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25-39歳のがん患者のほとんどは女性、子宮頸がん・乳がん患者が多い点を踏まえた対策を―国がんセンター・成育医療センター

2019.10.24.(木)

小児がんとAYA世代がんでは、がんの種類や患者構成が大きく異なり、25歳以上39歳以下では「子宮頸がん、乳がん」の女性患者が圧倒的多数を占めるようになり、こうした状況踏まえたがん対策が求められる―。

小児がん患者の「小児がん拠点病院」への集約は相当程度進んでいるが、脳腫瘍などでは差なら集約が求められる―。

国立がん研究センターと国立成育医療研究センター(以下、両センター)が10月18日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告書」から、こういった状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら)。

小児がん症例の「小児がん拠点病院への集約」は相当程度進んでいるが・・・

2018-2022年度における、我が国のがん医療政策の基礎となる「第3期がん対策推進基本計画」では、「AYA世代のがん医療充実」「小児がん医療の充実」を重点施策の1つに据えています。

前者のAYA世代とは、「思春期」(Adolescent)と「若年成人」(Young Adult)を合わせた世代で、がん治療にあたって、この世代でとりわけ重要な課題が存在します。例えば▼成人期を迎えるに当たっての「就労支援」▼さらに医療に関する知識が不十分ゆえの「十分な相談支援」▼「生殖機能温存」(卵子や精子の凍結保存など)―などの課題です。

また小児では、例えば▼「教育」(学校教育はもちろん、親との接触を通じた情操教育など)をどう提供していくか▼成人よりも未熟な心理面をどうサポートするか▼成人期を迎えた場合の「再発」対策―などの課題があります。

こうした小児・AYA世代のがん医療を充実していくためには、「小児がん患者、AYA世代のがん患者がどの程度いるのか」「どのようながん種が多いのか」「医療現場ではどういった治療が行われているのか」という実態把握がまず必要です。


そこで両センターでは、全国のがん診療連携拠点病院等をはじめとするがん専門施設で実施されている2016・17年の院内がん登録のデータを集計し、小児・AYA世代のがん医療に特化した分析を行いました。

ここでは「ゼロから14歳」を小児、「15-39歳」をAYA世代と定義し、2016・17年に院内登録された小児がん4513症例、AYA世代がん5万7788症例を対象に分析。

まず小児がんのがん種を見ると、▼白血病:1403症例(31.1%)▼脳腫瘍:990症例(21.9%)▼リンパ腫:424症例(9.4%)▼胚細胞腫瘍:302症例(6.7%)▼軟部腫瘍:169症例(3.7%)▼骨腫瘍:161症例(3.6%)▼網膜芽腫:143例(3.2%)▼肝腫瘍:110症例(2.4%)▼腎腫瘍:106症例(2.3%)―などです。白血病・脳腫瘍・リンパ腫の上位3がんで、小児がん全体の6割超を占めています。

一方、AYA世代のがん種を見ると、▼癌腫(甲状腺がん、その他の頭頸部がん、気管・気管支・肺のがん、乳がん、泌尿生殖器がん、消化がん、その他および部位不明のがん):2万2231症例(38.5%)▼脳・脊髄腫瘍:2729症例(4.7%)▼胚細胞性他:2385症例(4.1%)▼リンパ腫:2005症例(3.5%)▼白血病:1847症例(3.2%)▼軟部肉腫:917症例(1.6%)▼黒色腫・皮膚がん:588症例(1.0%)▼骨・軟骨腫瘍:374症例(0.6%)―などが多くなっていますが、小児と異なり「変換不能(上皮内がん等)」が4割超を占めています(小児では6.7%)。ただし、「変換不能」を再分類すると97%が「癌腫」に該当しています。

このように、若年世代のがんと言っても、小児とAYA世代では大きく様相が異なることを確認できます。

小児とAYA世代では、がんの種類が大きく異なる(小児・AYA世代全国集計1 191018)



次に小児・AYA世代をまとめて、患者の年齢を見てみると▼35-39歳:43%▼30-34歳:27%▼25-29歳:14%▼20-24歳:6%▼15-19歳:3%▼10-14歳:2%▼5-9歳:2%▼ゼロ-4歳:3%―という状況です。両センターでは、「25歳を過ぎると飛躍的に患者数が増加し、30-39歳での発症が「40歳未満のがん全体の約70%」「AYA世代のがんの約75%」を占めています。

また、「年齢階級×性別」で分析すると、19歳までは男女で患者数に大きな差はありませんが、20歳を過ぎると▼女性ががん患者の80%を占める▼年齢が上がるほど(分析対象は39歳まで)、女性のがん患者の比率が高くなる―ことも分かりました。

さらに詳しく分析すると、「癌腫」では▼子宮頸部上皮内がん▼乳房上皮内がん―が多く、「25歳以降のがんの急激な増加は、女性の子宮頸がん・乳がんの増加に由来している」ことになります。両センターでは、「AYA世代のがんは、『25歳まで』と『25歳以降』で、病気の種類が大きく異なっている」として、対策立案に当たってはこの辺に留意する必要があることを強調。例えば「25歳以上の女性」を対象に、子宮頸がん・乳がん検診の重要性を説き、クーポン券配布などの支援を行うことが重要でしょう。

25-39歳では、がん患者のほとんどは女性である(小児・AYA世代全国集計2 191018)



また、14歳までの小児がん患者がどの病院で治療を受けているのかを見ると、▼がん診療連携拠点病院(小児がん拠点病院を除く)の49%▼都道府県推薦のがん診療病院の84%―では、小児がん患者の初回治療実績がありませんでした。一方で、「小児がん拠点病院」では、過半が100症例(2016・17年度)を診療しています。つまり、症例数の少ない小児がんの「集約化」が進んでいることが分かります。症例が数多くの病院に分散してしまえば「研究、治療の遅れ」にもつながってしまうため、厚生労働省は▼北海道大学病院▼東北大学病院▼埼玉県立小児医療センター▼国立成育医療研究センター▼東京都立小児総合医療センター▼神奈川県立こども医療センター▼名古屋大学医学部附属病院▼三重大学医学部附属病院▼京都大学医学部附属病院▼京都府立医科大学附属病院▼大阪府立母子保健総合医療センター▼大阪市立総合医療センター▼兵庫県立こども病院▼広島大学病院▼九州大学病院―の15病院を「小児がん拠点病院」に指定しています。集約化が進んでいることは、今回のデータから確認でき、今後の「研究、治療の推進」に期待が集まります。

なお、がん診療連携拠点病院(小児がん拠点病院以外)・都道府県推薦のがん診療病院の中には、「1-3症例」の小児がん患者を受け入れている施設もあります(146施設、202症例)。そのがん種は、▼白血病▼リンパ腫▼脳腫瘍▼骨腫瘍▼軟部腫瘍▼胚細胞腫瘍―などで、脳腫瘍が多くなっています。もちろん、がん治療においては患者・家族のアクセスという側面も非常に重要です(遠方の病院に入院するとなった場合、家族の移動・宿泊費も大きくなる)。こうした症例の背景も詳しく分析し、「小児がん拠点病院」にさらなる症例集約を進めるためにどういった取り組みが必要かを考えていくことも重要でしょう。

小児がん症例の集約化が進んでいるが、脳腫瘍などでは更なる集約化の余地がある(小児・AYA世代全国集計3 191018)

 
 
 
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