高額療養費の自己負担上限を平均層で7.5%-12.5%アップ+外来特例見直しで、保険料の1人当たり負担が1300-5300円軽減—厚労省
2024.12.16.(月)
高額療養費の自己負担上限を平均所得層で7.5%-12.5%アップし、さらに70歳以上高齢者の「外来特例」を見直すことによって、国民1人当たりの保険料負担が1300-5300円程度軽減されると予想される—。
厚生労働省は12月13日、自由民主党へこうした試算結果を提示しました。
厚労省の試算は「自己負担上限の引き上げ」と「外来特例見直し」とのバランスをとったもの、つまり「自己負担増を大きくアップする場合には、外来特例は緩やかな見直し」とし、「外来特例を大きく見直す場合には、自己負担増を小さく抑える」ものとなっており、いずれの案をとっても、国民1人当たりの保険料負担は年間「1300から5300円程度軽減される」ものとなっています。
こうした試算結果も踏まえ、今後の来年度(2025年度)予算案編成の過程で、具体的に「自己負担上限額をいくらに引き上げるのか」「70歳以上の外来特例をどのように見直すのか」などを政府で決定します。
高額療養費の自己負担上限、「負担能力のある層には、より高く設定」する考え方
Gem Medでも報じているとおり、全世代型社会保障制度(年齢ではなく、負担能力に応じた負担を高齢者にもお願いする)構築の一環として「高額療養費の見直し」論議が医療保険部会で進められ、▼高額療養費の自己負担限度額を一定程度引き上げる、その際「平均的な収入を超える所得区分は『平均的な引き上げ率よりも高い率』で引き上げ、平均的な収入を下回る所得区分は『引き上げ率を緩和』する」などの低所得者への配慮を行う▼所得区分の細分化(住民税非課税区分を除く所得区分を概ね三区分に細分化)を行う▼70歳以上高齢者の「外来特例」についても一定の見直しを検討する—といった考え方を整理しています(関連記事はこちら)。
厚労省は、この考え方に沿って次のような「高額療養費の見直し」素案を提示しました。自己負担上限の引き上げについて「3つの考え方」を、70歳以上高齢者の外来特例について「3つの考え方」を示すとともに、それぞれの見直しを行った場合に「保険料負担がどの程度軽減されるのか」を試算しています。
まず「自己負担上限の引き上げ」については、次の3つの考え方が示されました。上述のとおり「高所得の層に『より高い負担』を求め、低所得の層では負担増を抑える」内容となっています(いずれの案でも住民税非課税世帯では「2.7%の引き上げ」にとどまっている)。
【案1】
→前回見直しを行った約10年前からの物価上昇率が約7.5%であることなどを踏まえ、平均的な所得(年収約370-770万円)層の引き上げ幅を7.5%に設定する
(具体的な引き上げ幅)
▽年収約1160万円-:12.5%増
▽年収約770-1160万円:10%増
▽年収約370-770万円:7.5%増(平均的な所得層)
▽-年収約370万円:5%増
▽住民税非課税:2.7%増
▽住民税非課税(所得が一定以下):2.7%増
【案2】
→前回見直しを行った約10年前からの平均給与の伸び率が約9.5-12%であることなどを踏まえ、平均的な所得(年収約370-770万円)層の引き上げ幅を10%に設定する
(具体的な引き上げ幅)
▽年収約1160万円-:15%増
▽年収約770-1160万円:12.5%増
▽年収約370-770万円:10%増(平均的な所得層)
▽-年収約370万円:5%増
▽住民税非課税:2.7%増
▽住民税非課税(所得が一定以下):2.7%増
【案3】
→前回見直しを行った約10年前からの平均給与の伸び率や世帯収入の伸び率(約16%)を踏まえ、平均的な所得(年収約370-770万円)層の引き上げ幅を12.5%に設定する
(具体的な引き上げ幅)
▽年収約1160万円-:20%増
▽年収約770-1160万円:15%増
▽年収約370-770万円:12.5%増(平均的な所得層)
▽-年収約370万円:7%増
▽住民税非課税:2.7%増
▽住民税非課税(所得が一定以下):2.7%増
また70歳以上高齢者の外来特例については、次の3つの考え方が示されました。高齢者の中には「複数疾患を抱え、外来受診頻度が高い」人が多くなる点を踏まえて、「廃止」は見送られる見込みです(C→B→Aの順で厳しい負担増と考えられる)。
【A案】
→住民税非課税世帯についてのみ、「月額1万円」の外来特例を設定する(12月12日の医療保険部会で示された(2)案、関連記事はこちら)。
【B案】
→▼年金収入約200万円以下(単身)(75歳以上の自己負担1割層)について「月額2万円」の▼住民税非課税について「月額1万円」の—外来特例を設定する
【C案】
→▼年金収入約200万円以下(単身)(75歳以上の自己負担1割層)について「月額2万円」の▼住民税非課税について「月額9000円」の—外来特例を設定する
さらに厚労省は、これらの見直し案内容を組み合わせた場合に「保険料負担がどの程度軽減されるのか」などの試算結果も示しています。
まず、自己負担引き上げの【案1】と外来特例の【A案】を組み合わせた場合(自己負担増は小さく抑えるが、外来特例を厳しく見直す場合)、給付費が6000億円軽減され、うち保険料負担が4100億円軽減されます。
これを各医療保険加入者数で単純に頭割りした場合、年間1400円(後期高齢者)から5200円(現役世代)の保険料負担が減少します。
1人当たり保険料軽減額に幅があるのは、既に述べたように、▼高齢者では「自分たち自身の医療給付費が減少し、結果、保険料負担が軽減する」のみである▼現役世代では「自分たち自身の医療給付費が減少し、結果、保険料負担が軽減する効果」に加えて、「高齢者の医療給付費が減少し、支援金・拠出金負担が軽減する効果」もある—ためです。見直しの効果は」「高所得者ほど手厚くなる」ことが分かります(関連記事はこちらとこちら)。
また、自己負担引き上げの【案2】と外来特例の【B案】を組み合わせた場合(自己負担上限、外来特例ともに中程度の見直しを行った場合)には、給付費が5600億円、うち保険料負担が3900億円軽減されます。これを各医療保険加入者数で単純に頭割りした場合、年間1300円(後期高齢者)から5100円(現役世代)の保険料負担が減少します。
さらに、自己負担引き上げの【案3】と外来特例の【C案】を組み合わせた場合(自己負担上限を大幅に引き上げするが、外来特例には小幅な見直しを行う場合)には、給付費が5800億円、うち保険料負担が4000億円軽減されます。これを各医療保険加入者数で単純に頭割りした場合、年間1300円(後期高齢者)から5300円(現役世代)の保険料負担が減少します。
厚労省の試算は「自己負担上限の引き上げ」と「外来特例見直し」とのバランスをとったものとなっています。つまり「自己負担増を大きくアップする場合には、外来特例は緩やかな見直し」とし、「外来特例を大きく見直す場合には、自己負担増を小さく抑える」ものとなっており、いずれの案をとっても、国民1人当たりの保険料負担は年間「1300から5300円程度軽減される」ものとなっています。
今後の来年度(2025年度)予算案編成の過程で、こうした試算結果も踏まえながら、具体的に「自己負担上限額をいくらに引き上げるのか」「70歳以上の外来特例をどのように見直すのか」などを政府で決定します。
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