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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

回リハ病棟におけるリハビリの効果測定、「FIM利得」から「BI利得」への切り替えを―日慢協・武久会長

2021.6.30.(水)

医療・介護を通じて「効果的かつ効率的な質の高いリハビリテーション実施」が求められている。医療の世界では、回復期リハビリテーション病棟において「リハビリの効果」をFIMで評価しているが、評価者によって結果にバラつきが出やすく、また恣意的な評価がなされる危険性もある。急性期医療や介護現場などでも用いられており、簡便で客観的な評価が可能と考えられる「BI」に評価指標を移行してはどうか―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長は、6月24日の定例記者会見でこのような考えを述べました。

6月24日の定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長(写真向かって左)と橋本康子副会長(同じく右)

2016年度改定以降、回リハ病棟患者の入棟時FIMは「低下」傾向にある

リハビリテーションについて、「効果」的かつ「効率」的な実施が求められています。2016年度の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟において「効果の上がらない漫然としたリハビリを長期間継続している施設がある」ことが問題視され、「リハビリテーション実績指数の施設基準化」が行われました(その後、2018年度・20年度改定で改善されいる)。

非常に複雑な仕組みですが、回復期リハビリ病棟入院料を取得するためには「リハビリの効果を数値で測定し、効果の高いリハビリを行っていると判断される」ことが求められるものです。

この「リハビリの効果」を測定する指標として「FIM」(Functional Independence Measure)が用いられ、「入棟時のFIM」と「退棟時のFIM」とを比較(FIM利得)し、改善の度合いが大きければ「リハビリの効果が高い」と判断されます。ただし、「リハビリの効果が上がらない患者」の受け入れを拒否する事例(クリームスキミング)が出ては困るので、▼入院料2・4・6病棟では要件化しない▼リハビリ実績指数の計算において「一般的にリハビリの効果が上がらないと考えられる患者」は除外する―などの配慮も行われています。

このようにアウトカムを評価する非常に優れた仕組みですが、医療現場からは▼FIM評価を行うためには専門の講習・研修が必要であり、リハビリ専門職以外では極めて困難である▼評価者が恣意的に数値を操作することが可能である▼恣意的とは言わないまでも評価者によって評価結果にバラつきが出る▼回復期リハビリ病棟でしか用いられず、急性期病棟や介護現場ではあまり使用していない―などの問題点を指摘する声が出ています。

例えば「評価者で評価結果がバラつく」「恣意的な評価が可能」であるとする背景には、評価尺度が、例えば▼4点:当該行為を75%以上自分で行う▼3点:当該行為を50%以上75%未満自分で行う▼2点:当該行為を25%以上50%未満自分で行う▼1点:当該行為を25%未満自分で行う―といった具合に、やや「曖昧」となっている点がありそうです。武久会長は「評価者が感覚的に判断してしまう可能性が高い」とコメントしており、またリハビリ医学に関する国内論文でも「客観性を問題視する」指摘が一部になされています。

FIMとBIの比較(1)(日慢協会見1 210624)

FIMとBIの比較(2)(日慢協会見2 210624)



この点、2020年度の前回診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会の議論の中でも、厚生労働省から「2016年度から入棟時のFIMが下がってきている」というデータが提示されました。「急性期病棟から回復期リハビリ病棟への早期転院」が進んでいる可能性もありますが、「リハビリ実績指数が導入された2016年度診療報酬改定を契機に、入棟時のFIMを恣意的に下げ、結果として『FIM利得を大きくする』という操作が行われた」可能性も指摘されています。このため2020年度改定では、不適切な数値操作を防止するために「評価結果を患者・家族に示す」というルールが設けられました(患者・家族による監視で、不正を防止する)。今後のデータから「このルールでは不正が防止できていない」となれば、さらに厳しいルールが設けられるかもしれません(関連記事はこちらこちらこちら)。



こうした状況を総合的に踏まえて武久会長は、「FIMでの患者状態評価」から「BIによる患者状態評価」に移行することを考えてはどうか、と提言しました。

BI(Batrhel Index)も患者状態を評価する指標の1つです。FIMとBIとを比較すると、▼FIMでは患者状態をきめ細かく評価できるというメリットがあるが、評価には専門スキルが必要で、恣意的な操作がしやすいというデメリットがある▼BIでは、細かな評価こそ難しいが、簡便で採点しやすく、評価者によるブレが少ないというメリットがある―ようです。また、FIMとBIの評価結果の間には、非常に高い相関のあることが、過去の研究でも、今般の日慢協調査でも明らかになっています。

FIMとBIのメリット・デメリット(日慢協会見4 210624)

FIM利得とBI利得との間には、極めて高い相関がある(日慢協会見3 210624)



また橋本康子副会長は、「回復期リハビリ病棟に来る患者について、急性期病棟からは『BIでの評価結果』が診療情報として提供される。また回復期リハビリ病棟から介護施設等に移った際にも『BIでの評価』がなされる。回復期リハビリ病棟でのみ『FIMによる評価』が行われており、統一評価となっていない」と指摘し、評価方法を統一するためには「急性期医療や介護現場でも簡便に用いることのできるBIの方が良い」との考えを強調しています。

介護保険の世界でも「効果的・効率的なリハビリ」の推進に向けた評価が始まっています。2018年度改定で創設され、今般の2021年度改定で拡充された【ADL維持等加算】(利用者のADLが維持・改善することを評価指標にした加算)では、ADL評価を「BI」で行うこととなっています。



2022年度の診療報酬改定に向けた議論が中医協で本格スタートしており、今般の提言がどう影響するのか、注目していく必要がありそうです。



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