Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 ミニウェビナー DPC委員会のありかたとは?

2021年度から、医療機関等に外国語対応・妊産婦対応の状況報告求める―医療情報提供内容検討会(2)

2020.9.28.(月)

来夏(2021年夏)に予定される東京オリンピック・パラリンピックなどを睨み、医療機関等に「外国語対応」の状況報告を求める―。

妊産婦への診療を、産科・産婦人科以外の診療科でも積極的に行っているかどうか、医療機関に報告を求める―。

9月24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われています。

なお検討会では、医療機関が広告可能な項目の1つとして、「チーム医療や医師の働き方改革を推進するために、医師から『特定行為研修を修了した看護師』へタスク・シフティングを実施している場合に限定して、当該『特定行為研修を修了した看護師』が実施する業務内容」を追加してはどうか、との議論も行われており、別稿でお伝え済です。

患者・国民の医療機関選択に資するよう、全医療機関等に「機能の報告」を義務付けている

「医療機能情報提供制度」は、国民による医療機関の適切な選択をサポートすることを目指し、医療機関等(▼病院▼診療所▼歯科診療所▼助産所―)に対し、自院の持つ機能を毎年度、都道府県に報告することを義務付けるものです。都道府県は報告された情報を整理して、ホームページ上で公開しています(厚労省のサイトはこちら(各都道府県のホームページに飛ぶことができる))。



将来的に「全国統一システムに移行する」ことになっています(2021年度からサイト構築)が、現時点では各都道府県が公表内容に工夫を凝らしている状況です。

9月24日の検討会では、医療機関等から報告すべき事項について、次のような修正・追加を行う方向を議論しました。

(1)2020年度診療報酬改定に伴う報告項目の見直し
(2)新たな報告項目の追加・修正

まず(1)では、2020年度改定で【短期滞在手術等基本料】の対象手術が見直されたことを受けた見直しです。自院でどういった手術を実施しているか、実施可能かを報告することになります。

2020年度診療報酬改定を踏まえた医療機能情報報告制度の見直し(医療情報提供内容検討会(2)1 200924)

東京五輪等を睨み、通訳配置などの「外国語対応」状況の報告を求める

また(2)では、次のような見直しを行ってはどうかとの提案が厚労省からなされました。

(i)外国人患者受け入れ体制
(ii)病院の機能分類
(iii)受動喫煙を防止するための措置
(iv)産婦人科(産科)以外の診療科での妊産婦の診療に積極的な医療機関
(v)その他

このうち(i)(ii)は、例えば訪日外国人や在留外国人が医療機関を受診した際に「外国語での対応を行っているか」をどの程度行っているのかを明確にするものです。来夏(2021年夏)には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定され、多くの外国人旅行者が我が国を訪れる可能性があります。外国人旅行者の中には傷病に係る人もおり、また日本語が不得手な在留外国人労働者も傷病にかかることから、「外国語対応が可能な医療機関」を明示しておくことが重要となるのです(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

医療通訳を導入しているのか、また対応できる言語は何か▼多言語音声翻訳システムを導入しているのか、また対応できる言語は何か▼外国人患者の受け入れに関する総合的な対応(担当者の配置、担当部署の設置)を実施しているか否か―が具体的な報告内容です。厚労法は、3つ目の「総合的な対応」について、診療所(医科・歯科)・助産所ではほとんど行われていないことから「病院のみに報告を義務付ける」考えでした。しかし、多くの構成員から「総合的な対応を行っている医科診療所は一部であるが存在し、そうした医院が自院の取り組みを報告できるようにすべきである」との指摘が相次いだことを受け、厚生労働省医政局総務課の熊木正人課長は、「すべての医療機関等(診療所、助産所を含む)において、外国人患者受け入れ体制実施の有無について報告を義務付ける」考えに転換しています。

なお、これは診療所や助産所に対しても「外国人患者に対応する部署・担当者の配置を義務付ける」ものではなく、「そういった部署等の設置をしているか否か」の報告を義務付けるのみです。したがって、小規模な診療所や助産所で、外国人対応の担当者等を配置していない場合には「実施していない」と報告すれば足ります。

また、「通訳の導入」「翻訳システムの導入」「総合的な対応の実施」はそれぞれ別個の内容であり、「すべてを実施している」医療機関(通訳を配置し、翻訳システムを導入し、総合対応部署を設置する医療機関)もあれば、「翻訳システムのみ導入している」医療機関、「いずれも実施していない」医療機関があると思われ、熊木総務課長は「次回会合に具体案を示す」考えを述べています。



厚労省による多言語への対応状況調査を見ると、病院単位では▼医療通訳配置:6.0%(前年に比べて1.7ポイント増)▼電話通訳利用:19.5%(同10.7ポイント増)▼ビデオ通訳利用:4.1%(前年は調査せず)▼タブレット等の活用:25.3%(同18.6ポイント増)▼医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:39.7%(同24.5ポイント増)―、2次医療圏単位では▼医療通訳配置:37.3%(同0.3ポイント減)▼電話通訳利用:69.6%(同20.6ポイント増)▼ビデオ通訳利用:24.8%(前年は調査せず)▼タブレット等の活用:78.5%(同27.8ポイント増)▼医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:88.4%(同18.0ポイント増)―となっており、「通訳配置」や「翻訳システム導入」などは相当程度の医療機関で実施されていると考えられます。

9割弱の2次医療圏で、外国人患者への多言語対応が一定程度整えられている(訪日外国人医療提供検討会2 200228)



また、病院・診療所では「都道府県から『外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関』に指定されているか否か」も報告することになります(助産所は報告不要)。

産科・産婦人科医以外の診療科で「妊産婦への診療」に積極的か否かを報告してもらう

また、(iv)は、「産科・産婦人科」以外の診療科を標榜しているが「妊婦への対応」を行っている医療機関を妊産婦に向けて情報提供することが目的です。

妊産婦の診療については、「通常よりも慎重な対応」や「胎児・乳児への配慮」が必要となります。このため「妊産婦の診療に積極的でない医療機関」が存在すると指摘されています。例えば、妊婦が風邪等で内科診療所などを受診した場合、「薬剤の胎児毒性などに当院は詳しくないため、診療は難しい。産婦人科のクリニックや、産婦人科のある病院を受診してほしい」と要請されるケースもあるといいます。

こうした事態を放置することは許されないため、妊産婦に適切かつ十分な保健医療サービス提供が確保されることを目指し、厚労省は「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」を昨年(2019年)2月に設置。精力的な議論を重ね、同年6月には「妊婦への診療に積極的な他診療科を妊産婦に向けて周知する」ことなどを盛り込んだ意見を取りまとめています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

妊産婦保健医療体制在り方検討会の意見(その1)

妊産婦保健医療体制在り方検討会の意見(その2)



この意見を踏まえて、病院・診療所(医科・歯科)に対し「妊婦への診療に積極的か否か」の報告を求めることになります。

具体的には、次の取り組みを「すべて」実施している場合に「妊婦への診療に積極的である」と報告することが可能となります。

▽妊産婦や妊娠を希望する患者への診療や薬の説明の際に、例えば、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」の情報等を活用すること等により、必要な情報収集を行ったうえで文書を用いて説明している
▽母子健康手帳について、医学的な必要性を考慮したうえで確認している。ただし、患者の希望やプライバシーへも配慮した対応をしている
▽妊産婦の産婦人科の主治医に対し、当該妊産婦の情報を診療情報提供書等で共有すること等により、産婦人科の主治医と連携している
▽以下の内容を含む妊産婦の特性を勘案した診療を実施している、産婦人科(産科)以外の診療科の医師を配置している
▼妊娠前後および産後の生理的変化と検査値異常
▼妊娠している者の診察時の留意点
▼妊娠している者に頻度の高い合併症や診断が困難な疾患
▼妊娠している者に対する画像検査(エックス線撮影やCT撮影)の可否の判断
▼胎児への影響に配慮した薬剤の選択

こうした取り組みの実施は、口コミやSNSなどで他の妊産婦にも伝わり、地域での評価向上につながります。より多くの医療機関がこうした取り組みを行うことが期待されます。

妊産婦保健医療体制在り方検討会の意見を踏まえた医療機能情報報告制度の見直し(医療情報提供内容検討会(2)2 200924)



このほか、(iii)では「改正健康増進法を受けた文言の見直し」、(v)では▼クレジットカード以外の手段での料金支払いが可能かどうか▼多機能トイレや障害者用駐車場を設置しているかどうか―などを報告することとするものです。

次回会合での「外国人患者対応の報告事項」確定を待って必要な法令改正を行い、医療機関等には来年度(2021年)4月から新たな項目に基づいた報告を求めることになります。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

「特定行為研修を修了した看護師」へのタスク・シフト実施、医療機関で広告可能としてはどうか―医療情報提供内容検討会(1)
不適切な医療WEB広告の通報等増加、エビデンスない「がん免疫療法」等もあり早急是正を―医療情報提供内容検討会
全国統一の「医療の質」評価指標を設け、オールジャパンでの病院ベンチマーク可能に―医療情報提供内容検討会
医療webサイトがどこから不適切となるのか、関係者が協議し指導等の運用・解釈を統一―医療情報提供内容検討会(2)
医療の質向上目指し、「QI事業参加病院のサポート」や「臨床指標の標準化」を行う協議会を設置―医療情報提供内容検討会(1)
全国の医療機関、2019年度から「かかりつけ医機能」や「医療被曝の管理」状況なども都道府県に報告を―医療情報提供内容検討会(2)
医療機関から金銭授受を受ける医療情報サイトは広告、「体験談」等は掲載不可―医療情報提供内容検討会(1)



医療広告ガイドライン、新たなQ&Aを厚労省が提示―厚労省
医療機関ホームページ、手術後生存率等を合理的根拠等示さず記載は不可―医療情報提供内容検討会(1)
患者の体験談やビフォーアフター写真、ホームページへの掲載も原則不可―厚労省
患者の医療機関への感謝の気持ち、不適切なものはホームページ等に掲載禁止―社保審・医療部会(2)
医療機関ホームページ、「患者が元気になるイラスト」など掲載禁止―厚労省・検討会



妊産婦の診療に積極的な医師、適切な要件下で診療報酬での評価に期待―妊産婦保健医療検討会
報酬評価や研修、情報提供の仕組み整え、妊婦のコモンディジーズを多くの医療機関で診る体制を―妊産婦保健医療検討会
妊婦の他科受診、6割近くで「かかりつけ産婦人科医への情報提供」がない―妊産婦保健医療検討会
母子手帳を活用し、妊産婦の診療情報を産婦人科医と他診療科医師が共有せよ―妊産婦保健医療検討会
妊産婦の保健・医療はどうあるべきか、2020年度診療報酬改定論議にもつなげる―妊産婦保健医療検討会
初・再診料等の【妊婦加算】、1月1日より算定不可―厚労省
初再診料等の【妊婦加算】、2019年1月1日より当面の間、「凍結」―中医協総会(1)
2018年度改定で新設された【妊婦加算】、妊婦健診の重要性などを患者・家族に説明を―厚労省

看護必要度II、一覧に記載された薬剤の「類似薬」も評価対象に―疑義解釈5【2018年度診療報酬改定】
【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報4】医療従事者の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算を50点引き上げ
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
【2018年度診療報酬改定答申・速報2】入院サポートセンター等による支援、200点の【入院時支援加算】で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定
医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)



外国人患者への診療における通訳費、2019年もほとんどの病院が請求せず―外国人旅行者への医療提供検討会
外国人患者を積極的に診療する医療機関、どうメリット・インセンティブを付与すべきか―外国人旅行者への医療提供検討会
東京オリ・パラ等に向け、「外国人患者を受け入れる」全国の医療機関リストを作成・公表―厚労省
外国人患者受け入れのための医療機関マニュアルを公表―厚労省

外国人旅行者への医療提供、通訳などのコストに見合った診療費を各医療機関で設定せよ―外国人旅行者への医療提供検討会
外国人旅行者の診療費、増加コスト踏まえ、各医療機関で1点単価の倍数化を考えては―外国人旅行者への医療提供検討会
外国人患者への多言語対応等が可能な医療機関を、都道府県で選定・公表へ―外国人旅行者への医療提供検討会



訪日外国人の「医療機関受診」増加に向け、医療通訳の養成・配置、未収金対策など整理
未予約受診の外国人患者が4割強、院内スタッフによる通訳体制が急務―日本医療教育財団
外国人の患者や医療者の受け入れ、最大の壁はやはり「言語・会話」―日病調査
外国人患者の感染症治療を支援する多言語ガイドブックを作成—東京都
外国人患者向けの電話通訳サービス、医師法・医療法に抵触せず―経産、厚労両省