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薬価制度の抜本改革などで、薬剤費の伸びを是正せよ―経済財政諮問会議・民間議員

2016.10.24.(月)

 持続可能な社会保障制度の確立に向けて、▽薬剤費の伸びの抑制▽診療報酬などの審査業務の全国的な効率化・統一化▽高額療養費における外来特例などの不公平の是正▽OTC類似薬への一定の自己負担追加―などを行うべき――。

 21日に開かれた経済財政諮問会議で、民間議員は改めてこのように要請しました。

生活習慣病治療薬が高額薬に偏らないよう、ガイドラインにより適正化せよ

 要請内容は(1)効率的な医療・介護の提供(2)不公平の是正(3)自助・共助・公助の適切な組み合わせ―の3本柱で構成され、多岐にわたっており、かつ具体的なものから抽象的なものまでさまざまです。

 まず(1)の効率的な医療・介護の提供では「薬剤費の伸び」を抑制するよう求めています。具体的には、▼薬価制度の抜本的な改正(薬価の毎年改定、医薬品を適時適切に収載し、費用対効果を踏まえた価格付けを行う仕組み)▼高額薬に偏りがちな生活習慣病治療薬に対するガイドラインなどによる適正化▼後発医薬品の普及加速(一般名処方の促進や、先発医薬品名で処方する場合の理由記載など)▼重複投薬是正等に向けた、院外処方やかかりつけ薬局に対する調剤報酬の成果の検証と必要な改善措置―を行うべきとしています。

 薬剤費についは、現在、オプジーボに代表される超高額医薬品の薬価に焦点を併せた議論が中央社会保険医療協議会で進んでいますが、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)らは「薬剤費の伸びが医療費を圧迫する大きな要因になっている」として、薬価制度全般における抜本的な改革を強く求めており、今後の中医協論議にも注目が集まります。

後発品の数量シェアが政府目標の80%になれば、医療費が6000億円程度抑制できるとして、経済財政諮問会議の民間議員は後発品の使用促進を求めている

後発品の数量シェアが政府目標の80%になれば、医療費が6000億円程度抑制できるとして、経済財政諮問会議の民間議員は後発品の使用促進を求めている

 

 このほかにも、▼診療報酬・介護報酬審査業務の全国的な効率化・統一化▼データヘルス分析などにおける、外部委託を活用した保険者支援▼介護事業に係る文書の全電子化▼介護調整交付金における要介護度の改善などの成果に基づいた傾斜配分▼介護事業者に対する要介護度の改善などに基づく成果報酬制度等の拡大▼センサー・ロボット・ITなどを導入する介護事業者への加算の導入―などを行うよう求めています。

 ただし介護調整交付金は、市町村(介護保険の保険者)における後期高齢者の割合の差や、災害など、「市町村の責任」とはいえない事由に基づいて生じてしまう保険料の差を埋めるものです。このため「要介護度の改善成果」を導入するには、調整交付金の仕組みそのものを見直す必要があり、十分な議論が必要となります。

世代間・世代内の不公平を是正せよ

 また(2)の不公平是正については、▼高額療養費(医療保険)の外来特例を廃止する▼入院負担限度額や所得基準について高齢者と現役世代を同水準とする▼後期高齢者の保険料軽減特例(低所得者、所得割、元被扶養者)を速やかに廃止する▼一般(市町村民税課税世帯)の高額介護サービス費の自己負担限度額引き上げ―などを要望。

 これらは、現在、社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会で議論されているテーマであり、その行方を待つ必要があります(医療保険部会の議論はこちらこちら、介護保険部会の議論はこちらこちらこちらこちらこちら)。

 

 さらに(3)の「自助・共助・公助の適切な組合せ」では、▼OTC類似医薬品(一般用医薬品類似医薬品)に対する一定の追加的自己負担▼介護サービスの利用者負担割合の引上げ▼介護納付金の総報酬割への移行▼補足給付などにおける金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担▼軽度者に対する介護サービスの地域支援事業への移行―が提言されています。

 OTC類似医薬品については、これまでの診療報酬改定でも保険給付範囲の見直しが行われており、さらなる拡大が今後、中医協で議論される可能性も高くなっていると言えます。

健康・予防を促進し、医療費・介護費そのものの膨張を抑えよ

 前述の提言は、言わば「給付費の抑制」に着目したものです。極論すれば、医療保険の給付範囲をごくごく狭めれば、国や保険者・企業の負担は小さくすみます。しかし、その分、患者の自己負担が増加することになり、これでは「社会保険制度の持続」は難しくなってしまいます。

 そこで民間議員は、医療費・介護費そのものを適正化し、我々が負担できる程度に抑えることが必要とも訴えています。

 具体的には、▼医療費適正化に向けたガバナンスの確立(医療費の地域差の是正)▼健康・予防の促進(検診などの受診者と未受診者で保険料率に差を設けたり、重症化予防・介護予防を促進する)▼過度な受療行動の適正化(初診時にかかりつけ医以外を受診する際の定額負担の導入など)▼医療・介護の供給体制の見直し(医療従事者の地域偏在の是正に向けた、助成金や奨学金の充実など)―を行うことが必要と強調しました。

一人当たり医療費には大きな地域差があり、これらを是正していくことで、医療費全体の膨張を一定程度抑えられると経済財政諮問会議の民間議員は強く訴えている

一人当たり医療費には大きな地域差があり、これらを是正していくことで、医療費全体の膨張を一定程度抑えられると経済財政諮問会議の民間議員は強く訴えている

  
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