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難病等データベースからのデータ提供、難病等の特性を踏まえてどう考えるか―難病対策委員会

2018.3.15.(木)

 2015年から新たな難病対策がスタートし、患者の「生活状況」や「検査結果」「治療履歴」などの情報についてデータベース化が進められています。

 2018年度後半からはデータベースに格納された情報の研究者などへの提供が始まりますが、その際のルール(誰に、どこまでの情報を提供するのかなど)作りに向けた議論が、「難病対策委員会」(厚生科学審議会・疾病対策部会の下部組織)と「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」(社会保障審議会・児童部会の下部組織)の合同開催で進められています。

 3月2日の会合では、「難病や小児慢性特定疾病の特殊性」を踏まえたルール作りが必要との意見が多数出されています。

3月2日に開催された、「第54回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」と「第28回 社会保障審議会 児童部会 小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」の合同開催)

3月2日に開催された、「第54回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」と「第28回 社会保障審議会 児童部会 小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」の合同開催)

難病データの提供先、企業や学会、患者会などを含めるべきか

 2015年1月1日から新たな難病対策基本法に基づく新たな難病対策がスタートし、例えば「難病対策の拠点となる病院を都道府県ごとに指定する」ことや(関連記事はこちら)、「一定の要件を満たす指定難病患者については医療費の助成を行う」仕組みなどが確立されました(関連記事はこちらこちらこちら)。あわせて、難病等患者の情報(臨床調査個人票に基づく)を集積したデータベースが構築されており、2018年度後半からは研究者等へのデータ提供が可能となります。

医療等に関するデータベースとしては、例えばNDB(National Data Base)が既に構築され、ガイドラインに沿って研究者等へのデータ提供が進められています。しかし、NDBに格納されているデータは▼レセプトデータ▼特定健診結果―のみであるのに対し、難病等のデータベースには、▼患者の生活状況(移動、身の回りの管理、精神状態など)▼遺伝子検査を含む検査結果▼重症度▼治療履歴▼人工呼吸器装着の有無―など、より「機微性の高い」情報が格納されており、NDBデータの提供とまったく同じに考えることはできません。

難病のデータベースに格納されるデータは、難病患者に対する臨床個人調査票(通称、臨個票)に記載される項目で、非常に機微性が高い

難病のデータベースに格納されるデータは、難病患者に対する臨床個人調査票(通称、臨個票)に記載される項目で、非常に機微性が高い

小児慢性特定疾病のデータベースに格納されるデータは、患者の臨床所見・検査所見など、やはり非常に機微性が高い

小児慢性特定疾病のデータベースに格納されるデータは、患者の臨床所見・検査所見など、やはり非常に機微性が高い

 
厚生労働省は3月2日会合に、難病等のデータベースからのデータ提供ルールを考えるに当たっての論点を提示し、委員間での議論を要請しました。
(1)情報の提供先をどう考えるか
(2)提供する情報の範囲をどう考えるか
(3)利活用の目的をどう考えるか
(4)審査会の設置についてどう考えるか

まず(1)の「データ提供先」については、大きく▼厚労省または厚労省が補助を行う研究班に限定する▼さらに都道府県、大学、研究機関などへも拡大する▼さらに企業にも拡大する―という3つのパターンが考えられます。

非常に機微性の高い情報ゆえ「企業等への情報提供はすべきでない」との意見も多数でましたが、一方で「難病等の患者数は少なく、患者側が『同じような疾患の方がどれだけいるのか』を知らない。患者会にも一定のデータ提供を認めるべきではないか」との声が本間俊典委員(あせび会(希少難病者全国連合会)監事、難病対策委員会委員)らから出されました。

また井田博幸委員(東京慈恵会医科大学小児科学講座教授、小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会委員)からは、「研究者個人レベルでは全体を見ることは難しい、きちんとした学会にもデータ提供を行うべき」との要望が出されています。

患者サイドからは「治療法確立に向け、研究に資するデータを提供すべき」との見解も

また(2)の「情報の範囲」に関して厚労省は、▼個人が特定されない情報のみ▼「個人が特定されやすい」という難病等の特性に配慮しつつ、原則として「匿名化の上で、研究内容から必要と判断される情報」を提供する―という2つの考え方を示しました。

この点、機微性を考えれば、前者の個人が「特定されない情報」に限定すべきとも思われます。しかし、患者代表である森幸子委員(日本難病・疾病団体協議会代表理事、難病対策委員会委員)は、「疾患によっては対症療法すらないものもある。研究に資する情報は広く提供し、結果公表等の段階で厳しくチェックする形が望ましいのではないか」旨の考えを表明。また、家族代表である小林信秋委員(難病のこども支援ネットワーク顧問、小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会委員)は、「患者・家族が研究班の症例研究会などに参加させていただくが、その際、匿名化が行われているが、どの患者かはほぼ特定できる。しかし、患者や家族は『自分の情報をもとにきちんと研究してくれている』と感じる」と述べ、場面によっては「個人が特定されることすら許容される」こともあると説明しました。「そもそもの患者数が極めて少なく、また一日も早い治療法の確立などが求められる」という難病等の特性に応じた検討が求められそうです。

 
一方(3)は、▼研究の基礎資料にとどめるか▼臨床研究への利活用も認めるか―という論点です。後者の「臨床研究への利活用」を視野に入れれば、(2)の情報提供範囲は広めなければならず、(1)では「優れた医薬品・医療機器の開発」に向けて企業もデータ提供先に含めるべきではないか、という議論にもつながってきます。

この点、患者サイドからは「臨床研究への利活用」を見据えた研究につなげてほしいとの声が出ています。

症例数が少ないなど難病の特性踏まえて、データ提供の可否を審査すべきではないか

さらに(4)は、研究者等から「データを提供してほしい」との申請が上がってきた際に、すべての個別ケースについて「研究目的がルールに合致しているか、申請されたデータは研究内容に沿っているか(過度に広い範囲のデータ提供を求めていないか)」などを審査すべきかという論点です。厚労省は▼すべてのケースで審査を行う▼「厚労省が補助する研究班(難病研究班等)に、個人が特定されない情報のみを提供する」ケースなどは審査を省略する▼運用基準を明確化し、個別審査は行わない―という3パターンが考えられるのではないかとしています。

この点、多くの委員から「難病の特殊性を踏まえて、審査を的確に行いデータ提供の可否を判断することが適切ではないか」との考えが示されました。例えば(1)で見たように「患者会や学会へのデータ提供の可否」などは、さまざまな団体・学会があることから一律に線引きすることは難しく、「個別ケースについて審査する」ことが妥当と考えられます。

また提供するデータの範囲についても、既に難病研究の実績を持つ研究班と、個人の研究者では異なってくるでしょう。

 
厚労省は、これらの意見を総合し、次回会合に、より具体的な案(例えばデータ提供ガイドラインの骨子案など)を提示する考えです。

 
なお、NDBの構築・運用の第一人者である医療情報システム開発センター理事長の山本隆一氏(「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」の座長、「要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関する有識者会議」の座長も務める)から、難病等データベースからのデータ提供ルールを設定するに当たり、次のような点を考えてはどうかとの提案がなされています(関連記事はこちら)。

▽情報提供先について「厚労省からの補助を受けた研究班」に限定することは慎重に議論すべき(他にも文部科学省から補助を受けた研究なども考えられる)

▽情報提供の範囲については、「症例数の少ない疾患が含まれる」「遺伝情報が含まれる」「将来的に難病のデータベースと小児慢性特定疾病のデータベースの結合も考慮する必要がある」点などを勘案する必要がある

 
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