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DPC等含めた後発品割合は本年(2023年)1月末に82.0%へ低下!80%未達も8府県に増加してしまった!—協会けんぽ

2023.5.24.(水)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で本年(2023年)1月末には82.0%に低下してしまった。都道府県別に見ると、愛媛県が再び80%を割り込み、「80%未達」自治体は8府県に増加してしまった―。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会が5月22日に公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

協会けんぽ全体の後発品割合、調剤ベースで84.7%、全体で82.0%に低下

Gem Medで繰り返して報じているとおり、医療保険財政が厳しさを増しており、今後も増していきます。

例えば医療技術の高度化により、医療費の高騰が続きます。脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。

同時に、高齢化の進展による医療費高騰も続きます。ついに昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招きます。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は減少していきます(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)。

「減少する一方の支え手」で、「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならず、医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要となります。政府も、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます(2024年度から新たな医療費適正化計画がスタートする、関連記事はこちら)。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

今般公表された本年(2023年)1月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは84.7%で、前月から0.2ポイント低下していましました。昨年(2022年)10月分より「後発品割合の上昇」傾向がありましたが、再び「上昇にブレーキがかかった」格好です。一部後発品メーカーの不祥事に端を発する後発品の欠品・品薄などが時間の経過とともに拡大し「後発品使用推進にブレーキがかかっている」状況が続いています。もちろん時には「踊り場を抜け出している」状況も伺え、10月・11月・12月もそのように見えましたが、後発品使用割合は上昇・下降を繰り返していることも事実です。今後の状況を注視していくことが必要かつ重要です。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼2021年1月:80.3%▼2月:80.4%▼3月:80.4%▼4月:80.6%▼5月:80.6%▼6月:80.5%▼7月:80.0%▼8月:80.1%▼9月:80.0%▼10月:80.1%▼11月:80.4%▼12月:80.3%▼2022年1月:80.4%▼年2月:80.5%▼3月:80.4%▼4月:80.4%▼5月:80.4%▼6月:80.7%▼7月:80.8%▼8月:81.1%▼9月:80.9%▼10月:81.3%▼11月:81.8%▼12月:82.2%▼2023年1月:82.0%―となり、こちらも前月から「0.2ポイント低下してしまっている」ことが分かりました。

協会けんぽの後発品割合、昨年(2022年)12月から本年(2023年)1月にかけて低下してしまった(協会けんぽの後発品割合(2023年1月)1 230522)

愛媛県が再び80%未達成に、80%未満は8府県に増加

都道府県別に後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の89.5%(前月から0.3ポイント低下)、逆に最も低いのは徳島県で75.2%(同0.5ポイント低下)となっています。

徳島県を含めて、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは、▼奈良県:77.5%(前月から0.2ポイント低下)▼高知県:77.7%(同0.1ポイント上昇)▼和歌山県:78.3%(同0.1ポイント低下)▼京都府:78.9%(同0.1ポイント低下)▼香川県:79.1%(同0.3ポイント低下)▼大阪府:79.3%(同0.1ポイント低下)▼愛媛県:79.9%(同0.1ポイント低下)—の8府県に減少しました。

前月に「80%クリア」グループに入った愛媛県ですが、残念ながら再び「80%未達成」グループに戻ってしまいました。いずれの自治体でも「ある月には上昇するが、翌月には低下する」といった動きが続いており、一度「80%以上をクリア」できても、その後に安定して「80%以上を確保」できるようになるまでは少し時間がかかる点に留意が必要です。

後発品割合80%以上がクリアできていない自治体は、8府県に増加してしまった(協会けんぽの後発品割合(2023年1月)2 230522)



長引く「踊り場状態、横這い状態」の背景には、上述したように一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があります。2021年6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認されていますが、新目標値達成に向けて「後発品の供給不安」が重い足枷となっています。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が行われましたが、供給不安が続く中でどう効果が現れてくるのか、今後の動向を注視していく必要があります。

また、昨年末には医薬品供給不安が続く中での、臨時の診療報酬改定(後発品使用促進などを支える加算の時限的な引き上げ)が決定しています。

さらに、医薬品の供給不安解消に向けた議論も有識者検討会で進められています(関連記事はこちら)。

他方、今年度の中間年薬価改定では、医薬品安定供給に向けて「不採算となっている約1100品目について、不採算品再算定を行う」ことになりました(関連記事はこちらこちらこちら)。

こうした施策の効果が、いつ頃、どのように現れるのか、注目が集まります。



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2019年4月の後発品割合、数量ベース79.1%、医科等も含めると76.1%、「足踏み」続く―協会けんぽ
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2018年7月の後発品割合は76.2%に低下、「足踏み」となっていないか、今後の状況を注視―協会けんぽ
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2018年1月の後発品割合74.3%、70%未達は徳島、山梨など3県に減少―協会けんぽ
2017年12月の後発品割合72.7%、70%未達は徳島、山梨など4県に減少―協会けんぽ
2017年11月の後発品割合72.0%で前月から大幅増だが、さらなる注視が必要―協会けんぽ
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後発品割合67.5%に上昇したが、2016改定後に伸び率鈍化―協会けんぽ2016年7月
後発品使用割合67.3%、政府目標の70%まであと一歩―協会けんぽ2016年6月
後発品使用割合64.5%、毎月1ポイント上昇のペース続けば今夏にも70%に―協会けんぽ2016年2月
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後発品使用割合60%程度で足踏み状態、「17年央に70%」の目標達成に暗雲―協会けんぽ15年9月時点
協会けんぽの後発品使用割合は15年3月時点で60.4%、「17年央に70%以上」の目標値まで約10ポイントの開き

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