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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

1番目の患者申出療養「進行性胃がんへのパクリタキセル・S-1併用療法」が終了、東大病院が近く総括報告—患者申出療養評価会議

2023.11.20.(月)

1番目の患者申出療養「腹膜播種・進行性胃がん患者への『パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法』」について、「全ての対象患者の治療を終了した」ために終了する—。

11月16日に開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が報告されました。近く「総括報告書」が実施医療機関である東京大学医学部附属病院から提出されます。

11月16日に開催された「第46回 患者申出療養評価会議」

本技術の「自由診療」論議も終了

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の16種類の患者申出療養が認められています(ただし「2」「3」「4」「5」「10」「11」の技術がすでに新規患者の登録を終了、さらに後述するように「1」の技術も終了する)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAF V600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究(関連記事はこちら
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら

このうち(1)の技術は、腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がん患者に対し▼S-1(テガフール、ギメラシル、 オテラシルカリウムを配合した抗がん剤、胃がんや大腸がんへの効能・効果が認められている)の内服▼パクリタキセル(胃がんや乳がんへの効能・効果が認められている)の経静脈・腹腔内投与―を併用する技術です。有害事象発現状況や全生存期間、奏効割合、腹腔洗浄細胞診陰性化割合を評価項目として本技術の「有効性」や「安全性」の確認を行い、将来的な保険適用を目指しています。

すでに新規の患者組み入れが終了していますが、「腫瘍の進行が確認されるか、有害事象により継続困難となるまで反復(継続)する」こととされ、「技術の有効性・安全性の最終的な評価をいつ行えるのかが不明」な状況でしたが、今般、東大病院より「全ての対象患者の治 療を終了した。患者申出療養としての実施計画を取り下げる」と報告されました。

今後、データの解析を行い「総括報告書」が患者申出療養評価会議に提出されます。



とこで、本技術については、日本胃癌学会の「胃がん治療のガイドライン」では、▼パクリタキセル腹腔内投与は、腹膜播種を有し、かつ腹膜転移または卵巣転移以外の遠隔転移のない切除不能進行再発胃がんに対する治療として「推奨しない」▼パクリタキセル腹腔内投与の臨床的有用性が示唆される研究結果もあり、今後の臨床研究によるさらなる検討が必要—とされています。

このため、本技術が東大病院において「有効性が十分に確認されないままに、自由診療で実施されているのではないか」と問題視されていました(関連記事はこちら)。

この点について今般、東大病院より「院内での適切手続きを経て、本技術の自由診療での実施がなされている」(学内の新規診療等検討委員会・保険委員会・執行部会で内容や料金などの確認がなされている)との回答が行われました。

これに対し患者申出療養評価会議では、▼学会ガイドラインで『推奨しない』とされている医療行為を、自由診療で行うことはいかがなものか▼学会ガイドライン(2020年)を踏まえたうえで、学内での手続き(2020年)がなされたのか明確にすべきではないか▼ガイドラインを踏まえて『推奨しない』技術を実施することは問題ではないのか、東大病院で有効性を一定程度確認しているのであれば、より広い実施(治験等につなげる)が求められるのではないか—といった指摘が天野慎介構成員(全国がん患者団体連合会理事長)や渡辺弘司構成員(日本医師会常任理事)からなされました。

しかし、▼上述のとおり患者申出療養としての技術実施が取り下げられたこと▼違法ではない自由診療の実施は病院の裁量に大きく委ねられていること—などを踏まえ、本件については「東大病院に対し、患者申出療養評価会議構成員から『学会ガイドラインで『推奨しない』とされている医療行為を、自由診療で行うことはいかがなものか』との問題意識が示されている旨を伝達するにとどめる」こととなりました。

患者申出療養評価会議は、あくまで「保険外の技術を使用したいという患者の思いに応えるために、保険外技術の保険診療との併用を認めるか」という点を医学的・倫理的視点から評価する会議体であり、「自由診療を取り締まる組織」ではありません。同じ技術が「患者申出療養」(保険診療との併用可)と「自由診療」(保険診療との併用がなされず、完全自己負担)との双方で行われていたため、これまで「自由診療での実施をどう考えるべきか」という議論が行われてきましたが、患者申出療養としての実施が終了するため、「自由診療での実施をどう考えるべきか」という議論は会議体の所掌を大きく超えてしまうことになるのです。両構成員もこの点を理解しており、この議論は終了することになりまし。もちろん、「総括報告書」を踏まえた「今後に向けた議論」は改めて行われる見込みです。



なお、11月16日の患者申出療養評価会議では、実績(技術数、費用など)・患者からの相談状況について報告を受けたほか、現場医療機関の負担軽減(申請資料提出義務の軽減など)策が了承されています。



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