認知症、糖尿病、循環器疾患、がん、ロコモティブシンドロームの予防等に向け「身体活動、運動」の適切実施を—国立長寿医療研究センター
2024.4.24.(水)
生活習慣病予防が認知症対策にもなる。生活習慣病予防で効果的なのが運動である—。
認知症のリスク低減はもちろん、糖尿病、循環器疾患、がん、ロコモティブシンドロームを予防するために、適切な強度の「身体活動、運動」を適切な時間、定期的に(毎日、毎週)実施してはどうか―。
国立長寿医療研究センターは4月23日、こうした提言を行いました(研究センターのサイトはこちら)。
生活習慣病予防が認知症対策にもなり、生活習慣病予防で効果的なのが運動である
認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達し、さらにその後も増加が続くと見込まれます。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法が制定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。
認知症対策は、医療・介護・福祉の各施策が連携し、総合的に進めることが極めて重要であり、2024年度の介護報酬改定では「行動・心理症状(BPSD)発生防止にチームで計画的に取り組む介護保険施設などを新加算で評価する」などの対応が、2024年度の診療報酬改定では「かかりつけ医の認知症対応力向上」を目指すなどの対応が検討されています。また、新たな認知症治療薬「レケンビ」(レカネマブ)の保険適用も行われています。
このように認知症対策は着実に進んでいますが、画期的な治療薬開発には相当の時間がかかるため、研究センターでは「日常生活で認知症のリスクを低減させる」ことが重要と強調。今般、「運動による認知症予防」を強く推奨しました。
認知症のリスクは様々ですが、例えば▼「教育期間の短さ」「高血圧」「肥満」「難聴」「喫煙」「うつ病」「運動不足」「社会的孤立」「糖尿病」の9項目をコントロール・修正できれば、認知症の35%は予防や進行を遅らせられる▼9項目に「過度の飲酒」「頭部外傷」「大気汚染」を加えた12項目をコントロール・修正できれば、認知症の40%は予防や進行を遅らせられる—などの研究報告があります。また、WHO(世界保健機関)の「認知機能低下および認知症のリスク低減」のガイドラインでも、「身体活動」「喫煙」「栄養」「飲酒」「認知訓練」「社会活動」「体重(肥満)」「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」の改善で、認知症のリスク低減が可能になるとされています。
研究センターは、つまり「生活習慣病予防が認知症対策にもなる。生活習慣病予防で効果的なのが運動である」とし、認知症予防のために「運動」を実践することを推奨。
「運動」については、厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」において、「メッツ」という身体活動の強度を表す単位を用い、「どの程度の強度の運動を、どのくらいの時間行ったか」の総和で目標値を設定しています。
さらに、厚労省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、例えば次のような「運動の基準」を設定しています。
【18-64歳】
▽3メッツ以上の強度の「身体活動」を毎日60分(1週間の目標値は23エクササイズ)行う
→具体的には、毎日60分、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動」を行う(普通歩行(3.0メッツ)、犬の散歩(3.0メッツ)、掃除(3.3メッツ)、自転車に乗る(3.5-6.8メッツ)、速歩き(4.3-5.0メッツ)、こどもと活発に遊ぶ(5.8メッツ)、農作業(7.8メッツ)、階段を速く上る(8.8メッツ))
▽うち「3メッツ以上の強度の運動」を毎週60分(1週間の目標値は4エクササイズ)行う
→具体的には、毎週60分、「息が弾み汗をかく程度の運動」を行う(ボウリング・社交ダンス(3.0メッツ)、自体重を使った軽い筋力トレーニング(3.5メッツ)、ゴルフ(3.5-4.3メッツ)、ラジオ体操第一(4.0メッツ)、卓球(4.0メッツ)、ウォーキング(4.3メッツ)、野球(5.0メッツ)、ゆっくりとした平泳ぎ(5.3メッツ)、バドミントン(5.5メッツ)、バーベルやマシーンを使った強い筋力トレーニング(6.0メッツ)、ゆっくりとしたジョギング(6.0メッツ)、ハイキング(6.5メッツ)、サッカー・スキー・スケート(7.0メッツ)、テニスのシングルス(7.3メッツ))
【65歳以上】
▽強度を問わず、毎日40分、「身体活動」を行う(1週間の目標値は10エクササイズ)
→具体的には、「横になったまま」「座ったまま」にならなければどんな動きでもよいので、毎日40分、「身体活動」を行う(皿洗い(1.8メッツ)、洗濯(2.0メッツ)、立って食事の支度をする(2.0メッツ)、こどもと軽く遊ぶ(2.2メッツ)、時々立ち止まりながらの買い物や散歩(2.0-3.0メッツ)、ストレッチング(2.3メッツ)、ガーデニングや水やり(2.3メッツ)、動物の世話(2.3メッツ)、座ってのラジオ体操(2.8メッツ)、ゆっくり平地を歩く(2.8メッツ))
●どの運動を、どの程度行えば1エクササイズになるかの一覧表はこちら
もっとも、上記は「健康診断結果が基準範囲内の人」の基準であり、血糖・血圧・脂質のいずれかが保健指導レベルの方は「身体活動のリスクがない」ことを確認する(身体活動リスクのチェックはこちら)、疾患に罹患している人は「かかりつけ医に相談」することが必要となります。
研究センターでは、身体活動の増加により「糖尿病」「循環器疾患」「がん」「ロコモティブシンドローム(加齢に伴って筋力低下や関節や脊椎の病気、骨粗鬆症等により運動器の機能が衰え、要介護や寝たきりになる状態)」などの予防にもつながる点を踏まえ、上記基準も参考に「自らが出来る範囲で身体を動かす」ことを推奨しています。
これらは、生活習慣病の管理を行う医療従事者、要支援・介護者に対応するケアマネジャーや介護従事者等も十分に参考にすることが重要です。
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