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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

東京都、在宅医療・介護の連携に向けた取り組み進むが、医療関係者への研修に若干の遅れ

2018.5.2.(水)

 在宅医療・介護連携について、東京都の全市区町村が地域の医療機関や介護事業所の住所や機能などを把握しており、パンフレットやホームページなどを活用した地域住民向けの情報提供も相当程度推進している。ただし「医療関係者への研修」については、若干の遅れもある―。

 東京都が4月24日に公表した2017年度の「在宅医療・介護連携推進事業の取組状況について」から、こういた状況が明らかになりました(東京都のサイトはこちら)。

東京都の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況

東京都の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況

 

2018年度から全市町村で8項目の在宅医療・介護連携事業を実施

 2025年には、いわゆる団塊の世代(1947-49年生まれの人)がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に増加していくと予想されます。こうしたニーズに的確に対応するために、地域医療構想の実現をはじめとする病院・病床の機能分化・連携の強化や、地域包括ケアシステムの構築が進められています。

 地域包括ケアシステムは、医療・介護ニーズが高くなっても、可能な限り住み慣れた地域での生活を続けられるように、▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―を、地域の実情に応じて総合的・一体的に提供する仕組みで、とくに「在宅医療と在宅介護」の連携が極めて重要となります。そこで厚生労働省は、市町村の実施する地域支援事業の中に「在宅医療・介護連携推進事業」が位置付け、地域の医療・介護資源の把握、連携に向けた課題の抽出の上で、連携を推進していくこととしています。

具体的には、(1)地域の医療・介護の資源の把握(2)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討(3)切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進(4)医療・介護関係者の情報共有の支援(5)在宅医療・介護連携に関する相談支援(6)医療・介護関係者の研修(7)地域住民への普及啓発(8)在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携—の8事業が設定されており、今年(2018年)4月からは全市町村で8項目すべてを実施することとなっています(関連記事はこちらこちら)。

在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない

在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない

 
東京都では、管内市町村において、(1)から(8)の各事業がどの程度実施されているのかを年度ごとに調べて公表しています。

 事業によって取り組み状況には多少のバラつきがあり、(1)の「地域の医療・介護の資源の把握」に関しては、「地域の医療機関、介護事業者等の住所、連絡先、機能等の把握に向けた取組」は53区市町村すべてで実施済ですが、(6)医療・介護関係者の研修のうち「医療関係者に対する研修」の実施は、58.5%・31自治体にとどまっています。もっとも、すべての事業において、2016年度から17年度にかけて取り組みは進んでおり、バラつきも徐々に解消していくと期待されます。

地域の医療・介護資源情報のリスト化・マップ化、近く全市区町村で完了へ

 各事業について、2017年度における取り組み状況を眺めてみましょう。

 まず、(1)の資源把握については、前述のとおり、すべての市区町村で地域の医療機関・介護事業者などの住所、連絡先、機能などを把握しており、94.3%・50自治体で、これら医療・介護資源をリスト化・マップ化にしています。ただし、医療・介護資源リストやマップを毎年見直しているところは52.8%・28自治体にとどまっています。▼高齢化をはじめとする地域の人口構成の変化▼医師(特に開業医)の高齢化▼在宅医療に関する診療報酬の見直し―などに鑑みると、地域の医療提供体制はめまぐるしく変化していると考えられ、高い頻度でのリスト・マップ更新が期待されます。

 ちなみにリスト・マップの作成が遅れているのは、渋谷区・桧原村・奥多摩町の3自治体ですが、いずれも「2018年実施予定、あるいは検討中、実施時期未定」で、近く全区市町村でリスト・マップ作製が完了する見込みです。

 
 また、地域包括ケアシステム構築のためには、地域の課題を抽出し、対策を練ることが不可欠です。例えば、「全体として在宅サービスが不足している」のか、「全体としては充足しているが、地域偏在がある」のか、などを明らかにすることが必要です。

 この点、96.2%・52自治体で、(2)「地域の医療機関・介護関係者等が参画する会議を開催し、在宅医療・介護連携の現状の把握と課題の抽出、対応策等の検討を行っている」ことが分かりました。取り組みが遅れているのは、桧原村・奥多摩町の2自治体ですが、どちらも「2018年実施予定、あるいは検討中、実施時期未定」という状況です。

個別の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況(その1)

個別の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況(その1)

 
 
 さらに、連携を促すためには(4)の情報共有が不可欠です。この点、84.9%・45自治体では「情報共有の手順等を含めた情報共有ツールなどの整備」が行われています。具体的には、▼紙媒体での情報共有ツールが45.3%・24自治体▼ICTを活用した情報共有ルールが62.3%・33自治体▼その他が7.5%・4自治体―という内訳です。地域によって、「紙媒体による情報共有が有効な」ケースと、「ICT活用が有効」なケースがあり、一概にどちらが進んでいるとは言えません。

 
 また(5)の相談支援については、84.9%・45自治体で「地域の在宅医療と介護の連携を支援する相談窓口」を設置しています。もっとも実施主体はさまざまで、自治体直営(15.1%・8自治体)のところもあれば、地域医師会への委託(補助を含む、35.8%・19自治体)、地域医療機関への委託(18.9%・10自治体)、地域包括支援センターで対応(28.3%・15自治体)しているケースもあります。

 
 一方、(6)の研修については、90.6%・48自治体で「多職種でのグループワーク」が実施されていますが、地域の介護関係者向けの研修は79.2%・42自治体、地域の医療関係者向けの研修は58.5%・31自治体にとどまっています。東京都を一口に言っても、23区中央部のようなオフィス街、23区北部のような住宅街、過疎化が進む村部など、さまざまであり、取り組みが遅れている自治体には「都からの支援」も必要でしょう。

 
 また、従前、地域住民への情報提供が十分に進んでいませんでしたが、2016から17年度にかけて多くの自治体で(7)「住民への情報提供」が進みました。

「地域住民向け在宅医療・介護サービスに関する講演会や出前講座等」は、2016年度には60.4%・32自治体にとどまっていましたが、17年度には77.4%・41自治体に増加(17.0ポイント増)。「地域住民向けのパンフレット作成」は、2016年度には同じく60.4%・32自治体でしたが、17年度には75.5%・40自治体に増加(15.1ポイント増)、「地域住民向けのホームページ作成」は、2016年度には54.7%・29自治体でしたが、17年度には73.6%・39自治体に増加(18.9ポイント増)しています。

千代田区・台東区・青梅市・昭島市・国分寺市・福生市・羽村市・瑞穂町・桧原村・奥多摩町では、パンフ作成・ホームページ作成が遅れており、早急な実施が求められます。

個別の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況(その2)

個別の区市町村における在宅医療・介護連携事業の取り組み状況(その2)

 
 
なお、隣接区市町村との情報交換などは、53区市町村すべてで行われています。
 
 
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