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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

8番目の患者申出療養「遺伝子変異に対応した分子標的薬治療」、新たに「ペマジール錠4.5mg」を対象薬剤に追加―患者申出療養評価会議

2023.8.2.(水)

8番目の患者申出療養である「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」について、対象薬剤に、新たに「ペマジール錠4.5mg」を追加する—。

7月27日に持ち回り開催された患者申出療養評価会議(以下、本稿では単に「評価会議」とする)で、こういった点が了承されました。

遺伝子パネル検査で最適抗がん剤が見つかるが「適応外」である場合に患者申出療養を活用

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点として、その医薬品や医療機器等を用いた医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の16種類の患者申出療養が認められています(ただし「2」「3」「4」「5」「10」の技術はすでに新規患者の登録を終了)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAF V600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(還暦時はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究(関連記事はこちら



7月27日には、次の見直しを持ち回りで了承しています。

▽上記(8)の技術について、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん、FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍への効能効果が認められている「ペマジール錠4.5mg」を、新たに使用薬剤に含める



ゲノム(遺伝情報)解析技術が進み、「Aという遺伝子に変異の生じたがん患者にはαという抗がん剤を、Bという遺伝子変異のある患者にはβとγという抗がん剤を併用投与することが効果的である」などといった知見が徐々に明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいた最適な治療法の選択ができるようになれば、個々のがん患者に対して「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者負担の軽減(身体的、経済的)▼医療費の軽減―などにつながります。

我が国でも、多くの遺伝子変異を一括確認できる「遺伝子パネル検査」の保険適用が進み(関連記事はこちらこちら)、(1)患者の同意を得た上で、患者の遺伝子情報・臨床情報を、「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT、国立がん研究センターに設置)に送付する → (2)C-CATで、送付されたデータを「がんゲノム情報のデータベース」(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験などの情報を整理する → (3)がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CATからの情報を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療を提供する―という【がんゲノム医療】の実施が始まり、充実・拡大が図られています。
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ1 190527

がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議2 190308
 
ただし、遺伝子パネル検査により有効な抗がん剤が見つかる可能性は現時点では1割弱にとどまっており(関連記事はこちら)、また「有効な抗がん剤が見つかったものの、保険適応外(当該がん種への効能効果が薬事承認されていない)・未承認(本邦での使用が薬事承認されていない)であった」というケースも少なくありません。

適応外・未承認の医薬品を使用する場合「一連の治療すべてが自己負担」となるのが原則です(混合診療の禁止)が、患者負担が極めて重くなってしまうため、患者の経済的負担を軽減し、より円滑に「未承認・適応外の抗がん剤にアクセス」可能つる方法の1つとして「患者申出療養」制度が設けられています。

具体的には、2019年秋に8番目の患者申出療養として「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する『マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療』」が設けられました(関連記事はこちら)。

ところで、患者から「我が国では保険診療の中で実施できない●●技術を受けたい」との申し出があり、▼かかりつけ医との相談▼臨床研究中核病院への相談▼臨床研究中核病院における診療計画(プロトコル)作成―などを経て、国への申請が行われるまでには、少なくとも「数か月」かかってしまうのが実際です。

前例のない医療技術については原則6週間で保険外併用の可否を判断し、前例のある医療技術については原則2週間で「身近な医療機関での実施」の可否を判断する

前例のない医療技術については原則6週間で保険外併用の可否を判断し、前例のある医療技術については原則2週間で「身近な医療機関での実施」の可否を判断する


 
遺伝子パネル検査の対象は、現在「標準治療を終えた患者」であり、こうした数か月の手続き期間に容体が急変し、最悪の場合亡くなってしまう可能性もあり、通常の患者申出療養を活用したのでは「間に合わない」こともありうるのです。

そこで、▼事前に国立がん研究センターで、いわば『患者申出療養の計画』の雛形作成までを準備しておく▼多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする手続きを踏んでおく—ことで、実際に患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際、速やかにこの仕組みに沿って「未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できる」ような体制が整えられたのです(通常診療部分は医療保険を使って1-3割負担、未承認・適応外の医薬品費などは保険外の自己負担)。

「適応外の抗がん剤」治療で効果があると判明した患者が、一刻も早く患者申出療養を申請できるよう、臨床研究中核病院で「下準備」を進めておく

8番目の患者申出療養である、遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の概要1

8番目の患者申出療養である、遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の概要2



これまでに22種類の抗がん剤が(2種類の併用療法を含む)が(8)技術の対象となっており、遺伝子パネル検査で「適応外であるが、●●抗がん剤が奏効しそうだ」との結果が得られた場合に速やかに患者申出療養を活用して、当該「●●抗がん剤の使用」を可能とする体制が整えられています(ただし「メキニスト錠」について、予定症例数(50症例)に達したことから、新規登録を停止し、成果(安全性・有用性など)の分析に入った、関連記事はこちら)。

遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の対象薬剤(2022年9月26日時点)(患者申出療養評価会議2 230524)



このため(8)技術の対象抗がん剤が増加していくことに期待が集まっており、今般、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン社の協力によって、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん、FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍への効能効果が認められている「ペマジール錠4.5mg」(一般名:ペミガチニブ)が新たに(8)技術の対象薬剤に追加されました。

藁にも縋る思いのがん患者にとって、患者申出療養の対象薬剤(抗がん剤)が増加し、治療の選択肢が広がったことは大きな朗報と言えます。



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