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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

限りある資源の効率的・合理的提供を可能とする健保法等改正案を国会に提出―厚労省・樽見保険局長

2019.1.21.(月)

 近く開催される通常国会に、オンライン資格確認や社会保険診療報酬支払基金改革などを内容とする健康保険法等改正案を提出する。これは「医療保険制度を、将来に向けて効率化・合理化し、資源を患者や医療機関の利益に集中できるような基盤を整える」ことを狙っている。人口構造が変化する中で、医療保険制度はこれまでの「保険料を集めて給付を行う」仕組みから、「住民や企業従事員の健康を守る」仕組みへと変化していく―。

 1月18日に開催された2018年度の「全国厚生労働関係部局長会議」において、厚生労働省保険局の樽見英樹局長は、このような考えを強調しました。

1月18日の全国厚生労働関係部局長会議において医療保険行政の重点事項について説明した、厚労省保険局の樽見英樹局長

1月18日の全国厚生労働関係部局長会議において医療保険行政の重点事項について説明した、厚労省保険局の樽見英樹局長

 

医療保険制度も、「住民や企業従事員の健康を守る」仕組みへと変化

 我が国においては、「国民皆保険制度」や「フリーアクセス」により、世界最高水準の長寿社会を実現しています。しかし、少子高齢化が進む中では、医療を取り巻く環境が大きく変化します。

2022年からは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年ですべての団塊の世代が後期高齢者となります。後期高齢者では、外来受診の回数が多く、また平均在院日数も長いため、「1人当たり医療費」が若人の4.3倍と高くなります(2016年度、若人全体では21万8213円、後期高齢者全体では93万2611円)。このため、後期高齢者の増加は、医療費の増加に大きく影響するのです。

一方で、2040年を過ぎると、高齢者の増加率そのものは鈍化するものの、医療保険制度を支える現役世代の人口が急激に減少していきます。

このため、医療保険制度をはじめとする社会保障制度の基盤が極めて脆くなっていくことが明らかで、「医療費そのものの増加を抑える効果的な方策」や「給付と負担の見直し」など、さまざまな対策が検討されているのです。

樽見保険局長は「全世代が安心して医療を受けられる制度を構築しなければならない」と強調し、近く開催される通常国会に、健康保険法等改正案を提出することを説明しました(関連記事はこちら)。

今般の健保法等改正案は、(1)オンライン資格確認の導入(2)NDB・介護DBの連結解析の導入(3)高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等(4)被扶養者等の要件の見直し、国民健康保険の資格管理の適正化(5)審査支払機関の機能強化―を内容とするもので、一部負担増や保険料水準の増加を内容としていません。樽見保険局長は法改正の狙いを、「医療保険制度を、将来に向けて効率化・合理化し、資源を患者や医療機関の利益に集中できるような基盤を整えるもの」と説明しています。

例えば(1)のオンライン資格確認の導入によって、医療機関の窓口や審査支払機関、保険者の事務負担を軽減することが見込まれます。「退職等で被保険者資格を喪失しながら、返却していない被保険者証を用いて、不当に保険診療を受ける」ような事例を防止し、保険財源を「適正に受診する患者」に集中することが可能となるのです。
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また(2)のNDB・介護DBの連結解析により、将来、「腹囲や血圧が●●の状態にある人は、○○疾病に罹患しやすく、その場合、◎◎治療が効果的である。また、こうした人は◆歳程度で要介護状態となるが、◇◇介護サービスと◆◆介護サービスを組み合わせて提供することで、要介護状態が改善する」などのエビデンスを構築できると期待されます。こうしたエビデンスが構築されれば、「効果の低い治療」等(例えば効果の低い抗がん剤使用など)を避け、限りある医療等資源を「効果が高いと見込まれる治療」に集中的に提供することが可能で、当然「患者負担の適正化」にも結び付きます。

さらに(4)の被扶養者要件の見直しでは、「我が国に居住実態のない人」(日本人・外国人問わず)を被扶養者から除外することで、医療保険財源を「適正に保険料を納め、我が国の医療保険制度を支えている人」に集中することを実現するものです。

 (5)の社会保険診療報酬支払基金など審査支払機関の機能強化でも、「地域の特性を十分に踏まえたうえで、審査機能を本部に集約する」ことを目指します。
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 一方、(3)は、現在、ともすればバラバラに実施され、効果が十分に上がらない、高齢者への保健事業と介護予防事業を市町村が中心となって一体的に実施することで、より効果的かつ効率的に「健康寿命の延伸」に向けた取り組みを実現するものです。この点についてもっとも市町村は、その事務体制等にも大きなバラつきがあることなどから、樽見保険局長は、都道府県や政令指定都市等の担当者に「都道府県等の立場でも『地域住民の健康』に目を配り、課題解決に向けて努力してほしい」と要望しています。
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 さらに樽見保険局長は、「人口構造が変わっていく中で、医療保険制度はこれまで『保険料を集め、それを給付する』という形であったが、これからは『少しでも住民(国民健康保険)や職員(協会けんぽや健康保険組合)の健康を守る』方向に変わってくると思う。こうした方向に向けて医療保険者も医療提供者も協力してもらい、行政もこの方向に向けた資源を集中できるように支援を行っていく」との見解を強調しました。かねてより「保険者機能の強化」が議論されており、その中で「データヘルス」などの動きが積極的になってきています。今般の健保法等改正で、さらに保険者が機能強化していくことも期待されるでしょう。

 
 
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