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ナース・プラクティショナーの活動で在院日数短縮や死亡率低下など「医療の質」向上―日看協

2019.7.30.(火)

 ナース・プラクティショナー(NP)教育課程修了者は、医療現場においてその知識や判断力を生かし、患者・利用者に的確に対応しており、アウトカムに貢献している。しかし、現在の医療制度の下では、「薬剤を用いたタイムリーな症状緩和」などは実施できない―。

日本看護協会は7月30日に「NP教育課程修了者の活動成果に関するエビデンス構築パイロット事業報告書」を公表し、こういった状況を明らかにしました。今後、よりタイムリーな対応を可能とすべく、制度的枠組みを検討していく考えも示しています(日看協のサイトはこちら(報告書)こちら(プレスリリース))。
日看協NP報告書1 190730
 

高度急性期医療・急性期医療へのNP導入で在院日数や死亡率が低下

ナース・プラクティショナーは、医師の指示を待たず、自身の判断で一定の医行為を実施できる看護師のこと。米国等では制度化され、▼医療へのアクセスの改善▼待ち時間の短縮▼重症化予防▼高い患者満足度―というメリットがある一方で、「患者アウトカムへの悪影響」を示すデータはないと指摘されています。「医師の働き方改革」を進める中で、「医師からのタスク・シフティング」先として注目が集まっています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

我が国ではナース・プラクティショナーは制度化されていませんが、一部の大学院(10課程)では、2008 年から米国のナース・プラクティショナー教育を参考に「NP教育課程」を設置。そこでは、▼フィジカルアセスメント▼病態生理学▼臨床薬理学―などの科目を設け、対象者の身体状況を的確に把握し、診断や治療を提案するプロセスも学んでいます。

2018年度には、この「NP教育課程」を修了した看護師が、医療現場でどのように活動しているのか日看協が研究事業(パイロット事業)を実施しました。具体的には、3病院(熊谷総合病院(埼玉県)、国立病院機構長崎医療センター(長崎県)、愛知医科大学病院(愛知県)、2介護老人保健施設(鶴見の太陽(大分県)、メープル小田原(宮城県))、1訪問看護ステーション (はあと(神奈川県)の6施設において、NP教育課程修了者の活活動成果と、課題を整理しています。

まず熊谷総合病院(埼玉県)では、糖尿病患者の外来診療において、「非常勤の糖尿病専門医のみが診療したグループ」と「NP教育課程修了者と非常勤専門医とが協働して診療グループ」とで、治療成績を比較。

糖尿病専門医群に比べ、NP教育課程修了者群では、▼HbA1c目標値の到達割合が高い(NP教育課程修了者群:74.4%、専門医群:53.2%)▼LDL-C目標値の到達割合には有意差なし(NP教育課程修了者群:75.5%、専門医群:76.3%)▼収縮期血圧目標値の到達割合は差がなかった(教育課程修了者群:24.1%、専門医群:25.5%)が、非到達割合は高かった(NP教育課程修了者群:42.7%、専門医群:24.7%)―ことが分かりました。

日看協は、「専門医と協働しながら糖尿病治療を行うことで、NP教育課程修了者は、非常勤の専門医と同等に血糖値・LDL-Cを管理できる」と考察しています。

 
 
また長崎医療センター(長崎県)では、急性期病棟に入院する脳卒中患者への医療提供について、「医師が診療を担当したグループ」と「医師に加えNP教育課程修了者が診療を担当したグループ」とで、治療成績を比較。

医師群に比べ、NP教育課程修了者群の方が▼平均在院日数が短い(全対象者では医師群:43.6日、NP教育課程修了者群:30.1日、65歳以上に限ると医師群:44.3日、NP教育課程修了者群:31.5日)▼退院割合が高い(全対象者では医師群:23.3%、NP教育課程修了者群:50.6%、65歳以上に限ると医師群:10.5%、NP教育課程修了者群:44.0%)―状況が分かりました。

日看協では、「医師は病棟に不在のことが多く、NP教育課程修了者の介入前は看護師や他職種との連携に課題があったが、NP教育課程修了者の介入で多職種協働が強化された。全身状態を見極められるNP教育課程修了者がヘルスアセスメントを行いながら、患者の全身状態と治療方針を的確に把握し、チーム医療を強化することで回復が促進され、平均在院日数短縮等につながった」と分析しています。

 
 
一方、愛知医科大学病院(愛知県)では、術後人工呼吸器を装着した状態のICU入室患者への対応について、「NP教育課程修了者導入前」 (日中:医師2-3名、夜間:医師2名体制)」と「NP教育課程修了者導入後 」(日中:医師1-2名+NP1名、夜間:医師1名+NP1名体制)とで患者の状態を比較。

NP導入前後で、患者の年齢、性別、ASA-PS分類(術前の全身状態の指標)、手術時間、麻酔時間、緊急手術の割合等に有意差はなく、入室時の重症度(APACHEIIスコア)はNP導入後の方が有意に高かったのですが、▼NP導入前後で「死亡率」「合併症発生率」「ICU再入室率」に差はない▼NP導入後の方が「ICU滞在日数が短い」(NP導入前:平均6.6日、NP導入後:平均5.1日)、「90日以降の死亡率が低い」(NP導入前:19.1%、NP導入後:7.8%)―ことが明らかになりました。
日看協NP報告書2 190730
 
日看協は、「医師が複数常駐しているICUでは、医師1名をNP教育課程修了者に代えても、術後人工呼吸器装着患者の転帰には変わりがなく、質を低下させずにより効率的に医療が提供できる」「NP導入後に人工呼吸器装着日数、ICU滞在日数が短くなり、これが90日以降の死亡率低下に関係している可能性がある」と見ています。

介護老健施設でのNP導入で、皮膚障害の治癒率上がり、医療機関受診率は低下

 
さらに、介護老人保健施設「メープル小田原」(宮城県)では、NP教育課程修了者の介入前後で、入所者のる創部感染・蜂窩織炎の重症化が予防されたかどうかを比較。

NP教育課程修了者介入後の方が、▼施設外対応(外来受診や入院)の割合が低い(介入前:28.3%、介入後:3.8%)▼皮膚障害の治癒率が高い(介入前:78.3%、介入後:92.5%)―状況が明らかになっています。

日看協は、「NP教育課程修了者が局所・ヘルスアセスメントを行い、必要な場合に医師の回診を待つことなく医師に現症を報告。適切な対応方法を相談して治療方針の変更や抗菌薬の使用の提案をしたことで、悪化予防・早期回復が促された」と分析しました。

 
 
また、介護老人保健施設「鶴見の太陽」(大分県)では、NP教育課程修了者の介入前後で、ポリファーマシー(有害事象を伴う多剤投与)がどう適正化されたかを調べました。

NP教育課程修了者介入後には、▼対象者42名への総処方薬剤数が半減(介入前:259剤、介入後:125剤)▼1人当たり薬剤費が8割減少(介入前:1日当たり322.6円、介入後:1人当たり55.6円)―という効果が現れています。

日看協では、「介護老人保健施設には1施設平均1.1名の医師しか配置されておらず、全入所者の身体状況を頻繁に観察・把握しながらの薬剤の評価・変更は負担が大きい。NP教 育課程修了者がヘルスアセスメントを行い、きめ細やかに入所者の心身の状態の変化を把握し、医師・看護職と連携して薬剤の評価・変更を行うことで、大きな効果が現れる」と見ています。

 
 
他方、訪問看護ステーション「はあと」(神奈川県)では、NP教育課程修了者の介入前後で、利用者の状態悪化が防止されたかどうかを調査。

NP教育課程修了者介入後には、▼救急外来受診回数の減少(介入前:0.09回/訪問看護100日(以下同)、介入後:0.05回)▼予定外入院回数の減少(介入前:0.85回、介入後:0.58回)▼定期外受診の回数の増加(介入前:0.28回、介入後:0.30回)―という状況です。

日看協は、「NP教育課程修了者が全人的なヘルスアセスメントから状態の悪化を把握・予測し、受診が必要な状態であると判断した場合には受診を勧めて定期外で受診。結果として救急外来受診や予定外入院を回避できた」と見ています。

 
 
 高度急性期入院医療から介護まで、さまざまな場面で「NP教育課程修了者」の介入によって、医療の質を落とさずに(多くの場面では向上)、医師の負担を軽減できる可能性が強く示唆される研究結果と言えそうです。

薬剤処方や検査オーダーなどはNP教育課程修了者でも不可という課題

こうした成果が出ている一方で、現場の「NP教育課程修了者」にはジレンマもあったようです。具体的には、▼血糖管理のうち薬物療法はタイムリーに提供できない▼迅速な検査が行えず、タイムリーな抗菌剤使用ができない▼薬剤が必要な創傷ケアでは、タイムリーなケアを提供できない▼医師の診察を受けるまで薬剤を用いた症状緩和を行えない―など「現行法のもとでは、対応できない患者・利用者の医療ニーズがある」点です。

NP教育課程を修了していても、現行制度上は「看護師」であり、薬剤の処方や検査のオーダーなどは行えません。このため、「タイムリーに対応できない場面がある」と忸怩たる思いをするNP教育課程修了者が少なくないようです。

日看協は、こうした課題を踏まえ、「今後、看護師が患者・利用者のニーズによりタイムリーに対応していくための制度的枠組みの検討を進めていく」考えを強調しています。

なお、すでに根本匠厚生労働大臣に宛てて、直接「ナース・プラクティショナー創設に向けた検討の場」設置を要望しています(関連記事はこちら)。

   
 

 

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