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病床機能報告 病床ユニット

継続的な生活習慣病管理・運動・栄養指導・認知トレーニングといった多因子介入で、認知機能改善が期待できる—国立長寿医療研究センター

2024.5.14.(火)

生活習慣病の管理・運動・栄養指導・認知トレーニングといった多因子介入により、認知機能改善が期待できる—。

とりわけ、遺伝的にアルツハイマー病のリスクが高い者、脳の炎症により認知機能が低下している者では、多因子介入プログラムの効果が得られやすい—。

国立長寿医療研究センターが5月8日に、こうした研究成果を明らかにしました(研究センターのサイトはこちら、関連記事はこちら)。名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、東京都健康長寿医療センター、SOMPOホールディングス社との共同研究結果です。

多因子介入を行った高齢者グループと、生活習慣病管理等を行った高齢者グループを比較

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達し、さらにその後も増加が続くと見込まれます。

また、最新の研究によれば▼2030年に認知症:523万1000人・MCI(軽度認知機能障害):593万1000人(計1116万2000人)▼2040年に同584万2000人・同612万8000人(計1197万人)▼2050年に同586万6000人・同631万2000人(計1217万8000人▼2060年に同645万1000人・同632万2000人(計1277万3000人)—になると推計されています。

認知症・MCI患者数等の将来推計



このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法が制定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症対策は、医療・介護・福祉の各施策が連携し、総合的に進めることが極めて重要であり、2024年度の介護報酬改定では「行動・心理症状(BPSD)発生防止にチームで計画的に取り組む介護保険施設などを新加算で評価する」などの対応が、2024年度の診療報酬改定では「かかりつけ医の認知症対応力向上」を目指すなどの対応が行われます。また、新たな認知症治療薬「レケンビ」(レカネマブ)の保険適用も行われています。



こうした中で長寿医療研究センター等の研究グループでは、▼生活習慣病の管理▼運動▼栄養指導▼認知トレーニング—といった多因子介入に着目。

具体的には、65-85歳の軽度認知障害を持つ高齢者531名を、「上記の多因子介入を行うグループ」(介入群)と「そうでないグループ」(対照群)とに分け、18か月間のランダム化比較試験を実施しました。

介入群の高齢者は、リストバンド型活動量計、セルフモニタリング用のファイル、タブレットPCを受け取り、▼糖尿病や高血圧などの生活習慣病の管理▼週1回の運動教室(全78回)▼栄養相談(全15回)▼タブレットPCを用いた認知トレーニング(Brain HQ)—を受けました。

一方、対照群の高齢者には、「生活習慣病の管理」と「2か月に1回の健康情報提供」のみが行われています。



介入群と対照群について、18か月後の認知機能の変化を比較すると、次のような状況が明らかになりました。

▽主要評価項目である認知機能の「コンポジットスコア」(注意力、集中力、記憶力、言語理解、空間認識能力などの認知機能を総合的に評価する指標。個々の認知機能だけでなく、全体的な認知機能の状態を把握できる)には、統計的な有意差はみられなかった

▽「運動教室に70%以上に参加したグループ」の高齢者は、「70%未満のグループ」「対照群(運動教室に参加なし)」と比べて、認知機能が改善していた

運動教室への参加率による多因子介入プログラムの効果



▽アルツハイマー病の危険因子として知られている「アポリポタンパクE遺伝子のE4多型」の保因者に絞ると、「介入群」では認知機能が維持され、18か月間の認知機能の変化に統計学的な有意差がみられた

アポリポタンパクE遺伝子のE4多型保因者への多因子介入プログラムの効果



▽脳の神経細胞の炎症を反映する「GFAP」(glial fibrillary acidic protein)が上昇している参加者に絞ると、「介入群」では認知機能が維持され、18か月間の認知機能の変化に統計学的な有意差がみられた

GFAP値が上昇していた参加者への多因子介入プログラムの効果



こうした結果から、「多因子介入プログラムには、認知機能低下を抑制する効果がある」ことが分かります。研究グループでは▼継続的な多因子介入プログラムの実施によって認知機能の改善につながる可能性がある▼「アポリポタンパクE遺伝子のE4多型の保因者」(アルツハイマー病のハイリスク者)や「血漿中のGFAPが上昇している者」(脳の神経細胞に炎症可能性のある者)において、多因子介入プログラムの効果が得られやすい—と分析し、「わが国の認知症発症を減少させる大きな第一歩となる」と期待しています。

研究グループでは、今後もフォローアップ調査(研究終了後1年毎)を通じて「多因子介入プログラムの長期的な効果、認知症発症に対する抑制効果」の検証、自治体での実施可能性の検証と広域展開を図る考えです。



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