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協会けんぽの「後発品割合」使用は完全な足踏み状態、期限内の目標クリアに黄信号灯る―協会けんぽ

2020.9.18.(金)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、今年(2020年)に入ってから完全な足踏み状態に陥っている。医科・DPC・歯科分を加味した後発品割合は、現在のペースが続けば、政府目標の「80%以上」達成は2020年末となる見込みで、「2020年9月」の期限内達成には黄信号が灯っている―。

こういった状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が9月18日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

協会けんぽ全体の後発品割合、調剤分だけを見ても今年(2020年)1月から足踏み

「医療技術の高度化」(脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)の保険適用など)、「少子・高齢化の進展」(2022年度からは、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達する。2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少していく)などにより、我が国の医療保険財政は今後、厳しくなっていくことが強く予想されます。

また新型コロナウイルス感染症の影響で、医療費はマイナスに触れる可能性が高いものの、保険料収入の減少(失業や給与減など)も強く予想され、医療保険財政が厳しさを増す点そのものには変化がないと考えられます。

こうした状況の下では、「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠です。政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。

このうち後発品に関しては、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標が設定され、全国で使用推進が行われています。



主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)では、かねてから積極的に後発品使用促進に取り組んでおり、例えば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています。

9月18日には、今年(2020年)5月末時点の後発品使用割合が公表されました。

協会けんぽ全体(日本全国)の後発品使用割合(新指標、調剤分)を見ると、▼今年(2020年)1月:81.6%▼2月:81.6%▼3月:81.6%▼4月:81.7%▼5月:81.6%―となり、「足踏み状態」に陥っていることを確認できます。この足踏みに新型コロナウイルス感染症が影響しているのかは、さらに長期的に見ていく必要があるでしょう。

協会けんぽの後発品割合は、今年(2020年)に入ってから完全な足踏み状態となっている(協会けんぽの後発品割合1 200918)

「医科・DPC・歯科を加味した全体」の80%クリアは、2020年末になってしまう見込み

一方、調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼今年(2020年)1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%―となり、こちらも「足踏み状態」に陥り、第2目標の達成には至っていないことを確認できます。

また、都道府県別に見ると依然として大きなバラつきがあり、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の87.9%(3月末から0.6ポイント減、4月末から0.6ポイント減)、逆に最も低いのは徳島県で70.2%(同0.1ポイント・同0.4ポイント減)となっています。

沖縄県のほか、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合80%以上をクリアできているのは、▼岩手県の84.6%(4月末から0.2ポイント増)▼鹿児島県の83.9%(前月末から0.2ポイント減)▼山形県の82.7%(同増減なし)▼宮城県の82.2%(同0.2ポイント増)▼島根県の82.1%(同0.1ポイント増)▼青森県の81.8%(同0.3ポイント増)▼宮崎県の81.5%(同0.1ポイント増)▼佐賀県の81.4%(同増減なし)▼熊本県の81.1%(同0.2ポイント増)▼北海道の81.0%(同増減なし)▼新潟県の81.0%(同0.1ポイント減)▼秋田県の80.9%(同0.2ポイント減)▼長崎県の80.9%(同0.1ポイント増)▼福島県の80.7%(同0.3ポイント増)▼長野県の80.5%(同0.1ポイント減)▼鳥取県の80.2%(同0.2ポイント減)―の合計17道県となりました。4月には山口県・富山県・福岡県が80%をクリアしていましたが、5月にはドロップしてしまいました。

80%以上をクリアは17道県に減少してしまった(協会けんぽの後発品割合2 200918)



「医科・DPC・歯科」を合わせると、「80%クリア」までには依然として1.3ポイントの開きがあります。一昨年(2018年)12月末(75.3%)から今年(2020年)5月末(78.7%)まで、単純計算で「1か月当たり0.2ポイント」のペースで後発品割合が上昇している格好です(3月・4月までよりも0.03ポイント低いペース)。このペースが、今後も続くとすれば、計算上「80%以上クリア」は今年(2020年)末(前月までより3か月遅いペース)となり、「2020年9月に80%以上とする」との第2目標達成に黄信号が灯ってしまっています。



こうした「足踏み」状態を脱することができるのか、今後の状況を注視する必要性が強くなってきました。

協会けんぽでは、▼軽減額通知(お薬代の軽減可能額のお知らせ)対象を15歳以上に拡大する▼厚生労働省が定めた重点地域を中心に医療機関・保険薬局への訪問を強化する―という緊急対策を打ち出しており(関連記事はこちら)、この効果も検証することが重要です。



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