オンライン資格確認等システムの導入状況など緊急調査し、療担や電子的保健医療情報活用加算を議論へ—中医協(2)
2022.6.16.(木)
診療情報(レセプト情報や電子カルテ情報)を全国の医療機関等で共有する際の基盤ともオンライン資格確認等システムについて、その導入・普及を促進することをめざし「骨太方針2022」(経済財政運営と改革の基本方針2022)では▼保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付ける▼導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す▼診療報酬上の加算(電子的保健医療情報活用加算)の取り扱いについては、中央社会保険医療協議会において検討する—こととされている—(関連記事はこちら)。
こうした方針を受け、「オンライン資格確認等システムの導入状況」などについて、通常の診療報酬結果検証調査とは別に「特別の緊急調査」を行い、必要なデータを揃える—。
6月15日に開催された中央社会保険医療協・議会および診療報酬改定結果検証部会において、こうした点が厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の高宮裕介室長から明らかにされました。
データを踏まえ、オンライン資格確認等システムの導入促進に向け▼「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(いわゆる療養担当規則、療担)をどのように改正するか▼電子的保健医療情報活用加算の取り扱いをどう考えるか—などを中医協で議論していくことになりますが、検討スケジュールは固まっていません(関連記事はこちら)。
オンライン資格確認等システムの導入促進に向け、療担当改正・加算見直しなど議論
オンライン資格確認等システムは、「患者等がどの医療保険に加入しているのか」を医療機関等の窓口で瞬時に確認することで「適正な受診」を確保するものです(会社を退職した後も、以前の保険証を使って診療することなどを防止する)。
あわせて、オンライン資格確認等システムの基盤を活用して「全国の医療機関等で診療情報(レセプト情報・電子カルテ情報)を共有する」仕組みも稼働しており(電子カルテ情報を共有する仕組みは今後構築していく)、「医療の質を向上させる」ための非常に重要なインフラと言えます。診療情報を全国の医療機関等で共有すれば「重複投薬」や「併用禁忌薬の投与」を避けることなどが可能になります(関連記事はこちらとこちら)。
このように重要なインフラですが、オンライン資格確認等システムの導入状況は必ずしも芳しくありません。本年(2022年)5月15日時点では、オンライン資格確認等システムの入り口となる「顔認証付きカードリーダー申し込みを済ませた」のは医療機関等全体の57.9%、運用を開始しているのは19.0%にとどまっています。政府は「2022年度末(2023年3月末)に概ねすべての医療機関等で導入する」目標を立てていますが、現状ペースでは目標達成はなかなか厳しいとも思われます。
こうした状況を重く見て、6月7日に閣議決定された「骨太方針2022」(経済財政運営と改革の基本方針2022)では、オンライン資格確認等システムの導入・普及促進に向けて次のような方針を決定しています(関連記事はこちら)。
▼保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付ける
▼導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す
▼診療報酬上の加算(電子的保健医療情報活用加算)の取り扱いについては、中央社会保険医療協議会において検討する
▼2024年度中を目途に「保険者による保険証発行の選択制」導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ「保険証の原則廃止」を目指す
また、5月25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会でも、厚労省が同内容の提案を行っており、あわせて、より具体的に「オンライン資格確認等システムの原則義務化に向け、療養担当規則の見直しを検討する」「レセプトコンピュータシステムの改修費用等補助の拡充を調整していく」といった検討方針も示されています(関連記事はこちら)。
「保険医療機関等にオンライン資格確認等システムの導入を原則義務化する」ために、療養担当規則等の見直し論議が行われますが、「2023年4月から義務化」という期限を考慮すれば、当然のことですが「遅くとも2022年度中に中医協改正論議を進め、結論を得る」ことが求められます。議論に当たっては「オンライン資格確認等システムの導入状況」などに関するデータが必要となります。
翻って、中医協では「診療報酬改定の効果・影響を把握するための調査」(結果検証調査)を行います。▼改定年度▼改定の翌年度—の2年度に渡る調査を行い、「改定によって医療現場にどういった影響が出ているのか」「改定の効果が思惑通りに現れているのか」を把握し、次の診療報酬改定につなげるものです。
今般の2022年度診療報酬改定に関しては、次のような結果検証調査を行うことになっています(ほかに、例えば、入院医療に関しては「2診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で詳細な調査が行われる」)。
【2022年度調査】
▽在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理および訪問看護の実施状況調査
▽精神医療等の実施状況調査
▽リフィル処方箋の実施状況調査
▽後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査
▽明細書無償発行に関する実施状況調査
【2023年度調査】
▽リフィル処方箋の実施状況調査(2022・23年度の連続調査)
▽歯科医療機関における院内感染防止対策の評価等に関する実施状況調査
▽かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査
▽後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査
▽オンライン資格確認システムに係る診療報酬上の対応の実施状況調査
「オンライン資格確認等システムの導入状況、診療報酬上の対応状況」は2023年度の調査項目に含まれています。しかし、2023年度調査については「2023年の秋頃に速報が中医協に報告される」こととなります。また、仮に2022年度調査に移動(前倒し)したとしても、結果が中医協に報告されるのは「202年の2月・3月頃」となってしまいます。
これでは、上述した「2022年度中に療養担当規則改正論議を行う→2023年度からオンライン資格確認等システムの導入を義務化する」などの議論には間に合いません。
このため中村洋委員(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)や飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)は「中医協論議に間に合うようなデータ収集を行うべき」と提案。これを受け厚労省の高宮保険医療企画調査室は「中医協論議に資するデータを厚労省で収集・分析する」考えを明らかにしました。何らかの緊急調査により「オンライン資格確認等システムの導入状況」などを把握することになります。
調査結果を踏まえ、今後、中医協で▼療養担当規則の改正(オンライン資格確認等システムの導入義務を保険医療機関等に課すなど)▼電子的保健医療情報活用加算の取り扱い(加算を維持するのか、凍結等するのか)—などを具体的に詰めていくことになりますが、検討スケジュールは未定です。
なお、6月15日の中医協総会では、▼新たな医療機器の保険適用▼新たな臨床検査の保険適用—を了承しています。
【新医療機器】(本年(2022年)9月保険適用予定)
▽経心房中隔壁的にカテーテルを右房より左房に挿入する場合に 使用する心房中隔壁穿刺用の穿刺針である「AccuSafe経中隔穿刺ワイヤ」(トランスセプタルガイドワイヤ:3万5425円+トランスセプタルカニューラ:4224円に償還価格を設定)
▽悪性腫瘍等について経皮、腹腔鏡下・開腹術、胸腔鏡下・開胸術によって組織凝固・焼灼を行う際に用いる「Cool-tip RFAシステムEシリーズ」(技術料に包括評価し、機器の償還価格は設けない)
【新臨床検査】(本年(2022年)7月保険適用予定)に使用する
▽外リンパ瘻の診断を補助するための、中耳洗浄液中の「Cochlin-tomoprotein(CTP)測定」(460点を算定)
▽SARS-CoV-2感染またはRSウイルス感染の診断を補助する「SARS-CoV-2・RS ウイルス核酸同時検出」(2022年6月まで:850点 → 2022年7月以降:700点、関連記事はこちら)
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