2020年度診療報酬改定はマイナス改定に、働き方改革は「医療安全等の直結部分」サポートにとどめよ―中医協・支払側6団体
2019.11.28.(木)
医療保険制度の持続可能性を確保するために、2020年度の次期診療報酬改定は「マイナス改定」とし、また「医療従事者の働き方改革」に向けた診療報酬でのサポートは「負担軽減・医療安全に直結する部分」にとどめよ―。
中央社会保険医療協議会の支払側6団体(健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会、全日本会員組合、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会)は11月27日に、2020年度の次期診療報酬改定に向けて、こうした内容の要請を加藤勝信厚生労働大臣および厚生労働省保険局の濵谷浩樹局長に宛てて行いました(健保連のサイトはこちら)。
診療報酬全般の効率化・適正化を進めよ
2020年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会(医療保険部会、医療部会)で基本方針策定論議が進んでいます(医療保険部会の議論に関する記事はこちらとこちらとこちら、医療部会の議論に関する記事はこちらとこちらとこちら)。また 財政制度等審議会は改定率について「ネットで2%台半ば以上のマイナス、診療報酬本体についてもマイナスとする」ことを提言。さらに、これに先立って、中央社会保険医療協議会では具体的な改定内容に関する論議を行っています。
2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめることから急速に医療ニーズが増加していきます(つまり医療費が膨張する)。その一方で、高齢者を支える現役世代人口は2040年度にかけて急速に減少していくことから、医療保険制度の基盤が極めて脆弱になっていきます。
こうした中で支払側6団体は、「医療の質を担保しつつ適正化・効率化などにより給付の伸びを抑制し、現役世代の過重な保険料負担を軽減しなければ、現役世代の可処分所得の減少が消費活動を停滞させ、社会保障制度の根幹をなす経済そのものにも悪影響を及ぼしかねない」と指摘し、2020年度の次期改定に向けて「適正化・効率化」を進めるべきと要請しています。
まず、改定率については、医療経済実態調査結果(11月13日の中医協に報告)から「中期的に見れば国公立・公的病院以外の経営状況は概ね堅調である」ことが判明している点を踏まえ、「マイナス改定とすべき」と強く要請。併せて、薬価等に関しては▼薬価等調査の結果に基づく改定(価格引き下げ)を行う▼イノベーションの推進にも配慮しながら薬価制度の抜本改革に基づく必要な対応を検討する▼薬価等の引き下げ分は、診療報酬本体に充当することなく国民に還元する―ことも求めています。
さらに改定内容については、「医療保険加入者(つまり国民)が適切な医療を受けられる体制の確保を前提として、効率的・効果的な医療提供を促進する」必要があるとし、次のような要望を行いました。
▽診療報酬全般にわたり適正化・効率化・重点化を図っていく
▽入院、外来、在宅では、それぞれの医療機能において患者像の適切な評価を推進する
▽調剤では、「対物業務から対人業務への転換」を、薬局機能に応じた評価体系への見直しなどで実現する
▽医薬品の適正処方に向け、有効性・安全性を前提に「経済性も考慮した処方」の推進策を診療報酬上で講じる
▽生活習慣病治療の継続に資するオンライン診療の適切な推進を図るべきである。
また、注目される「『医療従事者の働き方改革』の診療報酬でのサポート」については、▼地域医療構想の推進▼医師偏在対策▼医師働き方改革―の「三位一体改革」の進捗状況を踏まえつつ、2020年度改定では、「医療従事者の負担軽減や医療安全の向上に明らかにつながる措置に留める」「ICTを活用した医療の効率化や患者の受療行動の変容に向けた総合的な取り組みを進める」こととすべきと要請。
中医協には、新たな入院基本料等加算の創設により「病院で増加するマネジメントコスト」を補填する(これにより医療安全の確保などの効果もある)との提案がなされていますが、中医協論議と同じく「2020年度改定の導入は時期尚早」と支払側が考えていることが改めて明確にされた格好です。
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