新型コロナの重症患者増加見据え、臨時特例的に人工呼吸器の単回使用構成品の「再使用」可能に―厚労省
2020.4.21.(火)
新型コロナウイルス感染症の重症患者が増加に伴い、人工呼吸器のニーズが高まっている。都道府県と医療現場、医療機器販売業者等が連携して人工呼吸器を確保するとともに、臨時特例的な措置として「単回使用となっている構成品や付属器具などを洗浄・滅菌して再使用する」ことを認める―。
厚生労働省は4月15日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の患者数増加に備えた人工呼吸器の十分な確保について(依頼)」(以下、事務連絡A)を、16日には「新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた製造販売業者における人工呼吸器の単回使用構成品の例外的取扱いについて」(以下、事務連絡B)を示し、都道府県や医療現場に協力を求めました。
製造販売業者から、「洗浄・滅菌による再使用」方法を医療機関に情報提供
新型コロナウイルスの猛威はとどまるところを知らず、我が国でも感染患者が急増しています。厚労省は、これまでのデータから「感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっている」ことを明らかにしており、感染患者数の増加は「人工呼吸器による呼吸管理や、集中治療室での集中管理が必要な重症者等の増加」にもつながります。
こうした中では、まず「人工呼吸器の台数確保」が重要です。厚労省は事務連絡Aにおいて、各都道府県等で、▼重症患者の受け入れを行う医療機関等の状況を把握し、人工呼吸器が必要な患者に適切な医療提供がなされる体制を確保する▼地域の医師会および各販売業者等と相談の上、「必要な人工呼吸器の整備を要請する」など、感染者の大幅増加を見据えた人工呼吸器を確保する―ことを要請。あわせて、医療機器販売業者で在庫確保がなされている人工呼吸器の一覧を示すとともに、人工呼吸器整備に係る費用いついて「新型インフルエンザ等患者入院医療機関整備事業」による補助を活用することなどが可能な旨を明らかにしています。
ところで、人工呼吸器の使用に当たっては「呼吸回路」などの付属器具(以下、人工呼吸器単回使用構成品)を用いることになりますが、これらの中には「単回使用」(SUD、single use device)となっているものも少なくありません。感染防止をはじめとする「医療安全確保」のためです。
この点、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、人工呼吸器の付属器具等についてもニーズが急激に増加している状況を踏まえて、厚労省は事務連絡Bにおいて「使用済の人工呼吸器単回使用構成品を、適切に▼洗浄▼滅菌—などして再使用する」ことを認めました。ただし、あくまで「新型コロナウイルスの感染者が増加している状況に鑑みた臨時的・特例的な対応」である点に留意が必要です。
人工呼吸器単回使用構成品の製造販売業者において、次のような流れで緊急的な再使用を検討し、再使用の方法等について医療機関へ情報提供等することになります。
▽製造販売業者は、人工呼吸器単回使用構成品の安定供給に支障が生じないよう、増産・輸入拡大等の措置に努め、安定供給に支障が生じる可能性がある場合には、速やかに厚労省医政局経済課まで連絡する
↓
▽人工呼吸器単回使用構成品の需給逼迫が懸念される場合、「緊急的な再使用に関する情報」を医療機関に提供することが可能となる
↓
▽「緊急的な再使用に関する情報」の提供に当たっては、関係学会のガイドラインまたは日本と同等の医療機器審査体制を有する外国当局の評価基準等を参考に、「どのような条件や手順を踏むことで、消毒、滅菌等の工程を経て、緊急的に再使用することが可能であるか」について検討を行う
↓
▽人工呼吸器単回使用構成品の需要が逼迫する際には、当該検討内容を速やかに厚労省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課に報告した上で、当該条件や手順を公表する
↓
▽人工呼吸器単回使用構成品に係る使用方法(再使用に当たっての条件を含む)について、医療機関へ十分に情報提供するとともに、市販後の安全性に係る情報収集を徹底し必要な報告を行う
上述のとおり、あくまで臨時特例的な対応であり、新型コロナウイルス感染症が終息するなどして事務連絡Bが廃止された後は、▼医療機関において人工呼吸器単回使用構成品の再使用は推奨されない▼製造販売事業者が再使用に関する情報を提供することは認められない―ことになります。
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