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DPC等含めた後発品割合は今年(2022年)7月に80.8%へ微増!東京・愛知・兵庫が80%をクリア!—協会けんぽ

2022.12.2.(金)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で今年(2022年)7月末には80.8%に上昇した。都道府県別に見ると80%以上の新目標値が未達成である都道府県は、前月から東京・愛知・兵庫の3都県が抜け、13府県となった―。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会が11月30日に公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。「後発品の供給不安」が続く中で、後発品使用割合を高める方策を各保険者が工夫していくことが重要です。

協会けんぽ全体の後発品割合、徐々にだが「踊り場状態」から抜け出している

医療技術の高度化により、医療費の高騰が続いています。例えば、脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。

同時に、高齢化の進展による医療費高騰も続いています。ついに今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめており、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招くのです。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は減少する(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)ことから、医療保険の制度基盤が極めて脆弱になってきています。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要です。政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

今般公表された今年(2022年)7月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは83.6%で、前月から0.1ポイント上昇しました。後発品メーカーの不祥事に端を発する後発品の欠品・品薄などにより「後発品使用推進にブレーキがかかっている」状況が続いていましたが、徐々にではあるものの、確実に「踊り場を抜け出している」状況が伺えます。ただし、「行きつ戻りつ」しており、今後の状況を注視していくことが必要かつ重要です。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼昨年(2021年)1月:80.3%▼2月:80.4%▼3月:80.4%▼4月:80.6%▼5月:80.6%▼6月:80.5%▼7月:80.0%▼8月:80.1%▼9月:80.0%▼10月:80.1%▼11月:80.4%▼12月:80.3%▼2022年1月:80.4%▼2022年2月:80.5%▼2022年3月:80.4%▼2022年4月:80.4%▼2022年5月:80.4%▼2022年6月:80.7%▼2022年7月:80.8%―となり、こちらも「徐々に踊り場から抜け出している」状況が伺えます。

協会けんぽの後発品割合、今年(2022年)6 月から7月にかけて微増となった(協会けんぽの後発品割合(2022年7月)1 221130)

後発品割合80%の未達たった東京・愛知・兵庫の3都県、ついに80%をクリア

もっとも都道府県別に後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の88.6%(前月から0.5ポイント低下)、逆に最も低いのは徳島県で73.4%(同0.2ポイント低下)となっています。

徳島県を含めて、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは、▼高知県:75.8%(同0.8ポイント低下)▼奈良県:75.9%(前月から増減なし)▼和歌山県:76.6%(同0.2ポイント上昇)▼京都府:77.5%(同増減なし)▼香川県:77.7%(同0.3ポイント上昇)▼愛媛県:78.1%(同0.1ポイント低下)▼大阪府:78.2%(同0.4ポイント上昇)▼福井県:78.9%(同0.4ポイント低下)▼広島県:79.2%(同0.2ポイント上昇)▼岡山県:79.2%(同0.1ポイント低下)▼三重県:79.6%(同0.2ポイント上昇)▼岐阜県:79.8%(同0.1ポイント上昇)—の13都府県となりました。

前月まで80%未達であった、▼東京都:80.1%(同0.4ポイント上昇)▼愛知県:80.1%(同0.3ポイント上昇)▼兵庫県:80.1%(同0.2ポイント上昇)—の3都県が「80%」をクリアできました。ただし、どの自治体でも「ある月には上昇するが、翌月には低下する」といった動きが続いており、一度「80%以上をクリア」できても、その後に安定して「80%以上を確保」できるようになるまでは少し時間がかかるようです。

後発品割合80%以上がクリアできていないのは、東京都や愛知県などが抜け13府県になった(協会けんぽの後発品割合(2022年7月)2 221130)



長引く「踊り場状態」の背景には、一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があります。昨年(2021年)6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認されています。この新目標値達成に向かう中で、「後発品の供給不安」が重い足枷となっています。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が行われましたが、供給不安が続く中でどう効果が現れてくるのか、今後の動向を注視していく必要があります。また、供給不安解消も議論する有識者検討会が始まっており、こちらの論議にも注目が集まります(関連記事はこちら)。



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