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GemMed塾 看護モニタリング

健保組合「新生物医療費」のシェア拡大続く、1入院当たり医療費が高いのは男女とも白血病―健保連

2020.1.23.(木)

健康保険組合の医療費総額(3兆4827億円)のうち、11.4%はがんを含む新生物が占めており、このシェアは年々増大している。新生物の種別に見ると、良性腫瘍やその他のがんが多いが、次いで「乳がん」「気管・肺がん」「結腸がん」「胃がん」「白血病」などの順となっている。また、がんの種別に1入院当たり医療費を推計すると、男女ともに「白血病」が最も高く140万円程度となっている―。

健康保険組合連合会が1月20日に公表した2017年度の「新生物の動向に関する調査分析」から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

がん医療費のシェア、2014年度以降増大を続け、2017年度には11.4%に

がんは我が国の死因第1位を独走しており、結果として医療費に占める割合も高くなってきています。国は、我が国のがん対策のベースとなる「がん対策推進基本計画」を定め(現在、第3期計画を推進中)、生活習慣の改善による予防や検診受診による早期発見・早期治療や、医療・生活支援の充実などを進めています。健保連では、医療費の視点でがんを含む新生物医療について分析しています。

今回の調査は、1280の健康保険組合(主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険)の加入者2782万6260人のレセプトデータ(2017年度、(2億7403万2250件)件)をもとに、(1)胃がん(2)結腸がん(3)直腸がん(4)肝・肝内胆管がん(5)気管・肺がん(6)乳がん(7)子宮がん(8)悪性リンパ腫(9)白血病(10)その他のがん(11)良性・その他の新生物―の状況を調べたものです。



1280健保組合の2017年度医療費総額(医科+調剤)は約3兆4827億円。疾患別のシェアを見ると、▼呼吸系疾患:16.0%(前年度から0.2ポイント増)▼新生物:11.4%(同0.2ポイント増)▼循環器系疾患:10.4%(同0.1ポイント増)▼内分泌、栄養・代謝疾患:9.4%(同0.3ポイント増)▼消化器系疾患:7.2%(同0.1ポイント増)▼筋骨格系・結合組織疾患:6.5%(同0.3ポイント増)—などが大きくなっています。上位疾患のシェアが増加しており、「疾患の集中」傾向が伺えます。

健保組合医療費のシェア(2017年度健保連新生物医療費1 200120)



新生物の医療費は、呼吸系疾患に次ぐ「第2位」ですが、▼2014年度:10.5% →(0.3ポイント増)→ ▼2015年度:10.8% →(0.4ポイント増)→ ▼2016年度:11.2% →(0.2ポイント増)→ ▼2017年度:11.4%—とシェアが拡大してきています。画期的ながら極めて高額な抗がん剤等(2019年6月には白血病等治療薬「キムリア点滴静注」が保険適用され3349万円の薬価が設定された)の相次ぐ登場も強い追い風となり、がんを含む新生物医療費はますます増加していくと考えられます。

新生物医療費の内訳、その他がん28%、良性腫瘍21%、乳がん14%などでシェア高い

2017年度の新生物医療費について、新生物の種別(上述(1)-(11))のシェアを見ると、▼(10)その他のがん:28.3%▼(11)良性・その他の新生物:21.0%▼(6)乳がん:13.7%▼(5)気管・肺がん:7.1%▼(2)結腸がん:6.2%▼(1)胃がん:6.0%▼(9)白血病:5.0%▼(3)直腸がん:3.9%▼(8)悪性リンパ腫:3.6%▼(7)子宮がん:3.1%▼(4)肝・肝内胆管がん:2.0%―となりました。

新生物医療費のシェア(2017年度健保連新生物医療費2 200120)



Gem Medでも何度かお伝えしていますが、医療費を考えるに当たっては3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解することが有用です(逆に言えば、3要素を掛け合わせたものが医療費となる)。

まず「受診率」(1000人当たりの件数)について見てみると、男性では▼(10)その他の悪性新生物:101.8▼(11)良性・その他の新生物:85.7▼(2)結腸がん:39.8▼(1)胃がん:34.4―などが、女性では▼(11)良性・その他の新生物:275.9▼(10)その他の悪性新生物:94.9▼(6)乳がん:69.2▼(7)子宮がん:48.9―などが高くなっています。受診率は「医療機関に係る頻度」を示す指標で、こうした新生物患者に対しては、生活習慣改善など「予防」に力を入れることがまず重要です。

次に「1件当たり日数」を見てみると、男性では▼(9)白血病:3.4日▼(8)悪性リンパ腫:2.9日▼(3)直腸がん:2.6日▼(5)気管・肺がん:2.5日―などが、女性では▼(9)白血病:3.3日▼(3)直腸がん:2.6日▼(8)悪性リンパ腫:2.6日▼(5)気管・肺がん:2.3日▼(10)その他のがん:2.3日―などが長くなっています。1件当たり日数は、入院期間(在院日数)や外来受診延べ日数を示す指標で、こうした新生物に対しては、医療機関における「外来での検査実施」などを進め、在院日数短縮に取り組むことが医療費適正化に向けて重要となります。

さらに「1日当たり医療費」を見てみると、男性では▼(9)白血病:5万4969円▼(3)直腸がん:3万6963円▼(5)気管・肺がん:2万4133円▼(8)悪性リンパ腫:2万3460円―などが、女性では▼(9)白血病:3万7881円▼(3)直腸がん:3万2820円▼(6)乳がん:2万9467円▼(5)気管・肺がん:2万2927円―などが高くなっています。1日当たり医療費は、名称どおり「単価」を意味します。医療費適正化の観点では、例えば「後発品」使用の推進などが考えられますが、「がん医療」の特性を踏まえた検討が求められるでしょう。

新生物の種類別に見た3要素分析・男性(2017年度健保連新生物医療費3 200120)

新生物の種類別に見た3要素分析・女性(2017年度健保連新生物医療費4 200120)



これらを総合すると、乳がんでは、「受診率が高く(つまり罹患者が多い)、1日当たり医療費が高い」ことが医療費の高さの要因となっています。例えば、乳がんについて、より詳しく「ステージ別の医療費等分析、医療内容(手術や化学療法、放射線療法など)分析」などをしていくことが必要でしょう。

なお、新生物の種別に1入院当たり医療費(推計)を見てみると、男性では▼(9)白血病:135万229円▼(8)悪性リンパ腫:90万9673円▼(3)直腸がん:65万7828円▼(5)気管・肺がん:54万1330円―など、女性では▼(9)白血病:139万7581円▼(8)悪性リンパ腫:85万2738円▼(3)直腸がん:68万3163円―などとなっています。

がんの種類によって、年齢階級別の受診者割合に異なる特性

次に、新生物の種別に「年齢階級別の受診者数(月平均)」の状況(構成割合)を見てみましょう。

11の新生物合計では、「45-49歳」が最多で、次いで「50-54歳」、「55-59歳」となっていますが、新生物の種別に見てみると次のような特徴のあることが分かります。

新生物患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費5 200120)



【胃がん】
▼70-74歳:1.84%(加入者に占める受診者割合、以下同)▼65-69歳:1.28%▼60-64歳:0.92%―など、年齢が上がるにつれて受診者の割合が増加する

胃がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費6 200120)



【結腸がん】
▼70-74歳:1.80%▼65-69歳:1.28%▼60-64歳:0.96%―など、年齢が上がるにつれて受診者の割合が増加する

結腸がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費7 200120)



【直腸がん】
▼70-74歳:0.33%▼65-69歳:0.25%▼60-64歳:0.11%―と、年齢が上がるにつれて、極めて緩やかに受診者の割合が増加する

直腸がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費8 200120)



【肝・肝内胆管がん】
▼70-74歳:0.59%▼65-69歳:0.44%▼50-64歳:0.34%―と、年齢が上がるにつれて、緩やかに受診者の割合が増加する

肝・肝内胆管がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費9 200120)



【気管・肺がん】
▼70-74歳:1.20%▼65-69歳:0.79%▼50-64歳:0.54%―など、年齢が上がるにつれて受診者の割合が増加する

気管・肺がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費10 200120)



【乳がん】
50歳代以降、0.6-07程度で横ばいとなる

乳がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費11 200120)



【子宮がん】
▼45-49歳:0.41%▼50-54歳:0.40―がピークで、その後、緩やかに減少していく

子宮がん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費12 200120)



【悪性リンパ腫】
▼70-74歳:0.37%▼65-69歳:0.27%▼50-64歳:0.21%―と、年齢が上がるにつれて、緩やかに受診者の割合が増加する

悪性リンパ腫患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費13 200120)



【白血病】
▼70-74歳:0.12%▼65-69歳:0.10%▼60-64歳:0.07%―と、年齢が上がるにつれて、極めて緩やかに受診者の割合が増加する

白血病患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費14 200120)



【その他のがん】
▼70-74歳:5.77%▼65-69歳:3.97%▼60-64歳:2.74%―と、高齢期において、受診者の割合が急激に増加する

その他のがん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費15 200120)



【良性・その他の新生物】
40歳代後半から、増減を繰り返しながら緩やかに増加する

良性腫瘍、その他のがん患者の年齢階層別シェア(2017年度健保連新生物医療費16 200120)

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