど、特別の事情がある場合には加算算定を6か月まで認める)



あわせて、現在の通所介護における特例(利用者の同意を前提として2区分上位の報酬算定を可能とする)を今年度(2020年3月末)で廃止、来年度当初(2021年4月)から「2021年2月・3月の利用者数が、前年度(2019年度)または前年同期(2020年2月・3月)の平均延べ利用者数と比べて5%以上減少している場合には、(2)の3%加算を2021年4月から適用する」こととなっています。



今般の通知では、この仕組みの詳細が明らかにされています。

まず、▼通所介護(通常規模型)通所リハビリ(通常規模型)▼地域密着型通所介護(療養通所介護を除く、以下同)▼(介護予防)認知症対応型通所介護―では、(2)の「3%加算」のみが行われます((1)の下位区分の報酬がない)。

一方、▼通所介護(大規模型I、大規模型II)▼通所リハビリ(大規模型I、大規模型II)―では、上記(1)(2)のいずれかが適用されます((1)が優先)。

通所サービスにおける利用者減時の報酬特例の概要

大規模型事業所の利用者が減少した場合、「より小さい規模」の報酬区分を算定可能

(1)「規模区分特例」では、次のような点が明らかにされています。
▽「減少月の利用延人員数」が、「より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数」と同等となった場合には、当該減少月の翌々月から当該「より小さい事業所規模別の報酬区分」が適用される

例1)通所介護(大規模型II)・通所リハビリ(大規模型II)では次の通り。
▼ある月(減少月)の利用延人員数が750人超900人以下となった場合
→通所介護(大規模型I)・通所リハビリ(大規模型I)を適用

▼ある月(減少月)の利用延人員数が750人以下となった場合
→通所介護(通常規模型)・通所リハビリ(通常規模型)を適用

例2)通所介護(大規模型I)・通所リハビリ(大規模型I)について、ある月(減少月)の利用延人員数が750人以下となった場合は、通所介護(通常規模型)・通所リハビリ(通常規模型)を算定する

▽特例の適用期間内に、月の利用延人員数が、当該「より小さい事業所規模別の報酬区分」の利用延人員数を超え、かつ、「特例適用前の事業所規模別の報酬区分」の利用延人員数まで戻った場合は、当該月の翌月をもって当該特例の適用を終了する(上記「例1」で、5月に750人超900人以下となったが、8月に901人以上となった場合には、9月で特例が終了し、10月から大規模型IIの報酬区分に戻る)



この(1)特例は次のような流れで適用されます。

▼通所介護(大規模型I、大規模型II)・通所リハビリ(大規模型I、大規模型II)において、「月の利用延人員数が減少し、より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数と同等となっているか」を判定する

▼「より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数」と同等となっている場合は、当該減少月の翌月15日までに、都道府県等に特例適用の届け出を行い、届け出の翌月から特例が適用される(より高い報酬を算定可能となる)

▼特例適用の届け出を行った事業所は、特例適用の届け出を行った月から適用終了月まで、毎月、利用延人員数を算出・記録し、各月の利用延人員数が当該「より小さい事業所規模別の報酬区分」の利用延人員数を超えた場合は、その旨を速やかに都道府県等に届け出る(届け出を怠った場合は、特例報酬の返還が求められる)。「より小さい事業所規模別の報酬区分」の利用延人員数を超えない場合は、届け出を行う必要はない

(1)の規模特例のスケジュールイメージ(あくまで例)

利用者が前年度実績から5%以上減少する場合には、基本報酬に3%の加算

また(2)の「3%加算」に関しては、次のような点が明らかにされました。

▽減少月の利用延人員数が、当該減少月の「前年度の1か月当たりの平均利用延人員数」(以下、算定基礎)から5%以上減少している場合に(利用延人員数、減少幅については小数点第3位を四捨五入)、当該減少月の翌々月から3か月以内に限り「基本報酬の3%」が加算される(単位数算定については小数点以下を四捨五入)

▽2021年2月または3月に利用延人員数減が生じた場合、「2019年度の1か月当たりの平均利用延人員数」または「2020年2月または3月の利用延人員数」のいずれかと比較することが可能(比較で5%以上減が認められれば、3%加算を取得可)

▽「利用延人員数の減少に対応するための経営改善に時間を要する」などの特別事情があると都道府県・市町村が認めた場合で、同様に5%以上の利用者減が認められる場合には、加算算定を3か月以内に限って延長可能(最長6か月の算定が可能)

▽加算算定の期間内・加算延長の期間内に、月の利用延人員数が算定基礎から5%以上減少していなかった場合は、当該月の翌月で加算算定を終了する

▽本加算は「区分支給限度基準額」(1か月の介護保険給付利用可能上限)管理の対象外である



この(2)特例は次のような流れで適用されます。

▼対象事業所において、月の利用延人員数が減少しているか判定する(大規模型では(1)の特例対象の場合、(2)の加算算定は不可)

▼月の利用延人員数が5%以上減少している場合(大規模型では5%以上減少し、(1)特例の対象外である場合)には、翌月15日までに都道府県等に加算算定の届け出を行い、届け出の翌月から3か月間加算を算定できる
▼利用者減少月が2021年2月である場合には、「2021年4月1日」までに届け出を行うことで、4月サービス提供分より加算算定が可能である

▼当該加算の届け出を行った事業所は、届け出月から算定終了月まで、毎月、利用延人員数を算出・記録し、5%以上減少していなかった場合は、その旨を速やかに都道府県等に届け出る届け出を怠った場合は、特例報酬の返還が求められる)。5%以上減少している場合は、届け出を行う必要はない

▼加算算定終了の前月にも「5%以上減少」がある場合には、当該月の翌月15日までに「経営改善に時間を要すること」などの加算延長希望理由を添えて、都道府県等に加算算定延長の届け出を行い、延長届け出の翌月から3か月間、加算算定の延長を行うことが可能である(毎月の利用延人員数の算出・記録などは上記と同様)

(2)の3%加算のスケジュールイメージ(あくまで例)

大規模型I・IIでも、2021年2月3月の利用者減は「3%加算」のみで対応

なお、大規模事業所においても「2021年2月または3月の利用延人員数減」に対しては、(1)の規模区分特例は行わず、(2)の「3%加算」での対応が行われます。

また加算算定期間中でも「利用者が減少し、『より小さい事業所規模別の報酬区分』の利用延人員数と同等となった」場合には、(1)の規模区分特例の届け出を行うことが可能です。ただし、(1)(2)の併算定はできず、(1)の適用が始まる場合には(2)の「3%加算」の算定は終了となります。例えば、次のような具合です。

▼2021年2月に利用者減(算定基礎に比べて5%以上減)

▼2021年4月1日までに(2)の3%加算を届け出る

▼2021年4月分から3%加算を算定開始

▼2021年4月の利用者が、「より小さい事業所規模別の報酬区分」の利用延人員数と同等となった(例えば、大規模型IIであったが、大規模型Iの「750人超900人以下」と同等となった)

▼2021年5月15日までに(1)の規模区分特例を届け出る

▼(2)の3%加算は5月をもって算定終了

▼2021年6月から(1)の規模区分特例が適用される(高い基本報酬となる)



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

リハビリ専門職による訪問看護、計画書や報告書などに「利用者の状態や訪問看護の内容」などの詳細記載を―厚労省
ICT活用した夜勤スタッフ配置基準緩和の詳細を通知、3か月以上の試行で「ケアの質やスタッフ負担」の確認を―厚労省
特定処遇改善加算の財源配分ルール柔軟化、職場環境等要件の見直しなどで介護職員処遇改善進める—社保審・介護給付費分科会(7)
リハマネ加算など大きな見直し、リハ・口腔・栄養を一体的に推進—社保審・介護給付費分科会(6)
介護施設や通所サービス等、入所者等全員のデータ提出→サービス改善を評価する【科学的介護推進体制加算】—社保審・介護給付費分科会(5)
通所介護、感染症等による利用者減対応を制度化、ADL維持等加算の点数を10倍に引き上げ—社保審・介護給付費分科会(4)
ICT導入等するケアマネ事業所の逓減制見直し・新加算創設で「質の高いケアマネジメント」目指す—社保審・介護給付費分科会(3)
介護医療院の長期療養機能を新加算で評価、介護療養へはディスインセンティブ設定—社保審・介護給付費分科会(2)
2021年度介護報酬改定内容を了承、訪問看護では基本報酬の引き上げや、看護体制強化加算の見直しなど—社保審・介護給付費分科会(1)
2021年度介護報酬改定に向け「人員配置基準」改正を了承、サービスの質確保前提に基準緩和—社保審・介護給付費分科会
来年度(2021年度)介護報酬改定に向けた審議報告を了承、限られた人材での効率的なサービス提供目指す―社保審・介護給付費分科会
新型コロナ対策をとる医療機関を広範に支援する新臨時特例措置、介護報酬0.7%プラス改定、中間年度薬価改定など決定―厚労省

ICT活用する介護施設等で夜勤スタッフ配置緩和、感染症等で利用者急減した通所事業所の経営を下支え―社保審・介護給付費分科会(3)
グループホームの夜勤配置・個室ユニットの定員を緩和、サービスの質等担保に向け運用面で工夫―社保審・介護給付費分科会(2)
リハ職による訪問看護、【看護体制強化加算】要件で抑制するとともに、単位数等を適正化―社保審・介護給付費分科会(1)
介護サービスの人員配置緩和・感染症等対策・認知症対応など柱とする運営基準改正へ、訪問看護は戦術変更―社保審・介護給付費分科会
公正中立なケアマネジメント推進、通所サービスの大規模減算は維持するが「利用者減」に迅速に対応―社保審・介護給付費分科会(4)
ADL維持等加算を特養等にも拡大し、算定要件を改善(緩和+厳格化)―社保審・介護給付費分科会(3)
個別要介護者のみならず、事業所・施設全体での科学的介護推進を新加算で評価―社保審・介護給付費分科会(2)
介護医療院への「移行定着支援加算」、当初期限どおり2021年3月末で終了―社保審・介護給付費分科会(1)
小多機の基本報酬見直し・加算の細分化を行い、看多機で褥瘡マネ加算等の算定可能とする―社保審・介護給付費分科会(4)
すべての生活ショートに外部医療機関・訪問看護STとの連携を求め、老健施設の医療ショートの報酬適正化―社保審・介護給付費分科会(3)
通所リハを「月単位の包括基本報酬」に移行し、リハマネ加算等の体系を組み換え―社保審・介護給付費分科会(2)
訪問看護ST、「看護師6割以上」の人員要件設け、リハ専門職による頻回訪問抑制へ―社保審・介護給付費分科会(1)
見守りセンサー等活用による夜勤スタッフ配置要件の緩和、内容や対象サービスを拡大してはどうか―社保審・介護給付費分科会(2)
介護職員の【特定処遇改善加算】、算定ルールを柔軟化すべきか、経験・技能ある介護福祉士対応を重視すべきか―社保審・介護給付費分科会(1)
状態・栄養のCHASEデータベースを活用した取り組み、介護データ提出加算等として評価へ―社保審・介護給付費分科会(2)
【ADL維持等加算】を他サービスにも拡大し、重度者への効果的な取り組みをより手厚く評価してはどうか―社保審・介護給付費分科会(1)
老健施設「入所前」からのケアマネ事業所との連携を評価、在宅復帰機能さらに強化―社保審・介護給付費分科会(5)
介護報酬や予算活用して介護医療院への移行・転換を促進、介護療養の報酬は引き下げ―社保審・介護給付費分科会(4)
ケアマネ報酬の逓減制、事務職員配置やICT利活用など要件に緩和してはどうか―社保審・介護給付費分科会(3)
4割弱の介護事業所、【特定処遇改善加算】の算定ベース整っても賃金バランス考慮し取得せず―社保審・介護給付費分科会(2)
介護サービスの経営状況は給与費増等で悪化、2019年度収支差率は全体で2.4%に―社保審・介護給付費分科会(1)
訪問リハビリや居宅療養管理指導、実態を踏まえた精緻な評価体系を構築へ—社保審・介護給付費分科会(3)
訪問介護利用者の負担増を考慮し、「敢えて加算を取得しない」事業所が少なくない—社保審・介護給付費分科会(2)
訪問看護ステーション本来の趣旨に鑑み、「スタッフの6割以上が看護職員」などの要件設定へ—社保審・介護給付費分科会(1)
生活ショート全体の看護力を強化し、一部事業所の「看護常勤配置義務」を廃すべきか—社保審・介護給付費分科会(3)
通所リハの【社会参加支援加算】、クリームスキミング防止策も含めた見直しを—社保審・介護給付費分科会(2)
デイサービスとリハビリ事業所・医療機関との連携が進まない根本に、どのような課題があるのか―社保審・介護給付費分科会(1)
グループホームの「1ユニット1人夜勤」体制、安全確保のため「現状維持」求める声多数—社保審・介護給付費分科会(3)
小多機の基本報酬、要介護3・4・5を引き下げて、1・2を引き上げるべきか—社保審・介護給付費分科会(2)
介護療養の4分の1、設置根拠消滅後も介護療養を選択、利用者に不利益が生じないような移行促進が重要—社保審・介護給付費分科会(1)
介護人材の確保定着を2021年度介護報酬改定でも推進、ただし人材定着は介護事業所の経営を厳しくする―社保審・介護給付費分科会
寝たきり高齢者でもリハ等でADL改善、介護データ集積・解析し「アウトカム評価」につなげる—社保審・介護給付費分科会
介護保険施設等への外部訪問看護を認めるべきか、過疎地でのサービス確保と質の維持をどう両立するか—社保審・介護給付費分科会
特養老人ホームのユニット型をどう推進していくか、看取り・医療ニーズにどう対応すべきか―社保審・介護給付費分科会(3)
老健施設、「機能分化」や「適正な疾患治療」進めるために介護報酬をどう工夫すべきか―社保審・介護給付費分科会(2)
介護医療院の転換促進のために、【移行定着支援加算】を2021年度以降も「延長」すべきか―社保審・介護給付費分科会(1)
ケアマネジメントの質と事業所経営を両立するため「ケアマネ報酬の引き上げ」検討すべきでは―介護給付費分科会(2)
訪問看護ステーションに「看護職割合」要件など設け、事実上の訪問リハビリステーションを是正してはどうか―介護給付費分科会(1)
介護保険の訪問看護、医療保険の訪問看護と同様に「良質なサービス提供」を十分に評価せよ―介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「ショートステイの長期利用是正」「医療機関による医療ショート実施推進」など検討―社保審・介護給付費分科会(2)
通所サービスの大規模減算を廃止すべきか、各通所サービスの機能・役割分担をどう進めるべきか—社保審・介護給付費分科会(1)
小多機や看多機、緊急ショートへの柔軟対応を可能とする方策を2021年度介護報酬改定で検討―社保審・介護給付費分科会(2)
定期巡回・随時対応サービス、依然「同一建物等居住者へのサービス提供が多い」事態をどう考えるか—社保審・介護給付費分科会(1)
2021年度介護報酬改定、介護サービスのアウトカム評価、人材確保・定着策の推進が重要—社保審・介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「複数サービスを包括的・総合的に提供する」仕組みを―社保審・介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「介護人材の確保定着」「アウトカム評価」などが最重要ポイントか―社保審・介護給付費分科会