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2018年8月から、高所得の高齢者で医療・介護の自己負担引き上げ―厚労省

2018.6.14.(木)

 この8月(2018年)8月より、所得の高い高齢者において▼医療保険の高額療養費自己負担限度額▼介護保険の自己負担割合―の引き上げが行われます。

 厚生労働省は、患者・利用者にも理解しやすい平易な言葉による資料も準備しています。医療・介護現場でもトラブル防止のために、患者・利用者に十分に説明するとともに、これらを積極的に活用し、理解を促すことが重要でしょう(高額療養費見直しに関する厚労省のサイトはこちら、周知用のポスターはこちら、リーフレットはこちら、介護保険の自己負担見直しに関するリーフレットはこちら)。

70歳以上で所得の高い高齢者について、高額療養費の自己負担上限を引き上げ

▼高齢化の進展▼医学・医療の進歩▼介護保険制度の普及―などさまざまな要因で、医療費・介護費が膨らんでいます。その一方で、少子化の進行に伴って、高齢者を支える現役世代が減少しており、医療保険・介護保険の財政が厳しさを増しています。

このため、「そもそもの医療費・介護費膨張を抑えるための健康づくり、介護予防施策の充実」などに取り組むことが求められると同時に、「負担の公平」、とくに「世代間の負担の公平」の確保が重視されてきています。この観点から、高齢者にも「負担能力に見当たった負担」を求めることとなり、今年(2018年)8月から(1)高額療養費の自己負担上限(2)介護保険の利用者負担―の2点を見直すことになったのです。

まず(1)の高額療養費については、70歳以上高齢者における「自己負担上限額」が▼2017年8月から▼2018年8月から―の2段階に分けて引き上げられることになりました。第1段階の引き上げはすでに実施されています(関連記事はこちら)。

【2017年8月からの2018年7月まで】(現行制度)
▼現役並み所得者(年収約370万円以上:標準報酬28万円以上、課税所得145万円以上)では、外来における自己負担上限額(外来特例)を従前の4万4400円から「5万7600円」に引き上げる

▼一般所得者(年収約156-約370万円:標準報酬26万円以下、課税所得145万円未満)では、外来特例を従前の1万2000円から「1万4000円」に引き上げる(あわせて年間14万4000円の上限額を設ける)とともに、入院・外来を通じた1か月ごとの上限額を従前の4万4400円から「5万7600円」に引き上げる

▼一般所得者では、1か月ごとの上限額引き上げに伴い、「直近12か月以内に3回以上、自己負担額が5万7600円に達した場合には、4回目から上限額を『4万4400円』とする」という多数回該当の仕組みを導入する

▼低所得者(住民税非課税世帯)では、従前からの引き上げなし

今年(2017年)8月から70歳以上高齢者の高額療養費制度が一部見直される(第1段階見直し)

今年(2017年)8月から70歳以上高齢者の高額療養費制度が一部見直される(第1段階見直し)

 
【2018年8月からの見直しポイント】
▼現役並み所得者について「外来特例」を廃止し、入院・外来をあわせた「所得に応じた自己負担上限」を次のように設定する
●年収約1160万円以上(標準報酬月額83万円以上、課税所得690万円以上):25万2600円+(医療費-84万2000)×1%(多数回該当では上限額は14万100円)
●年収約770-1160万円(標準報酬月額53-79万円、課税所得380万円以上):16万7400円+(医療費-55万8000)×1%(多数回該当では上限額は9万3000円)
●年収約370-770万円(標準報酬月額28-50万円、課税所得145万円以上):8万100円+(医療費-26万7000)×1%(多数回該当では上限額は4万4400円)

▼一般所得者について、「外来特例」を1万4000円から「1万8000円」に引き上げるが、年間上限額は「14万4000円」で据え置く

所得の高い高齢者(現役並み所得、一般所得)では、2018年8月から高額療養費の自己負担上限額が引き上げられる

所得の高い高齢者(現役並み所得、一般所得)では、2018年8月から高額療養費の自己負担上限額が引き上げられる

 

介護保険の自己負担、年金収入等340万円以上の場合には3割に引き上げ

 (2)の介護保険自己負担は、通常「1割負担」ですが、2015年7月より「一定所得以上(年金収入のみの場合は280万円以上)の人では2割負担」とされました。さらに2017年の介護保険法改正で、「特に所得の高い高齢者」について「3割負担」を導入することになったものです(関連記事はこちら)。

 これらも「負担能力に応じた負担を求める」という観点からの見直しで、この8月(2018年8月)から介護保険の自己負担割合は、次のように3段階となります。また介護保険料を適切に納めない場合、自己負担割合は1割・2割の人は「3割」に、3割の人は「4割」にそれぞれ引き上げられますので、でご留意ください(関連記事はこちら)。

▼合計所得金額が220万円以上で、「年金収入+その他合計所得金額が340万円以上」(単身世帯)または「年金収入+その他合計所得金額が463万円以上」(夫婦世帯):3割

▼合計所得金額160万円以上で、「年金収入+その他合計所得金額が280万円以上」(単身世帯)または「年金収入+その他合計所得金額が346万円以上」(夫婦世帯):2割

▼通常(上記以外):1割

年金収入等が340万円以上などの高所得な高齢者では、2018年8月から介護保険の自己負担割合が3割に引き上げられる

年金収入等が340万円以上などの高所得な高齢者では、2018年8月から介護保険の自己負担割合が3割に引き上げられる

 
 この見直しにより「年金収入等が340万円以上の場合、自己負担が1.5倍になる」とも思われますが、介護保険制度にも暦月1か月当たりの自己負担額が過大にならないよう「高額介護サービス費」が設けられているため、実際に1か月当たりの自己負担が増える人は限定的です(厚労省は、介護サービス受給者の3%程度、現在の2割負担者の26.7%程度と見込んでいる)。
高所得者の介護サービス利用者負担を、来年(2018年)8月から3割に引き上げるが、実際に負担額が引き上げられる人はごくごく限られる

高所得者の介護サービス利用者負担を、来年(2018年)8月から3割に引き上げるが、実際に負担額が引き上げられる人はごくごく限られる

 なお、医療保険・介護保険制度の財政状況は依然厳しく、今後、「世代間の公平」確保にとどまらず、「国民全体での負担増」が必要になってきます(関連記事はこちらこちら)。医療費・介護費は、国民全体で負担している(保険料、税(公費)、自己負担)点に鑑み、サービス提供(裏を返せばサービス受給)、報酬請求などさまざまな場面で「適正性」を確保することがこれまで以上に求められます(不要なサービス受給・提供をしないなど)。
 
 
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