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GemMed塾 看護モニタリング

患者申出療養の対象薬「タフィンラー」「メキニスト」の効能効果拡大踏まえ、患者申出療養のルールを一部見直し—患者申出療養評価会議

2023.11.8.(水)

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」について、対象薬「タフィンラー」「メキニスト」の効能効果が拡大され、保険診療の中で使えるようになる点を踏まえて、患者申出療養のルールを一部見直す—。

10月30日に、持ち回り開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が固められました。

対象薬剤の一部が保険適用された場合のルールを明確化

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の16種類の患者申出療養が認められています(ただし「2」「3」「4」「5」「10」の技術はすでに新規患者の登録を終了、さらに後述するように「11」の技術も終了する)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAF V600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究(関連記事はこちら
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら

このうち(8)の「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」は、「遺伝子パネル検査で有効な抗がん剤が見つったものの保険適応外(当該がん種への効能効果が薬事承認されていない)・未承認(本邦での使用が薬事承認されていない)であった」というケースを救済するために設けられました(保険診療と保険外診療(適応外の薬剤使用)との併用を可能とする、これが認められない場合には保険診療部分も全額自己負担となってしまう)。

▼事前に国立がん研究センターで、いわば『患者申出療養の計画』の雛形作成までを準備しておく▼多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする手続きを踏んでおく—ことで、患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際に、速やかに未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できるようにするものです(通常診療部分は医療保険を使って1-3割負担、未承認・適応外の医薬品費などは保険外の自己負担)。



ところで、現在(8)の対象薬剤となっている▼タフィンラーカプセル50mg、同カプセル75mg(一般名:ダブラフェニブ)▼メキニスト錠0.5mg、同錠2mg(一般名:トラメチニブ)—について「標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(結腸・直腸がんを除く)」への使用が近く保険適用となります(効能・効果追加)。



患者申出療養では「対象となる医薬品等が保険適用となる場合には、告示を削除する」ことがルール化されています(保険診療の中で、従前未承認・適応外であった薬剤が使用可能となるため)。

しかし、(8)の技術は「複数の治療薬を用いるバスケット研究」であり、上述のように「患者申出療養で使用される医薬品等の一部が保険適用となる場合」のルールは定められていません。

このため、10月30日の患者申出療養評価会議では、「上記の薬剤について『患者申出療養としての使用はできなくなり、保険診療として使用できる』ものであることを関係機関等へ周知するために、保険適用となった医薬品等を対象から除外するように(8)技術の告示を改定する」新ルールが固められました。

今後も、「適応外であった抗がん剤」について適応拡大がなされていくケースが出てくると考えられ、この新ルールが適用される場面が増えていくと思われます。

なお、「保険診療として使用できる」とは、「患者は1-3割の窓口負担を支払えば済む」、「高額療養費制度(暦月の患者負担の上限を設けている仕組み)により、患者の実質負担はより低くなる」ことから、患者にとっては「朗報」と言えます。



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