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胃がんへの「化学療法+レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法」で、無増悪生存期間が延長し、奏効割合も改善—国がん

2025.6.5.(木)

胃がんに対する治療法として、「化学療法+レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法」と「化学療法単独」とを比較すると、併用療法では無増悪生存期間が延長し、奏効割合も改善するが、副作用が若干増加し、全生存期間の有意な延長は見られない—。

国立がん研究センターが6月2日に、こうした研究成果を明らかにしました(国がんのサイトはこちら)。

今後、併用療法がどのような患者に最適なのかを同定するためのバイオマーカー開発に期待が集まります。

胃がん治療法の新たな選択肢開発に向けた研究進む

「胃がん」は依然として予後不良な疾患です。最新データである2024年の「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、男性では肺がん・大腸がんに次いで、女性では大腸がん・肺がん・膵臓がん・乳がんに次いで死亡率が高くなっています。

胃がん治療に関しては、近年、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ、キイトルーダなど)を含む1次治療の有効性が示されていますが、国際的な研究でも全生存期間の中央値は依然として12-14か月程度にとどまっています。

また、血管新生阻害薬(アバスチン、サイラムザなど)の追加投与は、とくに2次治療以降で一定の有効性が示されています。「レンバチニブ」(販売名:レンビマカプセル4mg、同10mg)は腫瘍の血管新生に関わるVEGFR、FGFR、PDGFRなどの複数の因子を阻害する経口マルチキナーゼ阻害薬で、非臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬「ペムブロリズマブ」(販売名:キイトルーダ点滴静注100mg)との併用」で効果が示されました(腎がん、子宮体がん等に対しては「臨床」での併用効果も報告されている)。

国立がんセンター東病院では、医師主導治験として、進行胃がんに対する「レンバチニブ(血管新生阻害剤)とペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害剤)との併用投与」を1次・2次治療として実施し、69%の奏効割合があることを報告しています。

さらに今般、国がんでは「1次化学療法+レンバチニブ(血管新生阻害剤)+ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害剤)の併用療法」と「化学療法単独」とを比較し、その有効性・安全性を評価する臨床試験を実施。1次化学療法としては「CAPOX」または「FOLFOX」が選択されました。

▽CAPOX(以下の併用)
・カペシタビン(販売名:ゼローダ錠300、ほか後発品あり)
・オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同点滴静注液100mg、同点滴静注液200mg、ほか後発品あり)

▽FOLFOX(以下の併用)
・フルオロウラシル(販売名:5−FU注250mg、同注1000mg、他後発品あり)
・ロイコボリン(販売名:ロイコボリン注3mg、アイソボリン点滴静注用25mg、ほか後発品あり)
・オキサリプラチン



まず、この臨床試験からは、1例でグレード3の「疲労」、1例でグレード4の「好中球減少」という副作用が認められたものの、他に重篤な副作用は認められず、「安全性が許容範囲である」と判断されました。



この安全性評価を踏まえて、国がんでは、さらに「1次化学療法+レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法」(443例、以下、併用群)と「化学療法単独」(437例、以下単独群)との比較試験(パート2)を実施。主要評価項目として「全生存期間」と「無増悪生存期間」を、副次評価項目として「奏効割合」、「奏効期間」、「安全性」などを比較したところ、次のような結果が得られました。

なお、免疫チェックポイント阻害剤が奏功するか否かを判断する目安の1つである「PD-L1のCPS(Combined Positive Score)」は登録時に検査されており、全体の約80%に相当する688例の患者が、「PD-L1陽性で、免疫チェックポイント阻害剤が奏功する可能性が高い」と考えられる「CPS≧1」を示していました。

【主要評価項目】
●無増悪生存期間
(中央値)
▽PD-L1・CPS≧1のグループに限ると、併用群「7.3か月」、単独群「6.9か月」(ハザード比:0.75)
▽全体では、併用群「7.2か月」、単独群「7.0か月」(ハザード比:0.78)

▽「併用群では無増悪生存期間が長い」ことが統計学的有意差をもって認められた。

併用群と単独群との無増悪生存期間比較



●全生存期間(中央値)
▽PD-L1・CPS≧1のグループに限ると、併用群「12.6か月」、単独群「12.9か月」(ハザード比:0.84)
▽全体では、併用群「13.1か月」、単独群「13.0か月」(ハザード比:0.87)

▽有意差は認められなかった

併用群と単独群との全生存期間比較



【副次評価項目】
●奏効割合

▽PD-L1・CPS≧のグループに限ると、併用群「59.5%」、単独群「45.4%」
▽全体では、併用群「58.0%」、単独群「43.9%」

▽統計学的に有意な改善が確認された

●奏効期間(中央値)
▽全体では、併用群「8.9か月」、単独群「6.8か月」

▽併用群で良好な結果であった

●投与後12か月時点での奏効維持割合
▽全体では、併用群「45%」、単独群「24%」

▽併用群で良好な結果でした

併用群と単独群との奏功持続期間比較



また、主要評価項目である全生存期間について、サブグループ解析を行ったところ、▼PD-L1・CPS≧10▼原発が食道胃接合部がんである症例▼ECOG PS 0―の集団で、併用群が比較的良好な傾向を示していますただし、各サブグループの解析は検出力が限定的で、探索的な解釈にとどまる)。

さらに、後治療は併用群の46%、単独群の63%に実施され、その内訳をみると▼抗PD-1/PD-L1抗体(キイトルーダなど)は併用群の5%、単独群の19%に▼血管新生阻害剤(レンビマカプセル)は併用群の19%、単独群の29%に—使用されています。



また【副次評価項目】のうち「安全性」については、次のような状況が明らかになりました。

▽全グレードの治療関連有害事象の発現割合:併用群「97%」、単独群「92%」

▽グレード3以上の有害事象の発現割合:併用群「65%」、単独群「48%」

▽治療中止を要した有害事象の発現割合:併用群「20.4%」、単独群「11.3%」

▽頻度の高かった治療関連有害事象の発現割合(全グレード)
・好中球減少症:併用群46%、単独群45%
・嘔気:併用群39%、単独群40%
・下痢:併用群38%、単独群25%
・高血圧:併用群32%、単独群0%
・食欲減退:併用群30%、単独群18%
・タンパク尿:併用群21%、単独群1%

・レンバチニブ特有の高血圧およびタンパク尿が併用群で多く見られた

▽免疫関連有害事象の発現割合:併用群46%、単独群12%
・うちグレード3以上の免疫関連有害事象の発現割合:併用群10%、単独群1%

▽治療関連死の発生割合:併用群5%、単独群で1%未満



さらに、EORTC QLQ-C30 スコアという指標を用いて患者のQOL(生活の質)を評価したところ、▼全般的な健康状態・生活の質スコアの経時的変化は、併用群と単独群の間で大きな差はない▼症状尺度において、下痢および食欲低下のスコアが併用群で一時的に悪化するが、時間経過とともに回復する—ことなどが明らかになっています。



こうした結果から国がんでは、胃がんに対する「1次化学療法+レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法」で、▼無増悪生存期間を有意に延長する▼奏効割合も改善する—というメリットがある一方で、▼全生存期間の延長は確認できない▼副作用が増加する—ことを確認しています。

今後、「1次化学療法+レンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法」が最適な患者を同定するバイオマーカーの研究などに期待が集まります。



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