協会けんぽの「後発品割合」は足踏み状態から抜け出せず、期限内の目標クリアは厳しい―協会けんぽ
2020.10.26.(月)
協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、今年(2020年)に入ってから完全な足踏み状態に陥っており、医科・DPC・歯科分を加味した後発品割合は、現在のペースが続けば、政府目標の「80%以上」達成は2020年末となる見込みで、「2020年9月」の期限内達成は厳しい―。
こういった状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が10月14日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。
協会けんぽ全体の後発品割合(調剤分)、足踏み状態を抜け出せず
「医療技術の高度化(脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)の保険適用など)、「少子・高齢化の進展」(2022年度からは、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達する。2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少していく)などにより、我が国の医療保険財政は今後、厳しくなっていくことが強く予想されます。
また新型コロナウイルス感染症の影響で、医療費はマイナスに触れる可能性が高いものの、保険料収入の減少(失業や給与減など)も強く予想され、さらに「少子化がさらに進行する」可能性も高く、医療保険財政が厳しさを増す点には変化がないと考えられます。
こうした状況の下では、「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠です。政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。
このうち後発品に関しては、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標が設定され、全国で使用推進が行われています。
主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)では、かねてから積極的に後発品使用促進に取り組んでおり、例えば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています。
10月14日には、今年(2020年)6月末時点の後発品使用割合が公表され、調剤ベースで81.8%となっていることが分かりました。
協会けんぽ全体(日本全国)の後発品使用割合(新指標、調剤分)を見ると、▼今年(2020年)1月:81.6%▼2月:81.6%▼3月:81.6%▼4月:81.7%▼5月:81.6%▼6月:81.8%―となり、「足踏み状態」から抜け出せていません。この足踏みに新型コロナウイルス感染症が影響しているのかは、さらに長期的に見ていく必要があるでしょう。
「医科・DPC・歯科を加味した全体」の80%クリア、2020年9月の達成は困難
一方、調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼今年(2020年)1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%―となり、こちらも「足踏み状態」が続き、第2目標の達成には至っていないことを確認できます。
また、都道府県別に見ると依然として大きなバラつさきがあり、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の88.4%(5月末から0.5ポイント増)、逆に最も低いのは徳島県で70.4%(同0.2ポイント増)となっています。
沖縄県のほか、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合80%以上をクリアできているのは、▼岩手県の84.7%(5月末から0.1ポイント増)▼鹿児島県の84.0%(同0.1ポイント増)▼山形県の82.8%(同0.1ポイント増)▼宮城県の82.5%(同0.3ポイント増)▼島根県の81.8%(同0.3ポイント減)▼青森県の81.8%(同増減なし)▼宮崎県の81.6%(同0.1ポイント増)▼佐賀県の81.5%(同0.1ポイント増)▼福島県の81.3%(同0.6ポイント増)▼北海道の81.1%(同0.1ポイント増)▼熊本県の81.1%(同増減なし)▼秋田県の81.0%(同0.1ポイント増)▼新潟県の81.0%(同増減なし)▼長崎県の80.8%(同0.1ポイント減)▼長野県の80.7%(同0.2ポイント減)▼鳥取県の80.5%(同0.3ポイント増)▼富山県:80.0%(同0.1ポイント増)―の合計18道県となりました。富山県が80%クリア自治体に復帰しています。
「医科・DPC・歯科」を合わせると、「80%クリア」までには「まだ1.1ポイントの開き」があります。一昨年(2018年)12月末(75.3%)から今年(2020年)6月末(78.9%)まで、単純計算で「1か月当たり、ちょうど0.2ポイント」のペースで後発品割合が上昇している格好です(5月までと同じペース)。このペースが、今後も続くとすれば、計算上「80%以上クリア」は今年(2020年)末(前月までと同じペース)となり、「2020年9月に80%以上とする」との第2目標達成には依然として黄信号が灯っています。
こうした「足踏み」状態を脱することができるのか、今後の状況を注視する必要性がさらに強くなってきています。
協会けんぽでは、▼軽減額通知(お薬代の軽減可能額のお知らせ)対象を15歳以上に拡大する▼厚生労働省が定めた重点地域を中心に医療機関・保険薬局への訪問を強化する―という緊急対策を打ち出しており(関連記事はこちら)、これらの効果を検証するとともに、さらなる一手の検討も重要でしょう。
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