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DPC等含めた後発品割合80.3%、80%未達は東京都など19都府県、「踊り場」状態続く―協会けんぽ

2022.4.13.(水)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で昨年(2021年)12月末には80.3%で、前月からわずかながら減少してしまった―。

都道府県別に見ると「19都府県」において80%以上の新目標値が未達成である(前月より1県増加)―。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会が4月11日に公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。「後発品の供給不安」が続く中で、後発品使用割合が今後どう推移していくのか注目する必要があります。

協会けんぽ全体の後発品割合、「踊り場」状態から抜け出せず

医療技術の高度化が進んでいます。例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場しています。

また、少子高齢化も進展を続けています。ついに今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。その後2040年度にかけては、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、現役世代人口が急速に減少することが分かっています。

このように医療技術の高度化・高齢化により医療費は膨張する一方で、支え手となる現役世代人口が減少するため、医療保険の制度基盤が非常に脆弱になってきます。そこで「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要になってくるのです。

政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

4月11日に公表された昨年(2021年)12月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは82.9%で、前月から0.1ポイント減少しました。後発品メーカーの不祥事、それに伴う後発品の欠品などにより「後発品使用推進にブレーキがかかっている状況から抜け出せた」とは言えないようです。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼昨年(2021年)1月:80.3%▼2月:80.4%▼3月:80.4%▼4月:80.6%▼5月:80.6%▼6月:80.5%▼7月:80.0%▼8月:80.1%▼9月:80.0%▼10月:80.1%▼11月:80.4%▼12月:80.3%―となりました。こちらも「踊り場状態から脱した」とは言えないようです。

協会けんぽの後発品割合、11月から12月にかけて再び悪化した(協会けんぽの後発品割合(2021年12月)1 220411)

後発品割合80%の未達、東京都や大阪府など19都府県に増加

また都道府県別の後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の89.0%(前月から0.1ポイント上昇)、逆に最も低いのは徳島県で73.9%(同0.1ポイント低下)となっています。

徳島県を含めて、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは、▼奈良県:75.5%(前月から0.3ポイント低下)▼和歌山県:76.1%(同0.5ポイント低下)▼高知県:76.4%(同0.2ポイント上昇)▼京都府:76.7%(同0.1ポイント低下)▼大阪府:77.3%(同0.1ポイント低下)▼香川県:77.7%(同0.1ポイント上昇)▼愛媛県:77.7%(同0.1ポイント低下)▼広島県:78.7%(同0.2ポイント低下)▼三重県:79.0%(同0.4ポイント低下)▼東京都:79.0%(同0.1ポイント低下)▼岐阜県:79.2%(同0.2ポイント低下)▼岡山県:79.3%(同増減なし)▼福井県:79.3%(同増減なし)▼愛知県:79.5%(同0.1ポイント低下)▼茨城県:79.5%(同増減なし)▼神奈川県:79.5%(同0.2ポイント低下)▼兵庫県:79.6%(同増減なし)▼石川県:79.9%(同0.2ポイント低下)―の19都府県となりました。石川県が再び80%未満に仲間入りしてしまっています。

後発品割合80%以上がクリアできていないのは、東京都や大阪府など19都府県(協会けんぽの後発品割合(2021年12月)2 220411)



こうした「踊り場状態」の背景には、一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があり、その状態は解消されていません。昨年(2021年)6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認されています。この新目標値達成に向かう中で、「後発品の供給不安」は重い足枷になります。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が行われますが、供給不安が続く中でどう効果が現れてくるのか、今後の動向を注視していく必要があります。



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