2021年2月の協会けんぽの後発品割合は80.4%だが、後発品使用促進策を継続しなければ再び低下してしまう点に留意―協会けんぽ
2021.6.18.(金)
協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で、政府目標の「80%以上」を前月に続き維持しており、今年(2021年)2月末には80.4%となっている―。
都道府県別に見ると、「80%以上」クリアが28道県と多数を占めているが、後発品使用促進に向けた努力を継続しなければ、再び「80%未満」に落ち込んでしまう―。
こういった状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が6月16日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。後発品メーカーの不祥事による「後発品への信頼低下」が生じていないか、注視していく必要があります。
協会けんぽ全体の後発品割合(調剤分)、今年(2021年)2月には83.2%
医療技術の高度化(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などといった超高額薬剤の保険適用など)が進み、医療費の増加を招いています。さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場しています。
他方、少子・高齢化もとどまるところを知りません。2022年度からは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。2025年度から2040年度にかけては、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、現役世代人口が急速に減少していくことが明らかになっています。
高齢化の進展は「医療費増」に結びつき、少子化は「支え手の減少」を意味するため、我が国の医療保険財政は今後、厳しさを増していきます。なお、新型コロナウイルス感染症の影響で医療費は一時的に減少しますが、保険料収入の減少(失業や給与減など)がそれを上回り、さらに「少子化がさらに進行する」ことなどから(関連記事はこちらとこちら)、医療保険財政はますます厳しさを増していくことは確実です。
こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)ことが欠かせません。放置すれば医療保険制度が破綻しまうためです。そこで政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。
このうち後発品使用促進に関しては、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標が設定され、全国で使用推進が行われています。昨年(2020年)9月の後発品割合は日本全国で78.3%にとどまり、第2目標は「未達」に終わりました。
主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、かねてから積極的に後発品使用促進に取り組んでおり、例えば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています。
6月16日に公表された、今年(2021年)2月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは83.2%で、前月から0.1ポイント上昇したことが分かりました。昨秋から「8割台を安定してキープ」できています(前月の記事はこちら)。
一度80%をクリアできても、努力継続しなければ、再び80%を切ることも
調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼今年(2021年)1月:80.3%▼2月:80.4%―となり、昨年(2020年)末から「第2目標(80%以上)の達成」を維持できています。
ただし、都道府県別に見ると、依然としてバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の89.1%(前月から0.2ポイント上昇)、逆に最も低いのは徳島県で73.9%(同0.5ポイント上昇)となっています。
沖縄県のほか、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできているのは、▼鹿児島県の85.8%(前月から0.1ポイント上昇)▼岩手県の85.7%(同0.3ポイント上昇)▼山形県の84.3%(同0.7ポイント上昇)▼宮城県の83.8%(同0.2ポイント上昇)▼島根県の83.7%(同0.3ポイント上昇)▼宮崎県の83.2%(同0.1ポイント上昇)▼青森県の83.0%(同0.6ポイント上昇)▼佐賀県の82.8%(同0.2ポイント上昇)▼熊本県の82.7%(同0.3ポイント上昇)▼福島県の82.6%(同0.1ポイント上昇)▼新潟県の82.6%(同0.6ポイント上昇)▼長崎県の82.5%(同0.3ポイント上昇)▼秋田県の82.4%(同0.1ポイント上昇)▼山口県の82.2%(同0.5ポイント上昇)▼長野県の82.1%(同0.2ポイント上昇)▼鳥取県の82.1%(同増減なし)▼北海道の82.1%(同0.1ポイント上昇)▼富山県の81.8%(同0.3ポイント上昇)▼福岡県の81.4%(同0.2ポイント上昇)▼静岡県の81.4%(同0.3ポイント上昇)▼滋賀県の81.4%(同0.1ポイント上昇)▼群馬県の81.2%(同0.1ポイント上昇)▼千葉県の81.0%(同0.1ポイント上昇)▼栃木県:80.8%(同0.3ポイント上昇)▼埼玉県:80.7%(同0.2ポイント上昇)▼石川県:80.4%(同0.3ポイント上昇)▼大分県:80.3%(同0.2ポイント上昇)―の合計28道県となりました。山梨県は、79.4%に減少(前月からが0.8ポイント低下)してしまっています。
「医科・DPC・歯科」を合わせた医療費全体で見ても「後発品割合80%以上」を安定してクリアできています。各自治体支部の懸命な努力が実を結んだ形です。今後、新たな目標(後発品使用割合、期限)をどう設定していくのかにも注目する必要があるでしょう。協会けんぽでは、▼軽減額通知(お薬代の軽減可能額のお知らせ)対象を15歳以上に拡大する▼厚生労働省が定めた重点地域を中心に医療機関・保険薬局への訪問を強化する―という緊急対策を打ち出しています(関連記事はこちら)。これらの効果検証も重要です。
なお、一部の後発品メーカーの不祥事により「後発品への信頼低下→後発品割合の上昇阻害」が懸念されています。一度「80%以上」を達成できても、今回の山梨県のように、後発品使用促進の努力を継続しなければ、「80%」を割ってしまうこともあります。厚生労働省医政局の経済課長も、事態を重くみて公開の審議会(中央社会保険医療協議会総会)で「後発品の信頼回復に向けて、業界の再編を検討する必要性もある」と異例の踏み込んだ発言も行っています。今後の動向を注視していく必要があります。
【関連記事】
2021年1月の協会けんぽの後発品割合は80.3%だが、「後発品への信頼低下」が生じていないか注視を―協会けんぽ
協会けんぽの後発品割合は2020年12月にも「80%以上」を維持できたが、今後の動向を注視すべき―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」、2020年11月に、ついに「80%以上」を達成―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」、2021年1月末に「80%達成」をクリアできている可能性―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」、ようやく足踏みから脱せたか、80%達成は2021年2月末か―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」、依然として足踏み状態、80%達成は2021年3月末か―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」は足踏み状態から抜け出せず、期限内の目標クリアは厳しい―協会けんぽ
協会けんぽの「後発品割合」使用は完全な足踏み状態、期限内の目標クリアに黄信号灯る―協会けんぽ
協会けんぽの「医科・歯科・DPC・調剤含めた後発品割合」は78.7%で足踏み状態、期限内の目標クリアは可能か―協会けんぽ
協会けんぽの「医科・歯科・DPC・調剤含めた後発品割合」、80%以上達成は2020年8月の見込み―協会けんぽ
協会けんぽの後発品割合、調剤に医科やDPC含めた全体で2020年7月にも8割クリア見込み―協会けんぽ
協会けんぽの後発品割合、調剤ベースでは安定して8割台キープ、医科やDPC含めた全体では2020年8月に8割クリア見込み―協会けんぽ
2019年11月、医科やDPC含めた全体の後発品割合は78.0%、現行ペース続けば80%達成は2020年8月の見込み―協会けんぽ
2019年10月、後発品割合が調剤分でついに80%超えるが、医科やDPC含めた全体では77.4%―協会けんぽ
後発品割合80%達成に向け、医療機関等の訪問説明行い、薬剤費軽減通知対象も拡大―協会けんぽ
2019年9月の後発品割合、調剤に医科やDPC等含めると76.9%、80%クリアは2021年3月見込み―協会けんぽ
2019年8月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.6%、期限内の80%達成は依然困難―協会けんぽ
2019年7月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.5%、期限内の80%達成は難しい―協会けんぽ
2019年6月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%、期限内の80%達成は困難―協会けんぽ
2019年5月の後発品割合、医科やDPC等含めると76.3%で「80%達成」には時間かかる―協会けんぽ
2019年4月の後発品割合、数量ベース79.1%、医科等も含めると76.1%、「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年3月の後発品割合は78.9%、2019年に入ってからの「足踏み」続く―協会けんぽ
2019年2月の後発品割合は78.9%、前月から0.2ポイント低下―協会けんぽ
2019年1月の後発品割合は79.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など20道県―協会けんぽ
2018年11月の後発品割合は78.1%、80%クリアは沖縄・鹿児島など12県に増加―協会けんぽ
2018年10月の後発品割合は77.5%、80%クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城・佐賀・長野の8県―協会けんぽ
2018年9月の後発品割合は76.9%、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手・宮崎・山形・宮城の6県に増加―協会けんぽ
2018年8月の後発品割合は76.5%と再上昇、80%以上クリアは沖縄・鹿児島・岩手で変わらず―協会けんぽ
2018年7月の後発品割合は76.2%に低下、「足踏み」となっていないか、今後の状況を注視―協会けんぽ
2018年6月の後発品割合は76.3%、徳島県のみ「70%」に到達せず―協会けんぽ
2018年5月の後発品割合は76.0%、都道府県別の最高は沖縄の85.9%―協会けんぽ
2018年3月の後発品割合75.0%、80%以上の自治体は沖縄・鹿児島・岩手の3県―協会けんぽ
2018年2月の後発品割合74.6%、都道府県別では沖縄の84.3%が最高―協会けんぽ
2018年1月の後発品割合74.3%、70%未達は徳島、山梨など3県に減少―協会けんぽ
2017年12月の後発品割合72.7%、70%未達は徳島、山梨など4県に減少―協会けんぽ
2017年11月の後発品割合72.0%で前月から大幅増だが、さらなる注視が必要―協会けんぽ
2017年10月の後発品割合71.1%、「伸び悩み」から脱せず―協会けんぽ
2017年9月の後発品割合71.2%、上昇傾向だが「80%以上」に向けて強力な対策必要―協会けんぽ
診療報酬ネットマイナス改定で収支920億円改善―協会けんぽ
2017年7月の後発品割合70.1%、前月から0.8ポイントもダウン―協会けんぽ
2017年6月の後発品割合70.9%、第1目標クリアするも深刻な伸び悩み―協会けんぽ
2017年5月の後発品割合70.7%、第1目標クリアするも、依然伸び悩み―協会けんぽ
2017年4月の後発品割合70.6%だが伸び悩み、第2目標「80%以上」にどう取り組むか―協会けんぽ
2017年2月の後発品割合は前月から0.1ポイント下がり70.5%、頭打ちか―協会けんぽ
2017年1月の後発品割合70.6%、32道県で70%クリア―協会けんぽ
2016年12月の後発品割合69.8%、次のターゲットは「80%以上」の第2目標に―協会けんぽ
2016年11月の後発品割合69.4%、政府目標70%達成はすでに達成か―協会けんぽ
後発品割合68.8%、政府目標の70%までわずか1.2ポイントに迫る―協会けんぽ2016年10月
後発品割合は68.3%に上昇、増加ペースが維持されれば2017年3月に70%超―協会けんぽ2016年9月
後発品割合67.5%に上昇したが、2016改定後に伸び率鈍化―協会けんぽ2016年7月
後発品使用割合67.3%、政府目標の70%まであと一歩―協会けんぽ2016年6月
後発品使用割合64.5%、毎月1ポイント上昇のペース続けば今夏にも70%に―協会けんぽ2016年2月
後発品使用割合61.4%、「17年央に70%」の目標は達成可能か―協会けんぽ15年10月時点
後発品使用割合60%程度で足踏み状態、「17年央に70%」の目標達成に暗雲―協会けんぽ15年9月時点
協会けんぽの後発品使用割合は15年3月時点で60.4%、「17年央に70%以上」の目標値まで約10ポイントの開き
2017年、健保組合全体で後発品割合は70%を概ねクリア—健保連
保湿剤のヒルドイド、一部に「極めて大量に処方される」ケースも―中医協総会(3)
長期収載品から後発品への置き換え促進、新薬創出等加算などとセットで議論すべき—中医協・薬価専門部会
後発品の薬価、現在3区分の価格帯をさらに集約していくべきか—中医協・薬価専門部会
後発品割合80%の目標達成に向け、処方箋の「変更不可」欄は廃止すべきか―中医協総会(2)
地域の保険者協議会と後発品協議会が連携し、後発品の更なる使用促進を―厚労省
脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」を保険適用、患者1人当たり1億6707万円―中医協総会(2)
画期的な白血病治療薬「キムリア」を保険収載、薬価は3349万円―中医協総会(1)
2018年度の医療費、前年度比0.8%と低水準の伸びだが、改定影響除外すれば例年並み―厚労省
新型コロナによる妊娠届出数の減少が8月以降も続く、少子化に拍車かかること必至—厚労省
新型コロナで妊娠の届け出が激減(5月は17%減)、少子化に拍車の恐れ—厚労省