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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

「保健医療支出の伸びが、経済成長成率と乖離しない」ように社会保障制度改革を進めよ—財政審

2022.5.27.(金)

新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢などにより「危機が生じた場合でも、機動的に財政出動が可能となる」ように財政に余裕を持たせることの重要性・必要性が再認識された。財政を圧迫する要因の1つである社会保障についても改革を進め「保健医療支出の伸びが、経済成長成率と乖離しない」ようにしなければならない—。

例えば、医療費適正化計画に「地域医療構想の推進」を盛り込んだり、地域医療連携推進法人を普及し、eDRG(一連の治療を施設を跨いで包括評価する仕組み)による支払を導入したり、軽度者の介護サービスを地域支援事業に移行したりすることなどを積極的に検討していくべきである―。

財政制度等審議会が5月25日、こうした内容を盛り込んだ建議「歴史の転換点における財政運営」をとりまとめ、鈴木俊一財務大臣に提出しました(財務省のサイトはこちら)。

かかりつけ医以外を受診した場合、「療養と直接関係ないサービス」を活用してはどうか

医療保険制度、介護保険制度においては財源の25%が国費です。

▼医療技術の高度化(脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)の保険適用など)▼少子・高齢化の進展(2022年度からは、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達する。2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少していく)—などにより、医療費・介護費は増加します。

したがって、その25%に相当する国費支出も増加を続け、これが「国家財政を圧迫している」と強く指摘されています。そこで財政制度分科会では、「国家財政を健全化させる(端的に入りを増やし、出を抑える)ために、医療費や介護費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」方策の検討を進めているのです。

今般の建議でも社会保障改革に関する意見を述べており、医療・介護に関しては次のような項目が目を引きます。なお、現下の新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢を引き合いに、「危機においても様々なリスクに対して必要かつ持続可能な準備を行わなければならず、財政の対応余力を持っておく必要性がこれまで以上に高まっている」ことを強調し「社会保障改革(給付と負担のアンバランス是正)の必要性」を強く訴えています。

財政審が提言する社会保障改革の概要



(1)医療機関・医療従事者へのコロナ関係補助は少なくとも8兆円に上っており、国公立病院では「大幅黒字」、民間病院も「堅調な経営状況」となっている。今後は「医療機関への減収」(診療報酬での対応(概算払いなど)が望ましい)と「医療機能の強化」とを分けて考えていく必要がある

(2)公立病院の経営改善では、必要性の低い医療を実施する(例えば在院日数の延伸など)ことによる「医療費膨張」が生じ、医療費適正化と齟齬をきたしかねない点に留意する必要がある。都道府県医療費適正化計画に「公立病院の費用構造改善」を盛り込むことや、薬剤・医療材料等の共同購入等による経費節減、委託業務の効率化、人件費の抑制、地域医療連携推進法人の活用など具体的な取り組みを進めるべきである

(3)医療給付費に対する財政規律を強化するため、少なくとも「保健医療支出の伸びが、経済成長成率と乖離しない」ことを1つのメルクマールに据えるべきである

(4)医療費適正化計画にも「地域医療構想の推進」を必須事項として位置付けることを含め、「地域医療構想の法制上の位置づけ強化」や「地域医療構想調整会議の透明性向上」「都道府県知事の権限強化」などを図る必要がある

(5)地域医療連携推進法人の普及徹底(2022年1月1日時点で30法人の認定にとどまっている)とともに、「患者単位でエピソードを評価し、患者の転帰に際し地域医療連携推進法人に参加する複数の医療機関等に対し一体として包括報酬を支払う」仕組みを検討すべき
→いわゆる「eDRG」(一連の治療について医療機関を跨いだ包括報酬(外来での検査→入院→退院後の通院→再入院など、すべてを包括評価。「再入院」などによるコスト増を抑えるための「医療の質向上」が期待される)を支払う仕組み)の導入検討を求めるもの(関連記事はこちら

(6)「かかりつけ医」「かかりつけ医機能」(▼地域の医師、医療機関等と協力している▼休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している▼在宅医療を推進している—など)を補正上明確化し、「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を認定する仕組みを設ける。そのうえで「利用希望者による事前登録・医療情報登録」を促すなどの段階的な取り組みを進めていくべきである

(7)かかりつけ医以外への一般的な受診について生じる本人情報の取得・確認事務などについて「療養の給付と直接関係のないサービス等の費用」に位置付けることなどを幅広く検討すべき

(8)リフィル処方箋には「患者の利便性向上」「医師の負担軽減」「医薬分業の推進(医療機関の近くでなく、自宅近隣の薬局にかかればよくなる)」などの大きなメリットがあり、普及促進に向けた周知・広報、2022年度診療報酬改定の効果検証、積極的な取り組みを行う保険者へのインセンティブ措置による評価を進めるべきである

(9)将来的な「薬剤師過剰」を見据え、薬学部・薬科大学の入学定員抑制などを早急に検討し、対応策を実施すべきである

(10)薬価制度について、▼既存医薬品の保険給付範囲の見直し(薬剤の種類に応じた患者負担・保険給付の設定など)▼高額薬剤への対応(市場拡大再算定のルール強化など)▼費用対効果評価制度の拡大▼新薬の薬価算定の透明化・厳格化(新規性の乏しい新薬の薬価算定厳格化など)▼毎年度薬価改定の完全実施▼薬剤費総額にかかるマクロ経済スライドの導入検討—などを行うべきである
→「薬剤費総額にかかるマクロ経済スライド」とは、例えば▼X年度の薬剤費上限を「前年度からx%増の12兆円」などと設定する → ▼その際「画期的だが高額な薬剤」(画期的な抗がん剤など)が登場したために、その分、薬剤費が増加し「13兆円」になると予想された → ▼その場合、総薬剤費を12兆円に抑えるために、「1兆円」分、他の薬剤の薬価を引き下げる―といった仕組みである(薬剤費総額を一定の幅の中に抑える)

(11)医療費適正化計画(都道府県による、6年を一期とした「平均在院日数短縮」「糖尿病重症化予防」「後発品使用促進」「医薬品適正使用」などを盛り込んだ計画)について、▼各施策が「医療費を減少させる効果がある」か否かの検証(健康づくりなどは医療費膨張につながるとの研究結果もある)▼「地域医療構想の推進」を計画に位置付ける▼地域フォーミュラリ(地域における「この疾病には第1選択として●●薬剤を使用する」というルール)の策定、リフィル処方の推進、公立病院の費用構造改善を計画に盛り込む—ことなどを進めるべきである

(12)介護現場の業務負担軽減・人員配置の効率化を実現するために、ボット・AI(人工知能)・ICT(情報通信技術)等の実用化の推進や、タスクシフティング、シニア人材の活用推進、文書量削減など組織マネジメント改革などを進めていく必要がある

(13)介護事業においても「経営の大規模化・協働化」を図ることが不可欠である(「規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高い」など規模の利益が働き得ることも事実である)。規模の利益を活かすなど「効率的な運営」を行う事業所などをメルクマールに介護報酬を定めていくことも検討すべきである

(14)2024年度からの第9期介護保険事業(支援)計画に向けて、介護保険の利用者負担について「原則2割化」などを検討すべきである

(15)介護保険創設から20年を超え、サービス利用が定着してきたことを踏まえ、ケアマネジメント(居宅介護支援)にも利用者負担導入を行うべきである

(16)ケアマネジメント・ケアプラン作成の費用(介護報酬)について「福祉用具の貸与のみを行うケースについては報酬引き下げを行う:など、サービス内容に応じた報酬体系とすることも検討すべきである

(17)介護保険施設の室料相当額について、基本サービス費などからの除外を行うべきである

(18)区分支給限度基準額(在宅要介護者について、要介護度別に1か月の保険利用可能上限を定めている。超過分は自己負担となる)の対象外となっている加算(例えば、小規模多機能型居宅介護における、訪問サービス提供回数が多い場合の【訪問体制強化加算】など)について例外措置を見直すべきである(限度基準額の範囲内での給付を徹底すべき)

(19)要介護1・2の訪問介護・通所介護について、地域支援事業への移行を検討すべき(要支援者の訪問介護・通所介護は移行済)

(20)要支援者等、軽度者への訪問看護・訪問リハビリが大きく増加している。訪問サービスは「通院困難な者」へのサービスとなっているかの把握を行い、適正化を図るべきである



今後、制度設計を行う審議会(社会保障審議会の医療保険部会や介護保険部会)、報酬を設定する審議会(中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・介護給付費分科会)などで、こうした意見も踏まえながら改革案を練っていくことになります。重要な項目も含まれており、意見・提言の意図・趣旨を十分に汲むことが必要でしょう。



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