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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

地域医療構想の実現に向け「各地域の進捗状況」を把握、公立病院等の再検証も実態踏まえて検討―地域医療構想・医師確保計画WG

2021.7.30.(金)

「公立病院・公的病院等における機能分化等の再検証スケジュールを検討する」さらに「地域医療構想の実現に向けた取り組みを考える」ために、まず各地域においてこれらの検討・取り組みの状況・実態を把握する―。

本年度(2021年度)の病床機能報告では、各病院のベッドがどの程度使用されているのかを適切に把握するために、従前の「稼働病床数」について、「最大使用病床数・最小使用病床数」と名称変更したうえで、考え方を明確化するなどの修正を行う―。

7月29日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」((「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)でこうした内容が固められました。

7月29日に開催された「第1回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

地域医療構想の実現に向けて、まず「各地域での進捗状況」などの実態を把握

2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達するため、今後、急速に医療ニーズが増加していくと予想されます(新型コロナウイルス感染症の影響により受診控えや予定入院・予定手術の延期がなされているが、これは一時的なものである)。このため従来型の医療提供体制(例えば、病院完結型の医療)では、増大し、複雑化する医療ニーズに的確かつ効率的に応えることが難しくなるため、各地域において「2025年度の医療ニーズ」を踏まえた「地域医療構想の実現」が求められています。

地域医療構想は、地域(主に2次医療圏をベースとする地域医療構想調整区域)における将来(2025年度)の医療需要から、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の機能別に病床必要量を推計した、言わば「将来の医療提供体制の設計図」です。各地域では、実際の医療提供体制が、この設計図にできるだけマッチしていくよう(つまり「地域医療構想が実現する」よう)に、データ(各病院の診療実績や意向などの「病床機能報告」)を踏まえて関係者で膝をつき合わせた議論を行っていきます。

地域医療構想とは(地域医療構想・医師確保計画WG3 210729)

地域医療構想の実現に向けた取り組みの大枠(地域医療構想・医師確保計画WG4 210729)



ところで、医療提供体制を設計図(地域医療構想)にマッチさせるためには、例えば「病床数の削減」(ダウンサイジング)や「機能転換」(急性期ベッドを回復期に転換させるなど)、「医療機能の集約化」、「病院の再編・統合」などを考えていく必要がありますが、そこでは「医師を各地域・各病院にどのように配置していくのか」を併せて考えることが極めて重要です。例えば、人口が減少するA地域では、医療重要も減少するために、医療提供体制を全体として縮小していくことが必要となり、当然、そこでは医師数も少なくて済みます。一方、人口増が継続し、医療需要が増すB地域では、医療提供体制を拡充する必要があり、医師数も増員していくことになります。この場合「A地域からB地域への医師移動」を考えていく必要があるのです。

そこで、第8次医療計画に関する議論のスタートに合わせ、「地域医療構想」と「医師確保計画」とを一体的に検討する本WGが設置されたものです。7月29日の初回会合では、▼「公立病院・公的病院等における機能分化等の再検証スケジュールを検討する」さらに「地域医療構想の実現に向けた取り組みを考える」ために、まず各地域においてこれらの検討・取り組みの状況・実態を把握する▼2024年度からの新たな「医師確保計画」作成等に向けて、まず現行「医師確保計画」の成果等の実態を把握する―などの方針が了承されました。

ワーキングの検討事項イメージ(地域医療構想・医師確保計画WG1 210729)

ワーキングのスケジュールイメージ(地域医療構想・医師確保計画WG2 210729)

第8次医療計画検討会の下に、3つのワーキンググループを設置する(第8次医療計画検討会1 210618)



小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は「地域において官民を挙げて、将来の医療提供体制を議論する必要がある。その1丁目1番地が『医師配置』になると思う。地域医療構想に向けた取り組み状況、医師確保の状況についてまず実態を把握し、それを見て地域で議論していくことが重要だ」と強調。岡留健一郎光映院(日本病院会副会長)は「約440の公立・公的等病院には機能分化等に関する再検証が設けられているが、その進捗状況を確認する必要がある」と強く要望しています。

ところで、地域医療構想の実現・医師確保計画の見直し論議を進めるためには「早期に実態把握する」必要があり、幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「各都道府県に対し、今秋(2020年秋)にも進捗状況の報告を求めるべきではないか」と指摘しています。ただし、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で「進捗状況を今秋(2020年秋)までに報告せよ」と求めることには、都道府県や病院(とりわけ公立・公的病院や大学病院など)に大きな負担をかけることとなり現実的ではないようにも思われます。

厚生労働省において、尾形裕也座長(九州大学名誉教授)らと調整しながら、実態把握に向けた調査項目や調査スケジュールなどを固めていくことになるでしょう。

このため、注目される「公立・公的病院等における機能分化等の再検証スケジュール」についても、「実態把握の後に検討していく」こととなりそうです。コロナ感染症が猛威を振るう中では、公立・公的病院では「コロナ感染症対応を進めながら、一般医療の提供も行い。それと並行して『機能分化に向けた再検証』を進めている」状況です。地域によって、医療機関によってコロナ感染症の状況や対応内容は異なっており、しかも今後のコロナ感染症の動向は読み切れません。したがって、まず実態を把握しなければ、「再検証をいつまでに進めてほしい」などの依頼を行うことも難しいでしょう。公立・公的病院の機能分化は、今後の我が国の医療提供体制改革を進める中で非常に重要な鍵となりますが、実態を把握せずに拙速に進めることは本末転倒である点にも留意が必要です。



なお、留意すべきは「地域ごとに、人口動態を踏まえて、それにマッチするように医療提供体制を変化させていかなければならない」状況は、コロナ感染症下でも変わらないという点です(関連記事はこちら)。例えば、人口減少地域では、その減少度合いを踏まえながら「医療提供体制を縮小」していかなければならず、「個々の病院のダウンサイジング」や「患者アクセスに配慮したうえでの病院の再編・統合」を検討しなければ、いずれ「病床過剰となり、病院経営が立ち行かなくなる」状況に陥ってしまうのです。

「再検証期限が切られていない」=「地域医療構想の実現に向けた動きをストップしてよい」わけではありません。国や都道府県の動きを横目で見ながら、「自院で可能な取り組み」を検討・実施していくことが、コロナ感染症下でも求められていることを忘れてはいけません。この点、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では「新公立病院改革プランの策定」に向けた支援を行っています。形だけの改革プランではなく、地域の医療ニーズや他院の状況も踏まえた「真に実効性のある改革プラン」策定に向けた準備が重要です。

病院が誤解せずに報告できるよう「稼働病床数」の名称を変更し、考え方を明確化

上述のとおり、一般病床を持つ病院・有床診療所は、毎年度「自院が保有する各病棟の機能」(どのような機能を果たしていると考えているのか)、「自院の診療実績」、「今後の意向(機能転換の予定)」などについて報告する義務が課せられています(病床機能報告)。

7月29日の地域医療構想・医師確保計画WGでは、今年度(2021年度)の病床機能報告において、次のような報告項目等の見直しを行うことが了承されました。近くパブリックコメント等を経て告示改正が行われます。

(1)「稼働病床数」について「最大使用病床数・最小使用病床数」と名称変更したうえで、考え方を明確化するなどの修正を行う

(2)2020年度診療報酬改定を踏まえた診療実績項目の見直しを行う

(3)報告期間の通年化(従前は「前年の6月の診療実績」だったところ「前年4月-当年3月の診療実績」を報告することに)に合わせて、救急車受け入れ件数や新規入棟患者数の対象期間(従前は「前年7月―当年6月」を「前年4月-当年3月」に見直す(データの対象期間を揃える)

(4)コロナ感染症対応実績について「都道府県のみに報告」する(公表しない)



まず(1)は「稼働病床数」について、一部医療機関に「X(30床)・Y(30床)の2病棟がある場合、ある月に30名の患者をX病棟で受け入れ(X病棟は100%使用)、別の月に30名の患者をY病棟で受け入れ(Y病棟は100%使用)ることで、病院全体で100%稼働」という誤った認識がある可能性を踏まえ、次のように明確化を行うものです(関連記事はこちら)。

▽病棟ごとに、「最大使用病床数」(過去1年間に最も多く入院患者を収容した時点で使用した病床数、従来の「稼働病床数」と同じ)、任意で「最小使用病床数」(過去1年間に最も少なく入院患者を収容した時点で使用した病床数)の報告を求める(2021年度報告では任意とする)

▽病院全体での「過去1年間で最も多く入院患者を収容した時点で使用した病床数」「過去1年間に最も少なく入院患者を収容した時点で使用した病床数」についても報告を求める

病床機能報告において「病床の利用状況」をより正確に把握できるよう、考え方を明確化する(地域医療構想・医師確保計画WG5 210729)



これにより、より正確に「個々の病院において、ベッドがどれだけ使用されているのか」を把握することができます。その結果、「●●病院は病床利用状況が低い。ダウンサイジングをした方がよいのではないか」などの検討につなげることができます。



また(3)は、上述のとおり「報告データの通年化を踏まえて、報告対象期間を揃える」ものです。

コロナ感染症患者を受け入れたか、コロナ感染症対応のために休棟したかなども報告

一方、(4)は、各地域において「コロナ感染症の影響を踏まえた病床利用状況」や「コロナ感染症の影響を除いた病床利用状況」を踏まえた議論を可能とするために、各病棟について2021年7月1日時点の▼コロナ感染症患者対応の有無▼コロナ感染症患者に対応するための休棟・休床の有無▼コロナ回復後患者の受け入れの有無―などのデータ報告を求めるものです。

例えば、ある病棟(50床)をすべてコロナ感染症患者受け入れ対応とした場合には「コロナ患者対応」として報告し、別の病棟について「一部をコロナ患者受け入れに用い、そこにスタッフを集約するために一部を休床とし、一部を一般患者受け入れに使用した」という場合には、▼コロナ患者対応▼コロナ患者対応のため休棟・休床▼それ以外―として報告するイメージです。

コロナ感染症対応の状況把握イメージ(地域医療構想・医師確保計画WG7 210729)



このデータは「地域における協議の中で、コロナ感染症対応を除外して考える必要がある」際などに活用するもので、非公開となる見込みです。

また、コロナ感染症対応ために臨時「増床」を行った病院では、その臨時増床分を除外してベッド数を報告することになります。

病床機能報告において、通年化対応とコロナ感染症対応の状況把握を行う(地域医療構想・医師確保計画WG6 210729)



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