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難病制度等改正の議論大詰め、データベース利活用、医療費助成前倒し、軽症者データ登録推進策などがポイント―難病対策委員会

2021.6.3.(木)

6月2日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と、社会保障審議会・児童部会「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同会議で、難病等の制度改正論議が大詰めを迎えています。

例えば、▼患者が重症化した時点にまで遡って医療費助成を行う(現在は申請日までしか遡らない)▼データベースを法律に位置づけ、利活用推進により治療法開発などを促進する▼軽症者のデータ登録を促して「網羅的なデータベース」を構築するために、たとえば福祉サービスを簡便に利用できるような登録者証を発行する―などの方針が固まりつつあります。

早ければ、6月中にも難病・小児慢性特定疾患制度の見直し内容がまとめられる見込みで、これを受けて厚生労働省は改正法案の早期国会上程を目指します。

指定難病患者等が「重症化」した時点に遡って医療費助成を行う、画期的な仕組みを導入

「指定難病への医療費助成」や「難病医療体制の構築」「難病治療法の研究推進」などの難病対策は、2015年1月に施行された難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいて実施されています。ただし、医療・医学の推進や社会環境の変化を踏まえて「施行後5年以内を目途に、施行状況を勘案して必要があれば見直しに向けた検討を行う」ことが難病法に規定されています。また、いわば小児の難病である「小児慢性特定疾患」対策を規定する児童福祉法にも、同様の見直し規定があります。

これまでに合同会議、およびその下部組織であるワーキンググループで制度改革議論が進められ、例えば▼医療費助成の対象とならない「軽症者」のデータ登録を推進する方策を設ける(精緻かつ網羅的なデータベースの構築)▼難病・小児慢性特定疾病データベースの法律への位置づけと、他のデータベース(NDB:National Data Baseなど)との連結解析や第三者提供などの利活用規定を設ける▼医師の負担軽減のために「データ登録のオンライン化」を進める―などの見直し方向が固まりつつあります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

当初は「2020年中の意見取りまとめ」が目指されましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で議論が遅れ、今般、いよいよ意見取りまとめに向けた最終的な詰めの議論に入りました。6月2日の合同会議には、これまでの議論を整理した意見書素案が示され、これに基づいた議論を行っています。

まず「医療費助成」制度改革について見てみましょう。

▽発症の機構が明らかでない▽治療方法が確立していない▽希少な疾病である▽長期の療養が必要である—という要件を満たす「難病」のうち、▼患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%未満)に達していない▼客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している—という要件を満たした【指定難病】 については、患者の治療継続・社会生活の維持に向けて、重症の場合には医療費助成が行われます。対象疾患は順次拡大されておち、これまでに333疾患が指定難病に指定。今後も拡大が検討されます(関連記事はこちら(小児慢性特定疾病の拡大論議スタート)こちら(指定難病の拡大論議スタート))。

この「医療費助成」については、「軽症者にも助成すべき」などの意見もありましたが、財源に限りがあることを踏まえ、現在の「重症者に助成を重点化する」仕組みが維持されます。軽症者を助成対象に加えた場合、限られた財源が「薄く配分」されることとなり、重症者支援が十分に行われなくなってしまうためです。



ところで、医療費助成は現行法では「申請日に遡る」こととされていますが、▼申請のベースとなる臨床調査個人票(臨個票)の作成に時間がかかる▼確定診断・申請などに先立って治療が開始される―ケースも少なくないため「重症化した(医療費助成の要件を満たした)直後には医療費助成が行われない」という問題のあることが浮上してきています。

このため合同会議では、「医療費助成を重症化の時点まで、さらに遡る」(つまり、より早い医療費助成を行う)仕組みを創設する考えを固めました。他の公費負担医療制度には見られない、非常に画期的なものです。

もっとも、「何年も前に重症化していたので、そこまで遡って医療費助成を行ってほしい」との申請が相次げば、助成を行う自治体の業務が混乱しかねないため、「申請日の1か月前」までを限度とする方向も検討されています。臨個票の作成期間は、ほとんどの場合「1か月以内」であることが分かった点を踏まえた期限設定です。

現在は、重症化して医療費助成の申請をした日まで遡って助成が行われているが・・・(難病対策委員会2 201210)



ただし6月2日の会合では、賀藤均委員(国立成育医療研究センター病院長)や尾花和子委員(埼玉医科大学小児外科教授)から「診断に非常に時間のかかるケースもある」「出生直後に治療に入り、診断等は相当程度時間が経ってからというケースもある」とし、「申請日の1か月前」という期限について「柔軟な取り扱い」を可能としてほしい旨の要望が出ています。制度設計時点で詳細に詰めていくことになるでしょう。

難病法等に「データベース」を位置づけ、データの利活用を進めて治療法開発等を促す

また患者・家族の最大の望みは「病態や治療法の開発が進む」ことであり、これに資するよう難病・小児慢性特定疾病のいずれについても「データベース」が構築されています。

ただし、▼データベースは法的に位置づけられておらず、他のデータベース(検診・医療レセプト情報を格納したNational Data Base(NDB)など)との連結をはじめとした利活用が十分に行えない▼軽症者のデータ登録が十分に進んでない―という課題もあります。

このため前者については、難病法などに「データベースの位置づけや利活用」に関する規定を設ける方針が固まっています。これにより▼他のデータベースとの連結解析▼第三者提供—などが進み、治療法の開発推進に向けた大きな足掛かりになると期待されます。

なおデータ提供が行われる「第三者」について、合同会議では「特定企業等によるデータの囲い込みが生じてはいけない」「治療法等の開発に向けた有効利活用が重要である」旨の意見が出されるとともに、「データ提供の可否を審査する組織に強い権限を持たせるべき」との指摘が出ています。

もっとも、極めて機微性の高い個人情報であり、データの漏洩等は許されないことから、合同会議では▼データ提供に当たっては「患者の再同意」(登録時点で同意がいるが、さらに提供時点での同意も必要とする)を求める取り扱いを継続する▼セキュリティ確保策に万全を期す―ことを確認しています。

軽症者のデータ登録促すために「登録者証」交付し、簡便な福祉サービス利用可能に

一方、後者は「医療費助成が受けられない軽症者」では、現在、データベース登録のメリットが明確でないために、患者・医師双方がデータ登録に消極的です。このためデータベースからは「軽症者データ」が抜け落ちており、研究開発の足かせになっていることが問題視されているのです。

そこで合同会議では、データベースへのデータ登録を行った患者に対し「登録者証」を発行し、データ登録のメリットを明確化する方向で議論を進めてきました。具体的には、▼登録者証に福祉支援等に関するサービス情報を記載する▼登録者証を「医師の診断書」の代わりとして用いることを可能とする(福祉サービス利用に当たり診断書が必要なケースがあり、これが患者の負担となっている)―ことで、軽症者が「各種の生活支援」を受けやすくするメリットを明確化するものです。

この点、「小児慢性特定疾病の軽症者」において登録者証の在り方をどう考えるかという問題があります。小児慢性特定疾病も、指定難病と同じく「重症者については医療費助成を行う」こととなりますが、「児童の健全育成」が考え方のベースとなっておい、「希少な疾患である」という要件がありません。つまり、患者数が多い疾患(例えば気管支喘息)も小児慢性特定疾病に含まれており、軽症者に登録者証を発行するとなれば「登録者証を発行する自治体の負担が極めて大きくなる」ことが予想されるのです。

このため合同会議では、「小児慢性特定疾病に関しては、一部の疾患を登録者証の発行対象とする」考えを固めました。対象疾患としては、例えば「指定難病にもなっている疾患」などが考えられます。小児から成人までの「網羅的なデータベース」構築が可能になり、病態解明や治療法開発が大きく進むと考えられるためです。

厚労省は、合同会議の意見を踏まえて、今後「どういった小児慢性特定疾病を登録者証の対象とするか」を詰めていくことになります。



合同会議は、早ければ6月中にも意見書を取りまとめることとなり、その後、厚労省で難病法・児童福祉法の改正作業に入ります。改正法案がどのタイミングで国会に上程されるかは未定ですが、厚労省では「できるだけ早期の国会上程、成立を目指す」としています。



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