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医療機能の分化・連携の強化が、新興・再興感染症対策においても極めて重要—地域医療構想ワーキング

2020.10.21.(水)

10月21日に「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)が再開され、▼新型コロナウイルス感染症を含めた新興・再興感染症対策を地域医療構想の中でどう考えていくか▼地域医療構想の実現に向けてどのような取り組みを行っていくべきか—という議論が始まりました。

感染症対策については、「現在の感染症対策は十分か」「今後の感染症対策はどうあるべきか」という専門的な議論が厚生科学審議会等で始まっており、一定の結論を待って「地域医療構想の中でどのように考えていくか」を議論していく方向を確認しています。

また新型コロナウイルス感染症への対応状況から、「地域医療構想の実現を含めた、医療提供体制の再構築」が感染症対策にとっても極めて重要であることも確認されています。ただし、感染症対策には「医療提供体制の余力が必要である」との指摘もあり、今後、さまざまな角度から議論が行われます。

10月21日に開催された、「第27回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

感染症対策の専門的議論を待って、医療計画・地域医療構想への反映を検討

本年(2020年)初頭から、世界各国で新型コロウイルス感染症が猛威を振るい、多くの方が罹患し、尊い命も奪われています。我が国では医療現場の努力もあり、感染拡大・死者の発生を非常に低い水準に抑えられていますが、▼医療機関間の役割分担・連携体制の構築▼感染防護具や医療用物資の確保・備蓄▼局所的な病床数不足(感染症病床を超えて、一般病床での対応も必要となった)▼特定の診療科における医師不足、看護師等の不足―などの医療提供体制上の課題・問題点が浮き彫りとなっています。このため政府は、新型コロナウイルス感染症対策を契機に、「新興・再興感染症対応に係る医療連携体制」を構築する必要性を確認しています。

一方、少子高齢化は依然として進んでおり、そうした中では効果的・効率的な地域医療提供体制の再構築が求められ、「地域医療構想の実現」等を急ぐ必要があります。

こうした中で、地域医療構想ワーキングでは、(1)新型コロナウイルス感染症への対応(2)より広い新興・再興感染症への対応(3)少子高齢化を踏まえた効率的かつ効果的な医療提供―を可能とする「医療提供体制の再構築」をテーマに議論していくことになりました(関連する議論の記事はこちら(社会保障審議会・医療部会)こちら(医療計画見直し検討会))。

まず、これら3点はいずれも連関している点に留意が必要です。「新型コロナウイルス感染症に対応するためのベッドをどう確保するか」というテーマは、地域医療構想のベースとなる「必要病床数」にも大きく関連するためです。ただし、「地域医療構想は2025年度に実現しなければならず、時間もないために3点の議論を同時並行で進めるべき」とする意見(猪口雄二構成員:日本医師会副会長)もあれば、逆に「新型コロナウイルス感染症の対応を進め、一応の収束を待ってから、地域医療構想の実現に向けた議論(例えば、公立病院・公的病院等の再編統合に向けた再検証など)を行うべき」(小熊豊構成員:全国自治体病院協議会会長ら)とする考え方もあり、議論をどう進めるかの結論は出ていません。双方の意見ともに頷ける部分があり、厚生労働省で今後、検討スケジュールも含めた整理が行われます。

この点、新型コロナウイルス感染症を含めた新興・再興感染症への対応(論点の(1)と(2))に関して、構成員の多くからは「医療計画の中に新興・感染症対策を位置付けるべき」「新興・感染症対策を地域医療構想のベースとなる必要病床数にも勘案していくべき」との意見が出されています。ただし、「どういった感染症(疾病の種類)を新興・感染症対策のターゲットに据え、医療計画や必要病床数にどう位置付けるか」などは、極めて難しく、専門的な検討が必要な検討課題となります。

すでに病原体の性質(毒性や感染力など)が相当程度明らかになっている感染症であれば、「どの程度の病床数が必要なのか」を推計でき、これを踏まえて感染症病床を整備できます。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症については、当初、病原体の性質(毒性など)が不明なことから「軽症者、無症候感染者も含めて入院医療で対応する」こととなりました(いわゆる「2類相当」との扱い)。このために既存の感染症病床だけでは入院患者に対応できず、一般病床での受け入れも行うこととなり、「新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関において厳しい状況」にもつながったのです。

したがって、まず「現在の我が国の感染症対策」について別の審議会(厚生科学審議会など)で総括を行い、そこでの一定の結論を踏まえて医療提供体制の在り方を考えていく方針を厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長が明確にしています(関連記事はこちら)。

感染症法では、厚生労働大臣が感染症対策の「基本方針」を示し(法第9条第1項)、各都道府県がこれを踏まえて「予防計画」(感染症指定医療機関の整備目標、一般医療機関における感染症患者に対する医療提供、国・自治体・医療機関の連携体制など)を作成する(法第10条第1項)ことを求めています。これらについて厚生科学審議会等で▼現在の内容で十分か▼改善すべき事項はないのか▼運用上の課題はどこにあったのか―などをまず検証していく必要があります。さらに、今後も未知の病原体による新興感染症や再興感染症が蔓延することが予想され、「そういった場合にどのような対応をとるのか」も併せて検討していくことが求められます。

感染症法において、厚生労働大臣は感染症対策の基本指針を定め、それに沿って都道府県が予防計画を定めることとなっている(医療計画見直し検討会 201001)



言わば「予測できない医療ニーズ」にどのように対応するか、という難しい検討テーマですが、構成員からは例えば次のような点に留意すべきとの提案が早くもなされています。

▽新型コロナウイルス感染症への対応は、医療提供サイドに「余力」がなければ不可能であった。人口減を考慮した「効率化」と「余力の確保」とのバランスをどうとるかが、今後非常に重要となる(小熊構成員、岡留健一郎構成員:日本病院会副会長)

▽感染拡大防止のためには「新興・再興感染症に対応する医療機関」と「その他の傷病に対応する医療機関」との役割分担が重要だが、地方では拠点病院が1つしかないところもあり、そこでは「感染症対応」と「その他の救急やがんなどへの対応」を同時に行わなければならない。こうした地域特性への配慮も必要である(野原勝構成員:岩手県保健福祉部長)

▽ベッドの総数だけでなく、▼重症者への対応(例えばICU)▼疑い患者への対応(感染患者とも、一般の患者とも分けて別個に対応しなければならない)▼人材や資材の確保—なども併せて考える必要がある(小熊構成員、今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)



いずれも専門的な知見に立った議論が必要となり、こうした構成員の指摘についても「まず厚生科学審議会等で議論してもらう」ことの必要性・重要性を鈴木地域医療計画課長は確認しています。

病床規模が大きく人員配置が手厚い病院ほど、新型コロナ対応能力が高い

ところで、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応状況を見ると、次のような点が明らかになってきました。

▽100床未満の小規模病院でも新型コロナウイルス感染症への対応を行っているが、病床規模が大きなほど、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる能力・実績が高い

小規模病院でも新型コロナ対応をしているが、病床規模の大きくなるほど、新型コロナ患者対応力が高くなる傾向にある(地域医療構想ワーキング3 201021)



▽医師・看護師などの人員配置が手厚いほど、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる能力・実績が高い

100床当たりの医師配置が多い医療機関ほど、新型コロナ患者対応力が高くなる傾向にある(地域医療構想ワーキング5 201021)

100床当たりの看護職員配置が多い医療機関ほど、新型コロナ患者対応力が高くなる傾向にある(地域医療構想ワーキング6 201021)



こうしたデータを踏まえて幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「もちろん地域での協議が前提となるが、医療機関の再編統合を通じて、各地域で『拠点となる大規模な病院』を整備することが新興・再興感染症対策にもつながる」と述べ、上記論点(3)の「地域医療構想の実現」を加速化させる必要性を強く訴えました。

病床規模の大きな病院ほど「ベッド当たりの人員配置が手厚くなる」傾向にあり、幸野構成員の指摘には頷ける部分があります。こうした病院の再編統合は、▼症例の集約化による医療の質向上(Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨークリニックとの共同研究で、症例数と医療の質は比例することが分かっています)▼スタッフの負担軽減、働き方改革—にもつながる重要なテーマと言えます。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係



もっとも闇雲な病院の再編統合は、医療アクセスの弊害を生んでしまうことから、地域の特性を踏まえて、再編統合を含めた医療提供体制の再構築に向けて、関係者で膝を突き合わせた議論を行うことが求められます。



また、オールジャパンで見た場合、新型コロナウイルス感染症を受け入れる病床数に比べて、実際の入院患者数はそれほど多くはありません。しかし、実際に患者を受け入れた病院に「負担が集中」してしまっていることは述べるまでもありません。

このため、新型コロナウイルス感染症患者を主に受け入れる病院と、それ以外の救急患者やがん患者などを受け入れる病院とに役割分担していくことが重要となります。ここでも、「病院の機能分化と連携の強化」の必要性・重要性を再確認できます。一朝一夕に機能分化・連携の強化はできないため、やはり「地域医療構想の実現」に向けた地域医療構想調整会議のさらなる活性化が待たれます。

日本全体で見た病床数と新型コロナ入院患者数の比較(地域医療構想ワーキング2 201021)



さらに、人口規模の小さな地域では「公立病院・公的病院による新型コロナウイルス感染症対応」が多くなり(人口10万人未満の地域医療構想区域(おもに2次医療圏)では82%が公立・公的)、人口規模が大きくなるにつれ「民間病院での対応」が多くなってくる(人口100万人以上の地域では48%が民間)ことも分かりました。

公立病院・公的病院・民間病院の役割を一義的に決めることはできず、やはり「地域での関係者間の密接な協議」が必要かつ重要であることを、ここでも確認できます。

人口規模の小さな地域では主に公立・公的病院が新型コロナ対応を行っているが、人口規模が大きくなるにつれ民間病院の役割が大きくなってくる(地域医療構想ワーキング4 201021)

公立・公的病院の再編統合、期限を切って再検証を求めるべきか

こうした状況を踏まえて幸野構成員は、「公立病院・公的病院等の機能に関する再検証」について、「改めて期限を切るべき」と訴えています(関連記事はこちらこちら)。期限なき議論では結論に結びつかないためです。ただし、新型コロナウイルス感染症が収束を見ない中で「期限を切って再検証論議を求める」ことに医療提供側の構成員は難色を示しており、さらなる調整が必要と考えられます。

この点、小熊構成員は「中長期的に地域の人口は減少していくため、公立病院について必要な見直しはしていかなければならない。決して再検証論議をストップせよと求めているわけではない」とも強調しています。

なお、今村構成員は「新型コロナウイルス感染症が蔓延する中では『病床を増やせ』と考える人が少なくない。そうした中で、今、再検証を求めればダウンサイジング等が進まず、将来的に病院も厳しい状況になる」旨を指摘。異なる観点から「再検証論議は中長期的に行うべき」との考えを披露しています。

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