「病院」単位の機能分化を進める診療報酬改定、働き方改革支援する【地域医療体制確保加算】新設に期待―四病協・日医
2020.2.10.(月)
2020年度の次期診療報酬改定に向けた答申が行われたことを受け、四病院団体協議会や日本医師会をはじめとする「診療側」の見解が示されました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
2020年度改定にはさまざまな見直し項目が盛り込まれていますが、とりわけ▼急性期一般病棟▼地域包括ケア病棟▼回復期リハビリテーション病棟―など、入院医療において大きな見直しが目立ちます。また、重点項目に掲げられた「勤務医の働き方改革」へのサポートは、とりわけ過酷な労働実態が見られる「救急医療実績の極めて高い病院」が対象となっています。
この点について日本病院会の相澤孝夫会長は、「勤務医をはじめとする医療従事者の働き改革がクローズアップされ、『救急医療、しかも手術を多く実施する病院』に少し厚い手当てがなされたのではないかと感じている。大変な医療を行っている病院が、きちんと医療提供を継続できる体制が整うように期待する」とコメント。
このほか、▼「400床以上の病院で実施できないこと」「200床未満の病院で実施できること」がしっかり示された。病棟単位でなく、「病院」単位での機能分化を進めていく方向が見えてきた▼点数表や施設基準の「簡素化」を進める必要がある―との考えも提示しました。
なお、例えば急性期一般病棟入院料1では、重症患者割合(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者の割合)が厳格化(数字上だけでも現行30%(必要度I)→改定後31%(必要度I)へと厳格化が行われ、項目・定義も見直されている)された点について相澤会長は、「特にC項目について新たに対象となる手術・検査項目が明らかとされておらず、きちんとした試算はできないが、改定で余裕が出てくる病院、逆に厳しくなる病院と、病院によって差が出てくるのではないか」と見通しました。
一方、全日本病院協会の猪口雄二会長は、「我が国では高齢者が増加する一方で、若者が減少を続け、その中で、どのように医療の質を保ちながら、効率的な病院運営を確保していくのかが極めて大きな課題となってきている。救急医療実績の特に高い病院では、勤務医の働き方改革を支援する新加算【地域医療体制確保加算】(入院初日に520点)が創設された。このほかにも、医師や看護師、薬剤師など医療従事者の常勤要件や専従要件などを見直しており、各病院が様々な工夫を凝らし、働き方改革に資する手法を考えていけるチャンスになると思う」との考えを強調。
大きな見直しが行われた地域包括ケア病棟入院料について、「急性期一般+地域包括ケア病棟というケアミックス病院について、どういう診療報酬体系等が好ましいのか、地域包括ケア病棟の設置趣旨などを考えながら、時間をかけて検証していく必要がある」とも指摘しています。
また日本医療法人協会の加納繁照会長は、地域医療体制確保加算をはじめ「救急医療実績に着目した診療報酬上の評価」が充実される点を歓迎する一方で、「公立や公的の病院に救急搬送が集中し、民間には救急搬送がなされない」などの動きが出ることを危惧。で地域医療体制確保加算(新設)では「救急搬送件数が年間2000件以上」、また救急搬送看護体制加算1(新設)では「同じく1000件以上」の救急搬送実績要件が設定されています。この点、都道府県が「県立病院の経営を維持するために、救急車等を民間には回さず、公立病院等に集中させる」という動きが出る可能性が指摘されているのです(C項目の出現で、こうした動きが実際に生じたとの指摘もある)。
さらに「各種入院料について、点数は変わらず、施設基準が厳しくなっている状況がある。人件費も外部委託費も高騰する中で病院経営は厳しい。各種加算が新設されたが、それでどのような財政的カバーが行われているのか、しっかりと分析していく」考えも強調しています。
なお、日本精神科病院協会の山崎學会長は、▼薬価等引き下げ分はすべて診療報酬本体に充当し、そのうえに、いわゆる「真水」の財源を確保すべきである▼一般病棟と精神科病棟とで、加算での評価は同じくしていくべきである(現在は精神科にはない加算項目が多い)▼看護補助者の確保が難しい、医療保険でも介護報酬の「介護職員処遇改善加算」のような仕組みを設け、バランスを確保する必要がある▼入院時の食事について、療養費の引き上げ等を考える必要がある―との考えを示しています。
また日本医師会の横倉義武会長は、2020年度改定のポイントとして▼医療従事者の負担軽減・働き方改革▼かかりつけ医機能推進を含めた外来医療の機能分化▼薬価の見直し▼医療技術の評価推進▼一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直し―の5点を掲げ、それぞれに「一定の前進が見られた」と評価。とくに重点項目とされた「医療従事者の負担軽減・働き方改革」に関しては、医療機関サイドだけでなく、受療側(患者・家族、一般国民)の意識・行動を変えなければ実現できないとし、「例えば、時間内の受診をお願いしたい」との考えを強調しました。
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ICU、看護必要度とSOFAスコアを組み合わせた「新たな患者評価指標」を検討せよ―入院医療分科会(2)
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総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
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