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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「11月分」に着目すると、2014年以降、在院日数短縮と利用率上昇を両立―病院報告、2017年11月分

2018.3.8.(木)

 2012年以降の「11月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、平均在院日数は徐々に短縮し、病床利用率も向上に転じており、「新規入院患者をしっかり確保しながら、平均在院日数を短縮して医療の質を高めている」という理想的な状態にある―。

 このような状況が、厚生労働省が3月7日に公表した2017年11月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

ミクロ視点(前月・当月比較)では、一般病床では平均在院日数がわずかに延伸

 厚労省は毎月、病院の(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2017年10月分の状況はこちら、9月分の状況こちら、8月分の状況はこちら)。

 昨年(2017年)11月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院125万132人(前月比1万1365人・0.9%増)、外来138万184人(同3万4302人・2.5%増)となり、入院・外来ともに前月から増加しています。

医療法上の病床種別に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:67万9959人(同1万2814人・1.9%増)▼療養病床:28万3841人(同575人・0.2%減)▼精神病床:28万501人(同835人・0.3%減)▼結核病床:1769人(同41人・2.3%減)―などとなっています。一般病床では増加しましたが、精神・結核・療養の各病床では減少しています。

2017年11月、病院の1日平均患者数は前月に比べて、入院・外来ともに増加した

2017年11月、病院の1日平均患者数は前月に比べて、入院・外来ともに増加した

 
 (2)の平均在院日数については、病院全体では27.9日で前月と比べて0.1日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床:16.1日(前月と比べて0.1日延伸)▼療養病床:142.1日(同6.3日短縮)▼介護療養病床:302.7日(同10.3日短縮)▼精神病床:272.4日(同3.2日延伸)▼結核病床:66.3日(同2.6日短縮)―となり、一般病床では、わずかですが延伸してしまっています。
一般病床の平均在院日数は、昨年(2017年)10月から11月にかけて0.1日延伸してしまった

一般病床の平均在院日数は、昨年(2017年)10月から11月にかけて0.1日延伸してしまった

 
 また(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では80.7%で、前月に比べて1.2ポイント上昇しました。病床種別に見ると、▼一般病床:77.0%(前月比2.0ポイント上昇)▼療養病床:87.1%(同0.3ポイント上昇)▼介護療養病床:89.8%(同0.5ポイント低下)▼精神病床:85.3%(同0.1ポイント低下)▼結核病床33.1%(同0.3ポイント低下)―という状況です。一般病床では大きく上昇しています。
一般病床の病床利用率は、昨年(2017年)10月から11月にかけて2.5ポイントと大きく上昇した

一般病床の病床利用率は、昨年(2017年)10月から11月にかけて2.5ポイントと大きく上昇した

2014年以降、「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」を両立できている

 一般病床における11月分の平均在院日数の推移を見てみると、▼2012年:17.0日→(変動なし)→▼2013年:17.0日→(変動なし)→▼2014年:17.0日→(0.5日短縮)→▼2015年:16.5日→(0.3日延伸)→▼2016年:16.2日→(0.1日短縮)→▼2017年:16.1日―となっています(厚労省のサイトはこちら、ページ下部に毎月の状況がまとめられています)。2014年以降、短縮が続いています。

 一方、月末病床利用率は、▼2012年:76.0%→(3.2ポイント低下)→▼2013年:72.8%→(1.3ポイント低下)→▼2014:71.5%→(3.0ポイント上昇)→▼2015年:74.5%→(1.9ポイント上昇)→▼2016年:76.4%→(0.6ポイント上昇)→▼2017年:77.0%―という状況です。2013年までは低下が続きましたが、2014年以降、上昇傾向にあります。

 メディ・ウォッチで度々お伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC対象病院の「II群要件」の1つである「診療密度」向上―などに大きく寄与するなど、経営面で非常に重要な要素となります。さらに、院内感染やADL低下のリスクも軽減でき、医療の質向上にも貢献すると言えるでしょう。さらに、患者の「日常生活への復帰」(例えば早期に職場復帰し、安定した収入を確保できるなど)とQOL向上にも大きく寄与します。このため、急性期入院医療に限らず、すべての医療機関が在院日数短縮を目指すべきと言えます。

 しかし、単に在院日数を短縮させるだけでは「空床」が発生し、病床利用率が低下して、新規入院患者数の増加が伴わなければ経営状況を悪化させてしまいます。そこで、▼かかりつけ医等と連携し、重症の紹介患者を確保する▼救急搬送患者を積極的に受け入れる―といった新規入院患者の獲得策とセットで在院日数の短縮を進めなければいけません。

 この点、「11月分」のデータに限ってみると、2014年度以降「在院日数の短縮と、病床利用率の向上(つまり新規入院患者の獲得)とを両立できている」という、理想的な状態にあることが分かります。

 もっとも別の暦月データからは異なる結果(▼在院日数の短縮に新規入院患者の獲得が追いつかず、利用率が低下してしまった▼利用率が向上しているが、在院日数も伸びており、空床対策として在院日数をコントロールしている可能性が伺える―など)も出ており、より長期の分析が必要となります(関連記事はこちらこちら)。

 なお我が国の人口は急激に減少しており、地域によっては患者数そのものが減少していきます。こうした中では新規入院患者の獲得にも限界があるため、▼自院の等身大の姿(機能や人員配置等)▼他院の状況(病床機能報告の結果等)▼地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造の変化等)―などを総合的に把握した上で、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れた検討を進めていくことも重要となります(関連記事はこちらこちら)。

 
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