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GemMed塾 看護モニタリング

オンライン初診では麻薬や抗がん剤、糖尿病薬などの処方不可、オンライン診療の情報を「過去の診療情報」と扱うことも不可—厚労省

2024.4.4.(木)

厚生労働省は4月1日に、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、オンライン診療指針)に関する新たなQ&Aを公表しました。

今般のQ&Aでは、患者の基礎疾患などを把握できない状況下での「オンライン初診」において、▼麻薬・向精神薬▼【薬剤管理指導料】の「1」の対象となる薬剤(例えば抗がん剤や糖尿病治療薬など)▼8日分以上の薬剤—の処方を行えないとしている理由を明示—。

さらに、「オンライン診療で得られた情報を、過去の診療情報として、次なるオンライン診療において、こうした薬剤を処方する」こともできない点なども明確にしています。

不適切な薬剤処方などを厳に慎み、適切なオンライン診療を行うことが強く求められます。

オンライン診療のみで、糖尿病治療薬を「ダイエット薬」などと称して処方する事例も

オンライン診療等は、保険診療での実施、自由診療での実施を問わず、厚労省の定めたオンライン診療指針を遵守して行うことが求められます。

通常の医師と患者が相対して実施される診療(対面診療)に比べて、「医師が得られる患者の情報が少ない」(触診などが行えない、患者状態を画面越しに行わなければならない)、「医師・患者の本人確認が難しい」(なりすましが可能となる)といった課題があり、安全性・有効性を担保するための指針が定められているのです。

こうした指針に沿ってオンライン診療の実例が積み重ねられる中、また、医学・医療、情報通信技術が進展する中で、新たな課題なども浮上し、オンライン診療指針そのもの、さらにその解釈にあたるQ&Aも逐次「見直し」が行われてきています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

さらに今般、次のような新たな解釈が追加されました。一部に「オンライン初診では認められていない麻薬処方などが行われている」、「オンライン診療で糖尿病治療薬をダイエット薬などと称して処方される事例が後を絶たない」点などを重視し、適切なオンライン診療実施を求めるものです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

【本人確認】について
▽「医師のなりすまし」が疑われる場合、例えば都道府県において「医師の本人証明や資格確認の方法が本指針に沿っていない」など、不適切な事例報告があった場合
→当該医療機関を管轄する保健所に対し「当該医療機関におけるオンライン診療の実態調査」をさせ、不適切な行為があれば「速やかな停止を勧告する」など必要な指導を行わせる
→指導を行っても改善がみられず、医師法第17条違反が疑われる悪質な場合には、刑事訴訟法第239条の規定に基づく告発を念頭に置きつつ、警察と適切な連携を図る

(医師法)(編集部で一部改変)
第17条 医師でなければ医業をなしてはならない

(刑事訴訟法)(編集部で一部改変)
第239条 (1)何人でも、犯罪があると思料するときは告発をすることができる
(2)官吏・公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発をしなければならない



【薬剤処方・管理】について
▽「基礎疾患等の情報が把握できていない患者」については、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等や、患者の症状と勘案して当該薬剤の処方に必要な医学的情報を、「過去の診療録、診療情報提供書、地域医療情報連携ネットワーク、お薬手帳、PHR等」により確認し、把握する必要がある

▽「オンライン初診の場合に麻薬や向精神薬(「麻薬及び向精神薬取締法」に指定する麻薬及・向精神薬)は処方できない」としているのは、以下の点を考慮したものである
▼麻薬・向精神薬については濫用等のおそれがあり、麻薬及び向精神薬取締法によりその取り扱いについて厳格に規制されている
▼こうした薬剤を希望する患者が、症状や服薬歴等について虚偽の申告を行う可能性がある
▼初診からオンライン診療を行う場合は、医師が得られる情報が「限られた時間の音声や映像に限定される」状況で、患者のなりすましや虚偽の申告による薬剤の濫用・転売のリスクを十分に抑制することが困難と考えられ、「申告に誤りなし」との前提で処方を行うことは適切でない
▼オンライン診療では、仮に医療機関が安易に処方を行う場合に、患者の所在地にかかわらず全国どこからでもアクセス可能となり、甚大な影響が生じ得る

▽オンライン初診を患者について、2度目以降もオンライン診療(再診)を行う場合、「初診の場合に制限されている薬剤」(上記「麻薬・向精神薬」のほか、基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する【薬剤管理指導料】の「1」の対象となる薬剤(例えば抗がん剤や糖尿病治療薬など)、基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方)は次のように考える
▼新型コロナウイルス感染症流行で初診からのオンライン診療を認めた「新型コロナウイルス感 染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」で示したものと同様の取り扱いとなる(関連記事はこちら
▼オンライン初診で処方できない医薬品(上記)については、初診をオンライン診療により実施し、2度目以降の診療(再診)もオンライン診療で実施した患者に対して処方を行う場合でも、「初診と同等に取り扱う」ことが妥当である(つまり、オンライン初診→オンライン再診となった場合でも麻薬や抗がん剤、糖尿病治療薬、8日分以上の薬剤処方などはできない)
→その趣旨は上記参照
▼「過去の診療録」には、「初診、2度目以降の診療(再診)を全てオンライン診療で実施した場合の診療録」は含まない(オンライン診療で得られた情報を「過去の診療録」として、その後のオンライン診療を「過去の診療録に基づくもの」と扱うことはできない)

▽オンライン初診において、「診療録等により患者の基礎疾患の情報が把握できない場合には、【薬剤管理指導料】の「1」の対象となる薬剤(例えば抗がん剤や糖尿病治療薬など)を処方できない」としているのは、以下の点を考慮したものである
▼電話や情報通信機器を用いた診療においては、「患者の基礎疾患の情報等の診断に必要な情報」が十分に得られないことがありうる
▼診療録等により患者の基礎疾患の情報が把握できない場合に、副作用等のリスクが高いと想定される上記医薬品の処方はその対象から除外する

▽オンライン初診において、「基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対し、8日間以上の処方を行わない」(7日間が上限)としているのは、以下の点を考慮したものである
▼オンライン診療では、「患者の基礎疾患の情報等の診断に必要な情報」が十分に得られないことがありうる
▼処方医による「一定の診察頻度を確保」して患者の観察を十分に行う必要がある



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